第五話 致命的欠陥
太陽はビル群に飲み込まれ、秋空にたなびく雲は茜色から群青色へと染まってしまっていた。
夕焼け小焼けが鳴り響きだした街、子供達は手を繋いで帰っていった公園で、金属が擦れ合う不協和音を鳴らしながら男子中学生が二人。錆びたブランコに乗りながら他愛もない会話に興じようとしていた。
『人気……ホシイ……ギギ……』
「無理だろ。こんな台詞メインの男子中学生がブランコで駄弁ってるだけのやつじゃ」
『……しかし地の文もといナレーションが少なめというのは好都合だな』
「へ?」
『――俺達が毎回駄弁っているこの公園は、実は現代日本ではなく剣と魔法の王国の王都にある公園である』
「おい」
『ある日学校帰りに勇者として召喚された俺達二人はチートで、魔王討伐の任務を課せられている……という設定かもしれないという可能性を捨てきれないからな』
「おい。異世界トリップは確かに人気ジャンルだけど、人気要素詰め込めば人気出るって訳でもねーだろが」
『じゃあ今すぐ二人してトラックに撥ねられるか?』
「お前は異能力者にでもなりたいのか。それか異世界で俺と双子にでも転生したいのか」
『無月グレンと親友の霧島霧之助は普通の男子中学生。
二人はある日バッと通ったトラックに引きずられ、気がついたら剣と魔法の世界でとある貴族の家の双子に転生していた』
「また何か始まりおった」
『チートを持って生まれた俺達は十二歳で魔法学校に入学したのだが、二人には致命的欠陥があった』
「またチート……そして何があったというんだ……?」
『――霧島は風、土の属性魔力が優れているのだが戦闘属性は皆無で』
「えっ!?」
『俺は戦闘属性では剣が、魔法属性では氷がずば抜けているのだがその他に関しての適正は皆無だった』
「ええぇぇぇええ!?」
『これはチートなのに意外な欠点を持つ二人が手を取り合い、魔法学校を蹂躙してゆく物語である』
「やべえ! マジで人気出そうな奴じゃん! もうお前が小説書けよ!」
『文章力皆無だから無理』
「これぞ致命的欠陥」