第四十四話 ……誰?
オゴッオゴッオゴッオゴッ(新章です。章タイトルは何となく付けたものなので深い意味はありません)
正月だというのに姉にお使いを頼まれた霧之助が肩を落としながらぶらりと通りかかった住宅街には不思議な事に人気がなかった。
ふと行きつけの公園へ目を向けるとやはり其処も無人で、霧之助は違和感を感じつついつもの錆びたブランコに乗った。
「こうも人気がねーと不気味だなぁ……」
「そう?」
「いつもはグレンと一緒だから特に気になんなかったけど、一人だと静けさが改めて身に染みるっつーか……」
「君はいつも此処でお姉さんから逃げてサイボーグ君と話してるんだもんねぇ♪」
「逃げるっつーか……うん、まぁそうなんだけど」
「お姉さんの事好きなのに逃げるっていうのもおかしい話だけどねぇー」
「姉ちゃんは好きだ。ショタコンと腐女子が治ればもっと好きだが」
「はは、違いないや」
「ったく、グレンもグレンだ。大晦日うちに泊まんなら最初から言えよな……当日の夜に押しかけてくるとか非常識すぎんだろ」
「そんな裏話が!?」
「彼奴が自分のパジャマと歯ブラシ持ってきてて良かったよ」
「準備良いねぇ。確信犯だねぇ」
「その癖昼までグースカ寝てってしさ……幾ら起こしても全く起きる気配ないとかオワタやん」
「それ死んでるんじゃ……」
「呼吸はあったから! 昨晩あんな元気なのに突然ポックリ逝く訳ねーだろ!」
「それもそうだね」
「そうだよ!」
「ふふ、なら違いないね」
「……」
「……」
「…………あのさ」
「何かな?」
「ナチュラルに会話してたけどさ……あんた、誰?」
「僕? ……名前って事かな。そうだね、ゲームマスターとでも名乗っておこうか♪」
まるで初めから其処に居たかのように平然と、霧之助が気がつかないくらい自然な流れで彼の隣に陣取っていた中学生くらいに見える少年は風に靡くモノクロの髪を片手で押さえ、血の色の瞳を細めた。
「はぁ……? 変なあだ名だな」
「あだ名じゃないよ? ゲームマスターはゲームマスターってだけの話でしょ?」
「何故疑問系?」
「わかんない☆」
「あ、そ……で? そのゲームマスターさんが俺に何の用だよ」
「もぉ、怒らないでよ。それじゃあ本題に移ろうか!」
両腕を広げ、ニコリと微笑む少年。一見穏やかな印象を与える笑顔だが、散々姉の作り笑いを見せられてきた霧之助は少年の笑顔は感情が込められていない冷たいものだとすぐに見抜けた。
「ちょっと君の能力が必要なんだよね」