第四十三話 奴らの年越し
年と年の境目の晩。今晩は誰もが新年を心待ちにし、遅くまで街には無数の光がちらついている。
その光の一つでは、例の二人がこたつで丸まり、年越し特番を鑑賞しつつ蕎麦を啜っていた。
「ちょwwダ◯ンタウンめwwwくっそwwwwww」
『インターネットスラングを乱用するな。ズゾゾゾッ』
「ツッコミつつも蕎麦食う手は止まんねーんだなwwwひぃwwwww」
『当然だ。貴様も笑ってばかりではなく食べたらどうだ? もうすぐ年も明けるのだし』
「ちょ、腹筋がwwwやばい死ぬwwwwww……ヒュー……」
『……霧島?』
「ヒュ、ヒュー、ゴホッ、ヒュー……」
『過呼吸……! おい、しっかりしろ! ゆっくり息を吸うんだ!』
「あう、うぇ……ヒュ、ヒューヒュー……」
『あぁ、こういう時はどうすれば……そうだ袋! 袋は何処ぞ!?』
「大、掃除で……全部使っ……ゴホッ」
『チッ、何故こういう時に限って袋がないのだ!? 代用できるものは……そういえば、以前読んだ何とかゲリオンとかいう漫画の10巻では人口呼吸をしていたな!』
「ぇ……? やめ、ヒュー、それアウト……ヒュー……うわ何をするやめr」
*暫くお待ちください*
「俺氏復活なり」
『人口呼吸しなくても復活するものなのだな』
「ギャグ作品で人が死ぬ訳ねーだろ」
『何の話だ?』
「いや、こっちの話だから気にすんな」
『あい分かった。……しかしだな、あそこまで全力で抵抗しなくても良かっただろう? 俺を泣かせたいのか?』
「俺のファーストキスを男に奪われて溜まるか。正当防衛だろ」
『む? 漫画ではああいう展開を「らっきーすけべ」と称すると聞いたのだが……』
「はい論破論破ァ! そういうのは二次元の美少女の特権なんだよ! 男しかいない状況でそれやってもラッキーどころか寧ろアウトで強制削除だかんな?!」
『そう、なのか……? しかしカヲル殿は……』
「あれは特殊なの! OK!?」
『Oh、Yes』
「ったく、2014年も今日で最後か……今年も色々あったなぁ」
『ようやっとその話題入ったか。しかし去年の今頃の俺は2014年の大晦日に笑いすぎて死にかけてる奴を直に見るなどとは考えもしなかったな』
「ハロウィンのトリックアート事件とか、腐ったマカロンで入院とか、腐男子にポッキーの日に貯金全額使い果たされた事とか、お前が書き始めた小説を腐男子に盗み見られた事とかか?」
『その寄せ集め悪意があるだろ』
「後はクリスマスの連続更新で死にかけてもう二度とやりたくないと思った事とかな」
『明らかに俺達目線ではないものまで掘り返してきたぞ……コイツ、強い(確信)』
「何故にだよ。しっかし創造主が本サイトを始めて一年経つが、1年くらい前に創造主が書いた文章と今の文章を比べると差がありすぎるな」
『本サイト……? 何の話だ?』
「しかも去年の秋から冬にかけて書いた非公開作品が全部BLだったし」
『は?』
「当時俺はまだいなかったが、初期メンバーのアンリやお前や本郷やルリトはもう……不憫としか言いようがねーな」
『先程から貴様が何を言っているのか皆目分からんが、何故か悪寒がしてきたぞ!? こたつに入っているのに何故だ!?』
「あ、てかもうちょいで年明けるやん」
『これは神たる俺がスルーされるパターンか!? そうなのか!?』
「さん、にー、いーち……」
『おいちょっと待t』
「せーのっあけおめーっ! グレンことよろだぜ!」
『軽っ! 信じられん、新年の始まりがこのように軽くて許されるのか!?』
――同時刻、都内某所――
「『あけおめーっ!』」
「うわっ!?」
重なり合った二つの声に本郷塁兎ことシエル(ニジマスの神p)の意識が呼び覚まされた直後、彼の上に二人の体重がのし掛かる。幾ら女子供とはいえど、二人分合わさればその重さは馬鹿にできない。
「ひぃっ!? な、何だ!?」
『あけおめシエル氏! 君の弟分と彼女候補が寝起きドッキリを仕掛けにやってきたよ!』
睡眠中に唐突に訪れた衝撃に状況が飲み込めず、可哀想に怯えて布団の中に潜り込んだ塁兎を強引にルリトが引き摺り出す。本当に可哀想。
「き、霧島にルリト!? 何故俺の寝室に!?」
「鍵開いてたからつい☆」
「霧島!?」
『それよりお雑煮食べたい! 僕の為に今から作ってよ!』
「俺は睡眠を邪魔され、更に料理までさせられなければならないのか!? 鬼畜か!」
『わっ!? ナイフ投げないでよ危ないなぁ! てか何処に仕込んでたの!?』
「就寝時といえど油断大敵。俺は常に武器を装備している」
「あは、当事者の私が言える台詞じゃないけどルリト君対策には英断と言えるね♪」
――新年、明けましておめでとうございます。今年もアホな奴らを宜しくお願い致します。