第三十四話 クリスマス予告
太陽はビル群に飲み込まれ、冬空にたなびく雲は茜色から群青色へと染まってしまっていた。
夕焼け小焼けが鳴り響きだした街、子供達は手を繋いで帰っていった公園で、金属が擦れ合う不協和音を鳴らしながら男子中学生が二人。錆びたブランコに乗りながら他愛もない会話に興じようとしていた。
「あっ昨日新作前置き出たと思ったら今回また初期前置きに戻ってる……」
『あれは平日限定だ。冬休み中は俺の部屋or初期設定で行くぞ』
「そういや昨日で今学期終わったんだっけ……何というタイミングの悪さで新作出しちゃったんだよ。せめて来週出せば良かったのに」
『来週はクリスマス限定前置きと年末限定前置き、その次の次は新年限定前置きがあるからあの前置きは後数週間おさらばだな』
「マジ何で今更新作出したん? せめて冬休み明けに出せよ」
『この世界の創造主(仮)が何も考えてないアホだから仕方なかろう』
「どっかのギャルゲーか某無料アプリの保留荘漫画の主人公みたいだから(仮)はやめろ」
『承知した。ちなみに我らが創造主(くりぼっち)殿は町がリア充で活気づくクリスマスは家に引きこもって執筆活ど……黒死蝶ワールドを創るそうだ』
「やめたげて! 創造主のライフはもう0よ!!」
『全国のくりぼっち共ざまぁぁぁぁああああああ!』
「背後にプギャーの顔文字が見えるッ! くっそうぜぇぇぇええええ死ねェェエエエッ!!」
『俺を殺してみろ! 脆弱な貴様に出来るのならな!』
「いつになくうぜぇぇえええ!」
『さぁ血の宴の幕開けぞ、今宵は辺りを紅に染め紅き蜜に酔いしれよ!』
「うわ発作きた」
『安心安定のグレン様と言え! 百花繚乱赤い華が咲き乱れての演目が今ッ始まるのだ! フハハハハハハ!』
「でも、クリスマス限定前置きって事は俺達ってクリスマスも一緒にいるんだな」
『安定のスルー……もう慣れたぞ、べ、別に悲しくなど……ないのだからな…………グスッ』
「つまり4日後のイヴ、リア充イベントのクリスマスの真っ只中俺達二人は男だけで集まって駄弁っているという悲しいクリスマスになるな。つか泣くな」
『泣いてなどおらん! これは心の汗だ!』
「マジ面倒臭え……ハイハイソーデスカー」
『ぐぬぅ……!』
「で? クリスマスイヴの話に戻るけどお前はどう思うよグレン」
『……流石に男だけの聖夜は無理があるであろうな。だが手は打ってある』
「な……んだと……?! 三十話越えにしてとうとうヒロイン格の新キャラがッ!?」
『新キャラなど無用。既に一人いるではないか』
「アホか。ヒロインがいたら俺達は男二人こんな所で駄弁ってねーだろ?」
『一人だけ、身近に美少女がいるだろう?』
「はぁ? 何言ってるん。俺もお前もルリトもシエル氏もみーんな揃って仲良く独り身だ……ろ…………っ!?」
『……思い出したようだな』
「ちょ、ちょっと待てよ……まさか……」
『貴様の姉君、夜七時から曲馬団でクリスマスパーティがあるがそれ以前は暇だそうだ』
「やっぱりぃぃいい! 此奴腐女子呼ぶ気だぁぁぁあああ!!」
『女子が一人いれば華やかになるであろう。楽しみだなぁ……?』
「お、おいおいおい……姉ちゃんは確かに顔はいいけど……寧ろ顔が良いくらいしか取り柄ないけど! あんなキチガイ呼ぶとか正気か!? 真面な人に見られれば普通にドン引きされるぞ!?」
『この常軌を逸した物騒な会話を三十話以上見てくれている時点で見る側も真面な人間ではないから心配は無用』
「それもそうか」
『何を納得しているのだ。そこは否定に回れよ!』
「あっ」
『鈍い奴め……そしてクリスマスは何と! 豪華企画!』
「えっ何々?」
『昼12時から夜8時まで二時間に一話、豪華五話の連続更新だ!』
「創造主が死ぬよそれ」
『当初は十話連続更新を予定していたのだが、それでは曲馬団のクリスマススペシャル更新が間に合わないとかで半分になった……』
「そういう裏話要らなかった!」