第二十九話 男子高校生と男子小学生
陽が半分その顔を沈めた、町の喧騒の中で一際目を引く華美な造りの高層マンション。その一室には今あの二人はいない。
何故ならば二人は今、スイパラに出かけてしまっているからだ。
「チッ、用向きがあって来てみれば留守か……」
『全くだよ! この前のポッキーが好評だったからって折角シエル氏がお礼に来たのに! ……まぁ一人で言う勇気なくて僕を連れてきた訳だけど』
「余計な事を言うな。そのテリア耳を斬り落とすぞ」
『やだなぁ、ちょっとした戯れじゃんか。そんな物騒な物を人に向けちゃいけません!』
「物騒な物とは何だ……コレは俺が愛用している鎌だぞ?」
『銃刀法違反には変わりないからね? ……ところでグレン兄達どこいったんだろーねー。いつもこの時間はここにいるのに〜」
「仕方ない。電話も繋がらんし、L◯NEも返信がないとなれば帰ってくるまで此処で待たせてもらおう」
『そうだね……じゃあ、アレやっちゃいますか?』
「アレ、とな……?」
『男の家に来てやる事なんて一つに決まってるじゃん……オカズ探し!』
「やはりこのマセガキは一度黙らせておいた方が良いだろうか」
『ちょっとパソコンの履歴見るくらいならバレないって! シエル氏も何だかんだ言って気になるでしょ!?』
「ぬ……興味がないといえば嘘になるが、他人のプライバシーには踏み込むのは流石に気が引ける」
『もう、チキンだなぁ! こうなったら僕一人でも見てやる!』
「あっおい馬鹿勝手に……!?」
『えーと履歴履歴……お、あった! って……えっ……?』
「ど、どうした?」
『いや、何か小説サイトのホーム画面が出てきて……』
「どれどれ……む、このサイト知っているぞ。確か日本一大きな小説サイトらしいが、何かおかしいのか?」
『いや、グレン兄が小説読むの好きなのは知ってたけど何か書きかけの小説らしきものが出てきてさ……』
「何……?」
『これ……』
――次回、第三十話記念の特別編。厨二少年がひた隠しにしてきた自作小説がとうとう解禁される――!?