第二十八話 野良猫バスター
陽が半分その顔を沈めた、町の喧騒の中で一際目を引く華美な造りの高層マンション。その一室で二人の少年が集まろうとしていた。
「グレン、野良猫を只管バスターし続ける仕事に興味ねーか?」
『突然何を言いだすんだこの変態は。通報するぞ』
「お前の俺に対する扱いが回を重ねる毎に酷くなっている気がするのはただの杞憂か?」
『さっさと理由を説明しろ』
「ウィッス。最近登下校の際野良猫が出没しまくるせいで通学路が修羅場と化してしまっていて非常に辛いのですよ」
『練習の虫の貴様が今週ほぼ毎日朝練遅刻ギリギリに登校してきたのはそういう訳か……あ、そういえば以前も猫から逃げる際噴水にダイブしていたな』
「猫滅べェェエエエエエエエアアアアアッ!」
『どうやら意図せずしてトラウマを掘り起こしたようだ』
「もう猫ね……マジ猫……一時間も早めに家出てるのに奴等のせいで練習する時間削れるとかマジ呪う……ふぁっく……」
『元気出せ、ほら柿の種やるぞ』
「俺と契約して野良猫バスターになってよ!」
『テンション壊れてるぞ』
「とびだせ野良猫の包囲」
『さっきから危ないパロネタするな。しかし貴様でも猫にはモテるのだな』
「猫相手にフォーリンラブされても何も嬉しくねえよ……俺猫よりエスカルゴ派だし」
『何というワイルドな選択』
「てな訳で暫く用心棒頼むよ、明日スイパラで奢ってやるから」
『御意。猫など暗黒世界の支配者となる予定のこの俺の力を以ってすれば恐るるに足らん』
「変わり身があからさますぎていっそ清々しさすら感じる」
『さぁ、何処からでもかかってくるが良い! 貴様らが何千匹束になろうと俺は一歩も動かずして片付けてやろうぞ……』
「スイーツの魔力って計り知れねーな。取り敢えず座れよ」