第二十一話 エロ本
陽が半分その顔を沈めた、町の喧騒の中で一際目を引く華美な造りの高層マンション。その一室で二人の少年が集まろうとしていた。
「そうだ、ほいエロ本」
『そうだではない。人の部屋で何を徐に取り出してるのだこの卑しい家畜野郎』
「普段我慢してる分、今日くらい俺は本能のままに動いても良いと思うんだ……」
――そう悲しげに呟き、霧之助は静かに目を伏せた。
『妙なナレーション入れるな。マカロン十個無理矢理口に押し込むぞ』
「大丈夫だ問題ない、姉ちゃんという名のリバとかショタ攻めとか近親相姦ラブな腐女子様程性癖は捻れてないぜ」
『そんな事俺は何も言ってなかろうが。今日は一段と話通じないのだな貴様は。大丈夫? 通報する?』
「HAHAHAHA☆遠慮なさんなグレン殿。お前も男なら興味あんだろ?」
『黙れ童貞ゴミカス野郎。……しかし』
「さっきからあだ名のセンスがやべえな……しかし? どうかしたか?」
『いや……BLなるものはそれ程までにおかしいものなのかと思ってな……』
「おいやっちまったな。とうとう11歳腐った少年に洗脳された人物が出てきたぞ」
『俺は腐男子ではないが、BLも別に悪くはないと考えているぞ。人の趣味にあれこれ口出しするのは下賤の輩のする事だ』
「あれ……? 究極的KYマカロン脳が珍しく正論言ってる……超レアじゃねコレ……?」
『失礼な。まぁ自分が巻き込まれなければの話だがな』
「それは前提条件だよな。俺のような成績以外何もかも普通な奴は巻き込まれないとは思ってるが」
『別に霧島の顔も悪くはないぞ?』
「それって暗に良くもないって言ってるよな?」
『……』
「無言はやめて! 静寂が痛い!」
『す、すまん……悪気はなかったのだがなんと答えれば良いのか戸惑った』
「その悪気の無さが罪なんだよこの野郎! まじ病み……エロ本読も……」
『だから肌色過多な本を俺の居城で広げるな! 家で読め!』
「ジャイアンシスターに破かれるから無理!」
『由梨愛嬢最強チート説』