第十八話 山本
陽が半分その顔を沈めた、町の喧騒の中で一際目を引く華美な造りの高層マンション。その一室で二人の少年が集まろうとしていた。
『絶望なる深淵拳ッ!!』
「ぐふぅううぅぅうううっ!!? やたらと厨二な名前の割にただ鳩尾にグーパンチしただけっ!」
『自分で実況するスタイルッ!』
「うるせえ。つか何故殴った? 今日に限って何でハイテンションなん?」
『絵面に動きをつけようと』
「絵ないから! これよっぽどの事がない限りSoundOnlyですから!」
『なん……だと……』
「お前やっぱ馬鹿だろ。ところで本題だが、昨日給食でプリン出たよな」
『急に話変えおった……欠席者が居たのでプリンが一つ余り、苛烈なジャンケン大会の末に霧島が優勝を勝ち取ったアレか』
「お前のせいだ。準決勝以降残ったメンバー俺以外全員山本でビビったわ」
『我がクラス38名中19名が山本だからな』
「何その山本率。出席取る時先生がやたらと山本連呼してたのはその為だったんか」
『更に一組は42名中25名、三組は33名中30名』
「あれ……うちの学校山本中学校だっけ……?」
『養護学級に至っては15人全員山本』
「山本の進撃は続くよ何処までも」
『各クラスの担任、出席取る時かなり大変であろうな……』
「冷血漢なお前が他人に同情する日が来るとは思わなかったよ」
『焔砲っ!』
「ごふぅううううっ!!!??」