第十二話 マカロン
陽が半分その顔を沈めた、町の喧騒の中で一際目を引く華美な造りの高層マンション。その一室で二人の少年が集まろうとしていた。
『うぅ、寒い寒い寒い……そろそろコタツも出すべきか』
「あー、今日も疲れたな……もう日曜の夕方かよ。また明日から学校とかめんど……」
『全くだ。何故日曜日に学校に行かねばならない……くっ、神よ答えろ! 俺が一体何をしたと言うのだ……!』
「居眠りだ」
『寝る前は読書や携帯ゲームアプリのレベル上げで忙しく、充電するのをつい忘れてしまうからな』
「それを自業自得と言う」
『どうせ俺は授業なんて真面に聞かんのだから授業中に充電してもしなくても変わらなかろう!』
「逆ギレすんな! お前成績も悪くて授業態度も悪いとか最悪だぞ!? 今こそ遊んでられっけど来年は俺等も受験生だかんな!?」
『霧島って見た目は運動部系な癖に案外真面目だよな。二次ヲタの癖に』
「人を見た目で判断するんじゃない。大体お前の最近の行動は目に余るんだよ! 学校にマカロン持ってくんな!」
『三時のおやつはマカロン食べます』
「それから休み時間にパソコン室で異世界ファンタジー小説のプロットを練るな!」
『腐女子のヒロインに主人公が振り回される魔法学園ストーリーなのだがな、主人公の幼馴染の性格が難しくて……』
「作品説明しろなんて言ってないよな!? お前さては悪い事と認識すらしてねーだろ!」
『それよりマカロン食べよう』
「話聞いてすらない……だと……?」
『冷蔵庫の奥で見つけたんだが、霧島と食したかったので取っておいたのだ』
「マカロン見たらすぐ食うお前が俺の為に……? へぇ、珍しい事もあるもんだな」
『いただきます。……むぐむぐ……もっちょもっちょ……』
「先に食うな。そして詰め込み過ぎだ。リスかお前は」
『ふぃふぃひふぁほふぁふぁふふえふぁひぃひぃひゃほう?』
「汚いわ! 飲み込んでから喋れよ!」
『霧島も早く食えば良いだろう? お勧めはそれだ』
「茶色い奴? じゃあそれを貰うな。……ん、ちょっと変わった味だな? 少しほろ苦いがビターチョコなのか?」
『いや、フランボワーズだ』
「は? いや……俺お前と違ってマカロン詳しくないけどさ、フランボワーズって確かピンクじゃなかったか?」
『元はピンクだったぞ。取っておいてる内に段々変色してきたのだが』
「……一ついいか?」
『何だ?』
「凄え聞くの怖えけど、お前これいつから保存してた……?」
『うーむ、正確な日にちは忘れたが約十ヶ月くらいだな』
「平然と何を人に勧めてんの!? 変色の時点で腐ってるって気づけよ! やっぱ俺を殺す気なん!?」
『腐っても鯛という言葉もあるし大丈夫かと』
「腐ったマカロンとか腹壊すだけだから! 死ぬから! ……あ、何か超腹痛くなってきた」
『ふっ、人間は脆弱だな……』
「黙れ諸悪の根源」