時間だけが過ぎていく
四日目からは、真面目に会議するも……。
俺たちには、どうする事もできなかった。ハデスの力について何もわからないのだから、仕方も無い。
俺を除く全ての人間が、解決方法なんて思いつくはずも無いんだ。
一つ進展したと言えば、俺たちとハデスとの間に話し合いの場が設けられたせいか、藤間たちが真田に絡んでくる事もなくなっていた。
先輩は既に発動したハデスの『力』から、世界を救う事に尽力を尽くしているらしかった。
十二月二十四日のクリスマスイブ。
決戦は明日という時のチャットルームでの事だった。
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先輩:
この前も言っただろう。
今回は人類は滅びない。これは保障するさね。
sloth:
なにかわかったの?
先輩:
残念だけど、それは言えないのさ。
私の命に関わるかも知れないのさね。
だけど、安心しておくれ。絶対に人類は滅びないよ。
sloth:
そうなんだ。
よくわからないけど、先輩がそう言うなら任せるよ。
先輩:
ところで、その件絡みなんだけどね。
私は一人の少年と出会ったのさ。
歳は十七歳だよ。
いやはや、彼は私の力を知ってしまったんだ。だけどね。武田君たちみたいに、『許して』くれる人はいても、『自然に』受け入れてくれたのは初めてでね~。つい『萌え』てしまったよ。
sloth:
良かったじゃないですか!
先輩:
ただね、一つ問題があるんだ。十七歳に萌えてしまっている、私は、ロリコンではないのだろうか。
もちろん恋愛感情は無いんだよ。
それに、十六歳で結婚できるのだから、少しぐらい萌えても良いよね? なんて言い訳している自分に気がついてしまったのさね。
sloth:
まぁ、思うだけなら自由だよ。
本人に知られないように注意してね。
それと先輩は女ですよね?
先輩:
当然さね!
sloth:
そしてその人は男だ。
つまり、結婚できるのは十八歳ですよ?
その言い訳はちょっと苦しいかも。
先輩:
そうだね。あぁ、私はロリコンなのかもしれないね……。
でもだよ。ちゃんと十八歳まで待って行動すれば、違うと言えるのかな?
sloth:
でも、その男の人が十八歳になるまでは、ロリコンだよね。
先輩:
そうだね。私は駄目な女かもしれないね。
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なんだか、先輩が酷く落ち込んでいるように思えた。
俺は冗談で流れを変えようと試みる。
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sloth:
まぁ、俺は十五歳だから、女に生まれても結婚も出来ないお子ちゃまだけどね。
先輩:
全くもってその通りさね。
武田君はいつも意地悪だね……。
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そして、地雷を踏んでしまった後のフォローなんてものは、深みにはまるばかりだという事を、改めて思い知らされた。
先輩は珍しく、俺に攻撃的な言葉を投げかけた。
これは、怒っているな。
そんなに、間違った発言はしていないつもりだけど、先輩を傷付けるのは心苦しい。
結局、俺たちは無駄に日々を過ごした。
十二月二十五日は、もう明日だ。
そして、こんな時でも俺は迷っていた。
真田と出会うまで、実感の無かった自分自身の『力』。
だけど、この時、自分自身の本当の『力』について理解していたんだ。
十二月一日に見た変な夢のせいだ。
そして、それは誰にも言えない。




