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転校生も美女だった?

 今朝のちょっとした出来事は、教室でも話題になっていた。

 そして、それと重なるように、もう一つの話題がクラスを支配する。

 転校生が来るみたいだ。

 二つの噂は、短時間で、それも狭い範囲で、ミックスされてしまっていた。

 身動きできなくなるぐらいの美女が、俺たちのクラスに転校してくる事になっていた。

 俺も一つの噂の方を直に経験していなかったら、その噂は転校生が教室に入ってくるまで確かな事実として認識されていただろう。

 でも、朝見た美女は、高校生と名乗るには大人びていた気がする。いや、ギリギリ高校生で通るかもしれない。

 それにしても五月蝿いな。

 朝のホームルーム前の教室なんてものは、どこも一緒なのだろうか。道路を削っている工事現場のおっちゃんの隣だって、こんな騒音にはならない。

 その騒音が、いつもより格段に大きいのも事実だ。

 噂の力って物は恐ろしいな。

 そして、その静けさが引くのも一瞬だった。

 担任教師が転校生を引き連れて、教室に入ってきた。

 いつもなら、この騒ぎを鎮めるのにどれだけの苦労を払っているのだろう、と思うと同情の気持ちが少しだけ沸いてくる。

 担任教師と一緒に入ってきたのは、ごく普通の女の子だった。

 百六十センチメートル程の身長も普通だし、長いお下げ髪だって珍しくも無い。

 ただ、鋭い釣り目が印象的な女の子だった。そして、ちゃんと食べているのだろうかと心配してしまうぐらい、細く色白な女の子だった。

 ちょっと蛇足であるが、彼女の身長が『普通の女子』である事実は、俺の身長とほぼ同じと言う事実を意味していた。

 勝手な噂で盛り上がり、噂と現実との落差にショックを受けているのであろう。クラスの連中は、身動き一つ取れずに声も出せないみたいだった。

 全くもって失礼な奴らだ。そして、なんて不運な転校生なんだろう。

 せめて転校してくるのが、昨日だったらこんな事にならなかっただろうに。

 それは、俺の大きな勘違いだった。

 およそ三十秒ほど静まり返っていたクラスの連中は、一斉に歓声をあげる。

「すご~い! 美人ね」

「俺は、生まれて初めて女性と言う生き物を見てしまった」

「ちょっと~。何よそれ!」

「でも、本当綺麗ね。私も見とれてしまったわ」

 なんだ?

 そんなに驚くほどの美人か?

 気がつけば、失礼な事を考えていたのは俺だけだとわかった。

 誰が、どう見たって普通の女の子だよな。美女は無いだろう美女は。

 どうやら、本人も自分自身を美女だと認識しているみたいで、わざわざ、少し顔を上に向けて、腕を組みながら、高慢なお姫様が演説するかのごとく、クラスメイト見下ろしながら、静かにダルそうに言った。

「はじめまして、愚かな、一般市民さんたち。真田薫よ。せいぜい、私の美貌で惨めな己の人生を慰めるといいわ」

 こいつは普通じゃないぞ。

 俺は、第一印象で彼女と距離を置く事を決めてしまった。

 その日、彼女の周りには人が絶えなかった。なんで、あんな女が人気なのだろか? 仮に、彼女が絶世の美女だとしても、あんな人格が受け入れられるだろうか?

「ねぇ。どこから来たの?」

「そんな事に興味をもってどうするの? あなたの進路希望がパパラッチとでも言うのかしら? 本当庶民の会話ってつまらないわね……。隣の大別市よ」

「綺麗な髪ね。美容院はどこを利用しているの?」

「触らないでくれる。この髪は私だけのものなの。どうせ、本物の良さもわからない愚者のくせに」

 生まれて初めて奴隷と遭遇した傲慢なお姫様のような哀れみと軽蔑の表情でうんざりしながら答える真田に、モーセに導かれ故郷に戻ってきた元奴隷たちが自国のお姫様に見せるような歓喜と尊敬の表情のクラスメイトが群がる光景は、俺には理解できなかった。

 絶対に関わらない事にしよう。俺は決意を固めるのであった。

 真田薫について、もう一つわかった事がある。

 俺には理解出来ないのだが、やっぱり彼女は凄い美女らしい。

 移動教室の折、あるいは噂を聞きつけ我がクラスまで見学に来て、あるいは下校時に偶然彼女を見てしまって……。

 とにかく、真田とファーストコンタクトをした彼や彼女たちは、絶対に一つの行動を起こすのだ。

 初めて真田を見ると、どんな人間も三十秒程は、美貌に見とれてしまい身動き出来ないらしい。

 そんな大げさな美女には見えないのだけどな……。

 俺にだけは、そんな現象は無かった。

 俺は出来るだけ気にしないように、関らないようにしよう。と決意を固めながら家路に着いた。

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