表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/47

知らない電話番号

 翌朝、家まで迎えに行くと、真田はがお礼を言ってきた。

「いつも、迎えに来てくれてありがとう」

 彼女は着実に素直な良い子になっている。

 先輩のアドバイスのおかげだ。

 あるいは、俺が人の扱いに長けているのかもしれない。

 だけど真田は、自分の言葉に憤慨しているのか、顔の血色が必要以上に良くなっていき、なんとも理不尽な命令を申されるではないか。

「何ぼけっとしてるのよ。気が効かないわね。救えない男……。ほら、鞄もってよね」

 と鞄を差し出してくれた。

 俺は、数秒で高くなった鼻をへし折られた。

 ただ、鞄を持たされたのはこの時だけだったのは、不幸中の幸いだ。


 そして放課後、俺たちはあの道を、昨日決闘した遊歩道を歩いていた。

 昨日までウジャウジャいた不良たちの姿が見えなくなり、安心してたのかもしれない。

 それは、同時にハリネズミの身に危険が迫っているのではないだろうか?

 あいつが俺に喧嘩で助けを求めるはずも無い、とわかりつつも携帯電話の着信を確認してみる。

 その時だ。

 見慣れぬ番号から着信があった。

 だけど、この声には聞き覚えがある。ムカつく美少年、藤間だ。

「やぁ、武田君かな?」

「そういう、あなたは藤間さんですよね?」

「驚いたかな。明智君から教えてもらったんだ」

 可愛いはずの後輩に裏切られた。明智、個人情報は大切に扱ってくれよ。

「何の用ですか?」

「わかっているだろう? アフロディーテが必要なんだ。僕らの計画にはね」

 こいつらに『計画』があることも、その『計画』に真田が必要なことも、もちろん、俺にとっては新事実だったのだが、言わない事にした。

「それで、俺に電話したと。ちょっと、意味がわかりませんよ。今更、脅しに屈すると思っているんですか?」

「わかってないな~。今日電話したのは、忠告のためなんだ。武田君の『力』についてはわかったよ。そして、君は『力』が無ければ、とても弱いとね」

「それを、わざわざ言うために電話したんですか?」

「あぁ。君の『力』は万能ではない。むしろ、酷く弱いのさ。僕が証明してあげるよ」

「これはこれは、ご親切にどうも。敵に忠告してくれる訳ですね」

「君が恐怖で怯えているのを想像したかったんだよ。その方が、楽しいだろう?」

 今日の藤間は、口調こそ穏やかに戻っていたが……。なんて性格の悪い奴だ。

「それにしても、武田君の周辺には奇妙な連中が集まるね。針山君もそうだけど……。今日、君の学校の連中が、事情も知らないまま謝りに来ていたよ」

「なっ!?」

 その俺の学校の連中とは、『やっぱり友達』や正座させるのが趣味の上級生だと思った。

「あはは! 安心しなよ。自ら謝りに来れない情け無い武田君? あんな雑魚を相手にしたら、僕の格が下がるんだ。適当に追い払ったさ」

 俺は安堵したのだが、藤間が最後にこう言い残した。

「そうだ。大事な事を忘れていたよ。君が明智君や針山君と知り合いなら、見張る必要は無い。言ってる意味はわかるよね? 上からの命令で、君らにはちょっかい出せなくなったんだ。君一人なんかどうにでも暗殺できるのに、僕の上司は臆病な人でね。そういうことだから、十二月初旬に改めて電話するよ。その時、大人しく会いに来てくれれば良いさ」

 高校生が暗殺なんて言葉を使うなよ。俺が思っていたよりも、藤間は危険な男だった。

 きっと人質がいるから見張る必要は無いって事も言ってたな。明智はお前ら側の人間だろうに。本当に嫌な性格をしていやがる。

 そして、よくわからないがハリネズミと藤間は冷戦状態らしい。それの火蓋も俺が握っているって事だろうな。

 藤間。敵ながら見事だよ。確かに、俺は怯えて待つしかなさそうだ。

 あぁ、そうだ。勘違いしてるみたいだけど『力』なんて俺には無いさ。

 オタクなだけの、普通の高校生だ。

 只ならぬ様子を感じ取ったのだろうか? 電話を終えると、真田が心配そうに聞いてきた。

「誰だったの?」

「藤間だよ」

「はぁ? なによ! 何であいつなんかから電話が来るのよ?」

「さぁな。俺を超能力者だと勘違いしてるみたいだったぞ。そして、対策も見つかったから怯えて待ってろって」

「そう」

 真田は俺の『力』を否定しなかった。そして、顔色を赤に染め上げるのが得意技なはずなのに、珍しく青くして考え込んでしまう。

「そうだ。昨日、俺の友達に会ったろ? もう一人、会いたいって人がいるんだよ」

 まぁ、時間には余裕があるさ。藤間は、大よその日付まで指定してくれている。

 カウントダウン効果を狙ったつもりだろうが、それまで安全が保障されたって事でもあるんだぜ?

 心の中で、サディスティックな藤間に嫌味を送る。

 そして、何より。先輩なら、なんでも解決してくれそうな気がした。

「嫌よ! 不良はきらい、じゃなくて少しだけ苦手なの。それに前にも言ったでしょ? 巻き込みたくないのよ……」

「安心しろよ。今度の人は、優しい女の人だ。ハリーとは違った意味で頼りにもなる」

「そう……。女の人……。わかったわ」

 同姓も嫌いな対象なのだろうか? 真田は、鋭い狐目で俺を睨みながら、弱々しく了解した。

 その後も、先輩と会うまでは不機嫌だった。

 この前のように、シカトはされなかったけどな。

 夜には、先輩に真田と会うため予定を空けてくれとを頼んだ。そして、藤間からの電話についても話した。

 先輩は、出来るだけ早いほうが良い。事情が変わったからと言っていた。何かに焦っているようだ。

 今週末の日曜日に、待ち合わせの約束をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ