助言
それから家路につくのだが、俺は誰でも良いから、とにかく慰めて欲しかった。
ハリネズミに出来るだけ早く報告すると約束もしていたので、不本意ながらこいつを選んでしまった。
携帯電話を取り出し、ハリネズミに真田の件について伝える事にした。
「よぉ。ハリー」
俺は現実世界では、ハリネズミの事を『ハリー』と呼んでいる。
「よぉ。武田か?」
なんだ、その挨拶は!
いつもチャットじゃ挨拶がどうのこうのと五月蝿いくせに。
ネット人格ってのは、恐ろしいよな。
「彼女は会いたくないってさ」
「そうか。残念だ。でも、そこを説得するのがお前の役目だろうよ?」
「俺なりに頑張ったんだぞ。ついには、彼女は泣いちゃうし、それが原因で怖い先輩には呼び出されるし」
「はぁ? 最低な奴だな。また女の子を泣かしたのか? いいか……」
以下略!
そうだ、こいつはフェミニストだった。
そして、やっぱりネットの人格を形成しているのは、間違いなくこいつな訳で、時々、いや結構な頻度で、現実世界でも話が長かった。
慰めて欲しいはずが、苛立ちと悲しさは募るばかりだ。
そんなに俺は悪者なのだろうか?
先輩には、留守番電話だったと言うのもあるけど、チャットで詳しく話すとだけメールした。
先輩に慰めてもらおう。
ハリネズミの前で!
俺は、そう思っていた。
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sloth:
で、ついには、ハリネズミも先輩も『力』を持っているとか言うし。それは良いんだけど、悪者の手先だとまで言うからさ……。
ガツンと言ってやったんだ。
友達の悪口を言うなって。
そうしたら、彼女は泣いてしまうしさ。
それが原因で、怖い上級生にも呼び出されて、正座させられて説教だよ?
先輩:
あははは!
ハリネズミ:
なるほど。
それで、君は泣かせてしまったと言う訳だ。
確かに理由としては、認めて良いのかもしれないね。
かばって貰えたという事実は素直に喜ぶよ。
だけどね、泣かせたならば、それなりの対処と言う物があるだろう。
そもそも、君は自分の都合の悪い事を隠しているんじゃないのかい?
あるいは、また乱暴な言葉使いに戻ってきているんじゃないのかい?
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慰めてくれるはずの先輩には、チャットで、文字で、わざわざ笑っていると表現されてしまった。
しかも、ハリネズミは五月蝿い。
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先輩:
つまりさね。
彼女は、ちゃんと人と話すのは初めてなんだよ。
自分の気持ちを伝える術を、あまりに知らないのさ。
ハリネズミ:
そうだ。
僕が言いたい事は、つまりはそういう事で……。
以下略!
先輩:
甘やかせとは言わないさね。
だけどね、ちょっと考えてあげるといいよ。
今回の事だって、私には簡単に理解できたよ。
実に薫ちゃんらしいさね。
sloth:
それなら、教えてよ。
問題が山積みなんだ。
解決できる事案があるなら、早急に片付けたいんだ。
先輩:
そうだね……。
本当は悩みながら、答えを見つけて欲しいんだけどねぇ。
今回は、事情が事情さね。
特別サービスだ。
薫ちゃんはね、ヤキモチを焼いたんだよ。
ただ一人の友達が、知らない人を庇っているからね。
それも、自分に悪意を向けてね。
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そうなのか?
俺はそんなつまらない事で、今日は散々な目にあったのか?
真田。本当に面倒臭い奴だな。
最初は、お前の孤独への同情心だったかもしれない。歪んだ友情かもしれない。
でも、これは事実だ。
俺はお前だって、友達だと思っているよ。
認めたくないけど、それなりに楽しい毎日だったさ。




