表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/47

 その夜も俺は、チャットルームでみんなに相談した。今回は、それなりに心配してくれているみたいで、ハリネズミは毎晩のように真田と不良の事を聞いてくる。

 交番の位置を確認するのも、ハリネズミのアドバイスだった。

 俺も、秘密を知っているみんなには、正直に話す事にしている。

 情けない事に、俺一人で解決できそうにも無いから……。



 ----------


 ハリネズミ:

 どうだい? 彼女と不良たちの間に動きはあったかい?


 sloth:

 あぁ。今日は、あいつら探し回っていたみたいで捕まったよ。

 でも、なんか、よくわからないけれど、逃がしてくれた。

 

 ハリネズミ:

 いつでも力ずくで解決できると思っているのかもしれない。

 そもそも、あいつらの目的も不明だ。

 わからない事が多すぎるね。


 sloth: 

 そうだ。不良のボスらしき男が、そんな事を言っていた。

 言うこと聞かないなら力ずくでも良い、とか。

 それに、彼女の『力』の事も知ってるみたいだったんだよ。

 何より、そいつが手をかざしただけで、彼女が苦しみ始めたんだ。


 ハリネズミ:

 そうか。

 事態は思ったより、深刻じゃないか。

 悪いようにはしない。僕と彼女を引き会わせてはくれないか?


 ----------



 

 なんだか、ハリネズミは事情を知っているように思う。

 そして、俺はあまりに状況が飲み込めない。

 わからない事だらけだ。




 ----------

 

 sloth:

 明日、彼女に聞いてみるよ。


 ハリネズミ:

 そうだ。それが良い。

 携帯電話に連絡をくれるかい? 

 出来るだけ早く接触したいんだ。


 sloth:

 わかった。


 ----------



 

 真田を見世物みたいに扱うのには、確かに気が引ける。

 それでも、出来るだけ早く行動に移す必要があった。

 もう、交番に逃げ込むという手口もばれているしな。

 とにかく、俺の手に負えそうに無いのは確かだった。

『力』なんて不可解な現象がなければ、警察にも頼めるのに。いや、付け回せれているだけで、警察が動いてくれるのだろうか? 拉致される瞬間まで、何もしてくれない可能性だってある。


 俺は、次の日の朝。登校時に話した訳だ。

 結論から言おう。

 真田は、絶対に嫌だと言う。

「だけど、よくわからないけどよ……。この状況は、ヤバイだろう。いや、よくわからないからこそ危険なんだよ」

「嫌よ! 話はわかったわ。でも嫌なの! あんまり、他人を巻き込みたくないのよ……」

「でも、俺は逃げる事しかできないんだ。わかるだろ? 人の助けが必要なんだよ」

 俺に出来るのは、盾になって時間を稼ぐ事ぐらい、と言うのは隠した。

「本当よ。救えない男だわ。なんで、コイツ何だろう……。もっと、背が高くて、格好いいスポーツマンだったら良かったのに!」

 おいおい。そいつは、気持ちがわからないでもない。でもな、本人の前で言う事じゃないんだぜ?

「オタクで悪かったな。それでもだ。とにかく藤間という奴は普通じゃなかった。このままじゃ、危ないだろ?」

「えぇ。彼は『力』を持っているわ」

『力』か。

 昨日、藤間が手をかざすだけで、真田が苦しみはじめた光景を思い出した。

 もう今の俺には、得体の知れない『力』が世に転がってるなんて事を、信じるしかない。

 じゃないと、訳がわからからないことが多過ぎて、どうにかなってしまいそうだ。

 真田は、断る口実を思いついたらしく、俺を指差しながら半分怒鳴るような口調で言った。

「それだわ。私が会いたくないのはそれなのよ! いい? 私の『力』を簡単に信じたという事は、そいつらも怪しいのよ。きっと頭の悪い綱吉も騙されているんだわ。そいつらは、絶対に悪者なの!」

 確かに、あの二人が『力』の話を素直に信じたのは、俺も違和感を覚えた。だけどな。

「俺の前で、友達を悪く言うんじゃね~よ」

 数少ない俺の友達の中でも、あの二人は特別だ。

 それにしても、軽い注意のつもりが、真田の心にはクリーンヒットしたみたいで。

「なによ! そうよね。私なんて他人だものね。私の言葉はわかっても、気持ちまでわかるわけ無いわ。オタクの綱吉なんかに!」

 と歩を止めて、両手は腰の前で拳を握り、可能な限りの怒鳴り声で文句を言う。

 それでも、俺も今回だけは譲れないので、諭すように優しく。

「なんで、そうなるんだよ? 俺は、この二人だけは信じろ。いや、信じなくてもいいから悪く言うなって。それだけだぞ?」

 と伝えるのだが。

「なんでよ……。なんで……」

 と真田は力なく呟いた。

 ついに我が娘の暗殺を実行したお姫様が、偶然、森の中で平和そうに暮らしている死んだはずの娘を見つけてしまいました、みたいな怒りと絶望の表情だった。


 それっきり、真田とは口をきいていない。

 俺がシカトされているからだ。

 この時、真田は涙を流していた。

 その事も、もちろん学校で噂になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ