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触らぬ不良に絡まれた

 時々空から落ちてくる雪が、冬の到来を告げていた。

 それでも、秋はまだまだ頑張ってくれるみたいで、雪が積もる事を決して許さなかった。

 そんな、十一月初旬の事だった。


 俺に形成されていた新しい日常は、またも変化の予感を見せた。

 いつものように、真田と薄暗い夜道を下校中の事だった。

 一軒家だけが並ぶ、静かな住宅街で人通りも少ない、そんな道を歩いていた時……。

 何故か、俺たちは不良に絡まれていた。

 いや、全ての人に都合よく美女を演出している(らしい)はずの、真田が絡まれていた。

 彼らは学生服を学生服だと辛うじて認識できるほどにアレンジして着こなし、何故か高校生なのに地毛とは思えない髪の色をしている。そんな五人組が道を塞いでいるではないか。

「真田さん。ついに見つけたぞ」

「しつこいわね。藤間とは縁を切ったはずよ」

「そんな、綺麗ごと言っても無駄だ。俺らは命令されただけだからな」

「知らないわ! 用があるなら藤間が来ればいいじゃない」

「あぁ、そうか。それなら、真田さんの都合に合わせるさ。いつなら会えるんだ?」

「はぁ? 会うなんて言って無いわよ」

「わかった……。毎日ここで待っている」

 強気な真田と、強気だけど照れている不良との、会話が成り立っていないので、正確には状況を理解しかねる。

 だけど、不良たちは無理強いはしない事は確かみたいで、今日は退散してくれるらしい。

 不良たちに声が届かない距離まで移動したのを確認し、真田に事情を聞いてみた。

「なぁ、あいつらなんだ?」

 めちゃくちゃビビッたぞ。

「女の秘密を詮索するつもり? 救えない男ね」

「心配なんだよ。ただ事じゃなかった雰囲気だからさ」

「べ、別にあんたに心配される覚えは無いわ! ……はぁ、仕方ないわね。悪の組織よ。いえ、彼らは違うわね。えっと、悪の組織の下っ端なの。それ以上は言えない!」

 真田は強気な発言とは裏腹に、愛する王子様を我が娘に奪われそうだ、と言わんばかりに不安そうな表情でうつむいていて、今にも泣き出しそうだった。

 しかし、不良少年を悪の組織と評するか。大げさだな。いや、最近の若い奴らは悪の道でも『進んでる』のかもしれない。

 事情は良くわからないが、俺は真田の家まで送った。

 やっぱり心配だ。

 俺の家と学校を結ぶ直線引き、俺の家からほぼ直角に延びた直線上に彼女の家がある。

 あるいは、俺の家と学校を結ぶ直線を引き、学校から約三十度の角度で直線を引くと彼女の家があると言っても良い。

 綺麗な直角三角形だ。

 不良に付回されている人間がいるならば、ルート三倍ぐらいの遠回りは男として行うべきだろ? そして、明日からは、登校時も真田の家に迎えに行かなくちゃいけないな……。

 引っ越してきたばかりの真田の家は、新築だと一目でわかった。

 そして、やたらと凸凹している家だった。

 一階と二階の区別が無いように連なっている外壁があると思えば、一階より飛び出しすぎている二階もある。見てるだけで、酔いそうな家だった。

 そして、屋根に設置されているソーラーパネルが、なんか、近未来的な予感をさせる。

 家に入る間際に、「ありがとう」 なんて言った、素直な真田が不自然だった。


 何故だろうか。その夜には、律儀にも、今日の事をハリネズミに報告する。

 奴は、是非とも真田に会いたいと五月蝿かった。

 それは興味本位と言うより、非常に緊迫した状況のような気もした。

 だけど、俺は迷いつつも、好奇の目で真田が見られるのを避けたかった。

 この時の俺には、絶対的な危機だ、と言う認識が足りなかったのかもしれない。

 そして、登校する時も共にするようになった俺たちへの噂は、より強固なる物になっていった。

 学校中の男子の目から発せられる、無音のメッセージが実に痛かった。

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