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悪くないかもな

 掃除当番や黒板消し、果ては教師のパシリまで。

 俺なりに、クラスの用事を押し付けられるのにも遣り甲斐を見出しつつあった。

 意外にも、真田はちゃんと手伝ってくれるしな。

 真田は相変わらず、俺をクドクドと責めるのだが、俺なりに復讐方法も見つけてバランスも取れてきた。

 真田は、いつもちやほやされて、褒められ慣れていると思っていた。


 だけど、ある日の放課後の事だ。

 掃除も終わり、真田の席で机を挟んで向かい合うように座っていた。

 真田は、頬杖をつきながら、睨みつけながら、それでもどこか嬉しそうに、

「あんたも、少しはお洒落しなさいよ! その短い髪だって、手入れが楽だからって理由でしょ? 本当に、オタクらしい発想よね」

 とため息交じりで言ってきた。

「うるせ~な。そういうお前は、努力しているのか?」

「もちろんよ。朝晩のお肌のお手入れだってやっているし、お洒落の勉強だって頑張っているわ。毎日の半身浴だって欠かさないし、髪の手入れだって時間をかけているんだから! ううん、今度のテストが楽しみね。勉強だって頑張っているのよ!」

 と、自分の努力を指を折りながら発表する。

 努力という単語と無縁な俺は、素直に感心した。

「お前って、頑張る偉い奴だったんだな」

 なんて褒めると、頬を赤くし鋭い狐目がをより鋭く尖らせるのだ。そして、真田だけに見えるらしいナイフを打ち落とすかのように、手を無意味に動かし、言葉に詰まってしまう。

「な、なによ!」ってな。

 もし真田の『力』が本物と仮定するならば、いつだって自分の結果とは無関係な所で褒められていたんだよな。本当に自分の行動を褒められる事は、初体験なのかもしれない。

 そして、俺が真田の本当の言動を聞いていると知ってからは、少しだけ丸くなったのも事実だ。本当に少しだけど。

 そうだ。真田は、俺の事を名前で呼ぶようになっていた。キモオタでも、あんたでも、苗字でもない。

 綱吉と名前で呼んでくるのだ。

「だって、初めて出来た友達ですもの! 名前の方が親しみやすいでしょ?」

 だと。

 ちなみに、俺が薫と呼ぶと凄く怒るんだぜ。

「ちょっと! みんなにカップルだって誤解されたらどうするのよ!」

 ってな。

 もう、とっくに間違った噂が広がっているのにな。

 女って生き物はわからない。

 でも、それなりに楽しい毎日だったと思う。

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