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閃光のフロンティア

「マジかよ」


 俺の口からはそんな言葉が零れ落ちた。別にこんな深い森の中に家があることや、その近くに温泉や、湖が完備してあることに驚いたのでこんな言葉が出たわけじゃない。


 なんで俺がそんな言葉が零れ落ちたしまったのかというと、俺の目の前の光景がなんとも言えないものだったからだ。


「なんでそんなわがままばかり言うのですか!? そろそろ大人になってください!」


「いやだ! いやだ! 僕は、国になんか行かないんだ! 僕はここで自由に暮らすんだ!」


 俺の目の前に居るのは英雄というより駄々っ子だ。


「これが連れてこれない理由」


「ああ、俺も唖然だよ」


 金髪の髪に、幼い容姿、身長もシロナちゃんぐらいしかないんじゃないか? その上人形のように整った容姿をしている。《閃光》も他の二人の英雄と引けを取らないレベルの美しさだ。


 しかし信じられない、いや信じたくないことが一つある。この英雄、《閃光》は男なのだ。


 そう男なのだ。雄なのだ。男性なのだ。♂なのだ。


「信じられないよなぁ」


「この状況が?」


 いやまぁそれもなんだけどね、こんなお母さんと息子のスーパーの風景みたいなことになるとは思わなかったけでどさ、男の俺としては彼女、いや彼の存在が信じられないんだが。


「だから言ってるでしょ、あなたは英雄です。その責任をしっかりと受け止めなさい」


「いやだ! いやだ! 僕は英雄になんかなりたくないんだ! 僕は僕だ!」


 さっきからあんな調子だ。国が諦めるのも納得だ。流石にこんな状況を見せられたら必死で連れて行こうっていう自分たちがアホらしくなってくるな。


「あーもうあなたは昔からそうです。なんで私のいう事を聞いてくれないんですか!?」


「お姉ちゃんこそ、僕の事をいっつも無視して国だ。民だって、僕の事なんかどうでもいいんでしょ!」


 あれ? 今お姉ちゃんって言った? ということは……。


「なぁ、あの二人って」


「はい、察しの通り姉弟です」


 マジですか、そりゃあさらに難しいわな。こんな状況でさらにただの姉弟喧嘩ときたもんだ。


「もうあなたのことなんて知りません! もう一生ここで暮らしてればいいんです!」


「言われなくてもそうするよ、だからもう僕の生活の邪魔をしに来ないでね!」


「いやいやまずいだろ!」


 なに勝手にけりをつけちゃってるんだよ、連れて行かないといけないんだろ!?


「マスター! だってこの子が!」


「いやもう少し落ち着こうよ、な? 連れてこないと大変なんでしょ?」


 どうやらアイリさんは熱くなると周りが見えなくなる人間のようだ。落ち着いた人間だと思ったんだけどな。


「マスター? へぇあなたが王様なんだ。こんな普通な人間が王様? 国って大したことないんだね」


「アウラ・クロスフィールド! 言っていいことと悪いことがあります! 今すぐその言葉は撤回しなさい! さもなければあなたにも《剣聖》の恐ろしさを教えなければいけません」


「落ち着け! もう埒があかねぇ。俺が喋るから少し黙ってて」


 このままじゃ進む話も進まない。俺が話した方が全然ましだ。


「しかしっ!」


「あーこれは命令ってことで、一応俺はまだ君たちの王様だ。命令は聞いてもらうよ」


「くっ、分かりました」


 おとなしく引いてくれたようだ。聞き分けがいい方でよかった。


「落ち着いたところで、どうして君は国に仕えるのが嫌なんだ?」


 俺はアウラ君に向かって話しかける。


「どうしてって、僕は僕として生きたいんだ。僕は英雄として生きるのなんて嫌だ」


「君の自由がこの俺が保障しよう。国に仕えても、君の意志で動けるようにしよう。それでもダメかい?」


「嫌だ。嫌だ。嫌だ。僕は国になんて行きたくないんだ。あんな場所には帰りたくないんだ」


 震えている。どうやらよっぽど嫌なことでもあったのだろう。それが多分彼が一番国に戻りたくない理由なのだろう。


「大丈夫だ。すべて俺が何とかしよう。俺が君の居場所になろう」


「くっ、僕は嫌なんだ。第一、僕より弱いやつに仕えるつもりはないよ」


 ふむ、それも一理あるな。俺だって弱いやつよの下につくなんて嫌だしな。


「じゃあ戦ろうか、俺が君より強ければ納得するんしょ?」


「マスターっ!」


 俺はアイリさんの静止を振り切る。


「いいよ大丈夫、俺もそろそろ体を動かさないと鈍っちまうよ」


「本気? 僕も一応英雄なんだけど」


「ああ、本気だ。じゃないと君は俺に仕えてくれないんだろう?」


「そうだね、僕より強かったら考えてあげるよ」


 俺は足を開き、構える。そして正面に彼を捉える。


「《閃光》アウラ・クロスフィールド行くよ」


 アウラはナイフを両手で逆手に構え、姿勢を低くする。


「藤堂流馬、行くぜ」


 そうして俺たちの戦いは始まった。

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