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刺客のフロンティア

 俺たちはヒロノキアから西へ三日ほど言行った場所にある森まで来ていた。というかこんなに近くにいるのかよ、こんなに近いところに居るなら無理矢理にでも連れてこれるんじゃないか?


「本人に会えばいやでもわかりますよ、なんで連れてこれないのかを」


 という事らしい、どんな理由があるのだろうか? 国が動いても連れてこれないってことは、相当な理由があるのだろうな。


「しかし、暗いな全く光が届いてないな」


 今はまだ昼だというのに、森は夜のように暗かった。それほど木が密集して立っており、地面は雑草だらけなので、俺は歩くのだけでも精一杯だった。


「大丈夫?」


「ああ、このぐらいなら大丈夫だよ」


 シロナちゃんに声をかけられる。なんか小さい娘に心配されると情けない気持ちになるな。


「そう、よかった」


 もしかして心配してくれたのかな? この娘は顔に表情が出にくいから何を考えているのかいまいち分からないんだよな。


それにしても鎧って重いんだな、国から出るときに危険だからって軽い鎧や小手なんかを貸してもらったが、普段の倍以上は疲れるぞ。これ本当に軽い鎧なのか?


「まだまだ目的地は先なので、頑張ってください」


 はーいと元気に返事をしたいところなのだが、いかんせん慣れない装備に、慣れない場所だからなぁ。気候に関しては東京なんかよりも全然過ごしやすいんだが、こんな場所じゃあなぁ。


「まぁできるだけ頑張るよ」


「無理はしないでくださいね、いつでも休憩をしますから」


 二人とも息を切らしてすらいない。俺は汗だくの、へとへとだというのに……もっと鍛錬をしっかりとした方がいいか?



          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

          


 あれから二時間ほど歩いただろうか、間に三回ほどの休憩をはさんだが俺の疲労はピークに達していた。森の闇は深くなるばかりだし、歩いても歩いても風景は変わらない。これで参らない人間の方が少ないだろう。


「しっかしこの森はどんだけでかいんだよ、もう相当歩いただろう」


「そうですね、この森はヒロノキア最大の森ですから、森は隣の国のガイロンまで続いています」


「ふーん、そんなにでかいんだ」


 やはり英雄が居る場所に行くにはそれなりに大変という事か、でもまぁ行けない場所でもないと思うんだがなぁ。


 その時俺の背後で殺気を感じる。一瞬だが確かに感じた。まぁ一瞬で消えてしまったが。


「マスターも気づききましたか」


「いつから見てたの、今さっき来たわけではないでしょ」


「ヒロノキアを出たあたりからです。ずっとついてきていますよ」


 ふーむ、そんなに前からか、俺も鈍ったのかな。いやまぁ多分相手がかなり優秀なのだろう、殺気も今感じたのが初めてだったし、それだけ優秀な手練れという事だろう。


しかしこれは、こんなに濃密な死の気配を感じるのは初めてだ。これは本当に夢なのか? 夢なのにこんなにもリアルな感じを再現できるのか?


「相手は相当な手練れですね、しかしそれに気づくなんて流石はマスターです。殺気だって一瞬しか漏れてませんでしたよね」


「ああ、こういうのは爺に散々やられたからな、わずかな殺気でも感じないと俺が痛い目を見ることになるしな」


 修行と称して山の中で爺と三日三晩バトルロワイヤルみたいなことをしてたこともあったしな、あれはマジで死ぬかと思ったぜ。


「そうですか、でも今回は痛い目を見ることはないと思いますよ。私たちがマスターには触れさせませんし、傷つけるなんてことは万が一にもありません」


「大丈夫」


 心強いことで、でも実際二人はどれくらいの強さなのだろうか? そりゃあ英雄なんて言うからそれなりには強いんだろうな。




ヤバいな、一瞬でも感じてしまうと気配が気になってしまう。さっきから少しづつだが気配が感じられるようになってきたし、俺でも感じられるということは相当近くまで来ているってことだろうか。


「そろそろ来ます。心の準備だけはしておいてください」


 そうだな、もう相手も殺気を隠すことすらしていない。というかばれているということが相手にも分かったのだろう。


 しかし、こんなにも殺気を感じ続けるというのがプレッシャーになるとは思わなかったな、元の世界じゃあこんな殺気を感じることもなかったしな。俺の限界もそろそろ近そうだな。


そんなことを思っていると森の中でも少しひらけた場所に出る。その広場には三十人ほどの黒い服装の男たちが立っていた。


「やっと現れましたか、でもいいんですか? こんなひらけた場所より、さっきの森の中で攻撃した方が良かったのではないですか?」


 それもそうだな、気配を消せるぐらいだ森の中の方が攻撃をしやすかったんじゃないか?


「まぁ英雄さんたちには森の中で攻撃しても関係ないだろう。だったら数を生かせるこの広場の方が勝ち目があるってもんだ」


 黒づくめの一人が話し出す。みんなが一緒の恰好なので区別がつかないが一人ひとりからすごい圧力を感じる。対面してみて再確認するこの人たちは一流だ。


「ふむ、それも正しい戦術ですね。しかし私たちにそんな浅い考えなんて通用すると思いますか?」


「まぁやってみないと分かりませんということで」


 肩をすくめる黒づくめ男。


「そうですか、ならばあなたは《剣聖》という名の本当の恐ろしさを知ることになるでしょう」


「ふぅ、《鉄壁》も行く」


 戦闘が始まる。これは元の世界の試合なんてものとは比べ物にならない。本当の殺し合いだ。

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