大力のフロンティア11
「これはどういう事なんだ?」
「わかんないよ! とりあえず火を消さないと!」
「でもどうやって!? 水なんてねぇよ!」
しかもこんなに火が広がっている状態ではどうしようもない。
「とりあえず、家を壊そう。家が燃えるのを少しでも抑えないと!」
「まぁ、それしかねえな! 敵はとりあえずおっさんに任せよう」
俺たちは燃えている家を壊しにかかる。無事な家を守るために燃えている家を破壊する。
「うおおりゃあ!」
俺は燃えている家の脆い部分を思いっきり殴り、家を破壊していく。おっさんみたいに力があれば無理矢理壊せるんだろうが、俺は非力なので、弱い場所を殴り家を一軒一軒壊していくしかない。
「おおおおおおおおおおおおお」
アウラはどうやらものすごい速度で突っ込み、中心の柱を壊して家を崩しているようだ。やはりアウラほどの速度がなければ、炎の中に突っ込むなんて無理だ。
「でもよかった。住民の方は避難しているようだな」
「それは平気」
「うおっ!」
いきなり現れるシロナ。全く気配を感じなかったぞ。
「マスターも起きましたか。住民たちは私たちの手で避難させました。犠牲者はいません」
どうやら住民の避難は早く気づいた二人が行っていたようだ。しかしこれは……。
「山賊か?」
「違うわよっ!」
後ろから聞こえる気色の悪い声。
「おう、ゲイルじゃねーか。どうしたそんなところに縛られて」
俺の後ろには布一枚掛けられて、縛られて吊るされていた筋肉がいた。
「あなたのせいでしょーよ! でもそれは置いといてー。これは私たちの仕業じゃないわよ。そこに転がっているのも私たちの仲間じゃないし」
「それは本当か?」
「ほんとーよ。私が仲間を見間違えるわけないわ」
では誰なんだ? いやどの勢力だ? 俺たちを狙ったって言うのか? いやそんなことで俺たちをやれるとでも思ったのか? こちらには称号持ちが四人だぞ。こんな普通の人間を刺客に送り込むか? この世界の常識だったら、称号持ちには称号持ちをだろ。なのにこいつらはおっさんに瞬殺されちまうような人間だ。
「じゃあどこなんだ?」
「狙いは私たちではないですよね。だったらこんな普通の人間を寄越すわけないですし」
アイリも同じような答えに行きついたようだ。
「まぁいい! 今はやるべきことをしよう」
「私もたすけなさいよぉ!」
「あー、お前は後な」
「なによ! こんな火の中で置き去りなのぉ!?」
俺はゲイルの声を無視しておっさんの方へと走り出す。
「おい、おっさんこれはどういう事だ?」
「わからん! こいつらがいきなり!」
「ヒッ!」
「落ち着けそいつを殺したら、何もわからねーぞ!」
一人の生き残りを前に今にも殺してしまいそうな勢いのおっさん。
「しかしっ!」
「落ち着け、一時の感情に身を任せるな。何をするのが一番いいかを考えろ」
「ちっ、おいお前、お前は誰の命令でこの村を襲った!?」
「ヒッ、いえねぇ。それだけはいえねぇ!」
「言え、じゃないと殺す。さっさと言わなければ殺す」
「言えない……ぐふ」
そういってその刺客は血を吐きながら自害した。どうやら本当のプロだったようだ。
しかしプロだから分からない。一応俺も入れ、分かっている称号持ちが四人だ。そんな人間を殺すには戦力が足りないのなんてこいつら自身が一番分かっているはずだ。この戦力や、アリバイ作りはまるで普通の人間を殺すよな編成だ。
「クソっ! これはどういう事なんだ!」
死体を揺らし続けるおっさん。当然相手に反応があるわけがなく。
「おい、やめとけ」
「クソっ! 誰だ!? なぜだ!? どうしてだ!?」
尽きない疑問を口に出し続けるおっさん。しかしその疑問が解けることはない。
「落ち着け。とりあえずは後始末をしよう。一応大体は消したが、まだ火が残っている」
「ッ……」
おっさんは黙りながらも俺たちの作業を手伝う。しかしその顔は悲痛に歪んだままだった。
「これで一応は大丈夫か――しかしこれは……」
残ったの焼け野原だ。少しの住居が残っていると言っても、それは気休め程度だ。一夜にして、村は消滅したと言ってもいいだろう。
「みんなを呼んで来よう。隠したままではいられないだろう」
「ああ」
短く答えを返すおっさん。顔からは生気が抜け、もぬけの殻のようになっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい! 大丈夫だったのか!?」
勢いよく駆け寄ってくるキース。
「ああ。犠牲者はいない。しかし……」
「なんだよ、なにか悪いことでも起きたのか?」
「ああ、まぁ見れば分かるよ」
「どういう事だよ?」
俺たちは避難させた村人を連れ、村へと戻る。そこに広がる光景を見て、村人たちは誰もが顔を覆った。
「私たちの村が」
「ああああああああ」
「なぜこんなことに!」
それぞれ悲痛な叫びをあげる村人たち。
「これもお前たちのせいだ!」
一人の村人が声を上げ俺たちのことを指さす。
「え? 俺たち?」
「そうだ! 貴様たちが来たから村はこんなことになったんだ!」
「そうだ! それにあんたたちそんな少人数で、山賊を倒したっていうじゃないか、そんな人間離れしたことができるか! お前たちは人間じゃない。化け物だ!」
「おいおい、酷い言いぐさだな」
「バレル、お前だってそうだ。私は見たぞ、お前が変な人間たちを無理矢理引き裂いていくのを! お前も化け物の仲間だ」
「てめぇらっ! 俺たちのことを言うのは良いがっ……!」
俺が我慢できずに飛び出そうとしたとき、小さくて、でも凛とした声が響く。
「バレル様を悪く言わないで!」
「そうだ。バレル様を悪く言うなら許さないぞ!」
「お前たち……」
おっさんの前に子供たちが立ちふさがる。
「お前たちには関係ない。こんな化け物は村に要らない!」
団結する村人たち。やはりこのような閉鎖的な村ではこういう異物はあまり受け入れられないのだろう。人間以上の存在など。
「あんまりふざけたことを言ってると!」
さすがの俺も切れそうになる。こんな身勝手なことを堂々と言い切る、この人間以下のやつらに。
「いいんだ。分かっていたことだ。この力がバレれば普通の暮らしはできない」
「それでいいのかよおっさん! やっと守った村じゃねーのかよ!」
「ああ、いいんだ」
なんでおっさんがこんな思いをしなくちゃいけねーんだよ。だっておっさんはあんなにもこの村が好きで、ただ普通に暮らしたいだけで……。
「出ていけ!」
「出ていけ!」
一層反発が強くなる村人たち。
「……」
無言で立ち去るおっさん。
「私たちも行く!」
「連れてってバレル様!」
「来るな!」
おっさんの剣幕にたじろぐ子供たち。
「なぁ、おっさん。今お前は行くところがないんだよな」
「ああ、そうなるな」
「じゃあ無職か」
「ああ、無職だな」
「こんな誘い方も嫌なんだけどな、いい就職先があるぜ」
「ほう? それは何処だ?」
「子連れもオッケー、しかし少し危険なんだがな」
「ほう、それは魅力的だな」
「ああ、国に来ないか?」
「そりゃあいいな」
そういうおっさんの笑顔は少しさびしそうだった。
「さぁて、じゃあ村人さんたちの邪魔にならないように帰ろうかね」
俺たちは国へと帰る。頼りになる仲間を加えて。
「僕も忘れないでよ!」
「私もいくわぁよおー!」
頼もしいオカマとガキも連れて。




