大力のフロンティア4
「やっと着いた」
俺たちはひたすら続いた草原を抜け、小さな町までやってきた。辺り一帯を畑に囲まれたこの町は、何かピリピリとした空気に包まれていた。
「ふぅむ、この風景は穏やかなんだが、この空気はどうにかならないかな」
「こういう村は閉鎖的な環境ですから、あまりよそ者は歓迎されないもんですよ」
「そういうもんかね」
さすがにこれは警戒のし過ぎのような気がする。完全に俺たちを恐れている。
「何か御用ですか?」
そんな時一人のおっさんに話しかけられる。
でかいおっさんだ。農作業で鍛えられているのか、しっかり締まった体、大木のような腕と脚、そして濃い顔。なんなのだろう、この世界のおっさんは全員このような筋肉マッチョになるのだろうか? これまで会ったおっさんは全員こんな感じだぞ。
その人を筆頭に俺たちを囲むように広がる村人。
「何か御用ってほどでもないんだけどね、噂を聞いて」
「噂ですか?」
「ああ、ここらへんに何かとても力持ちの人間が居るとかを聞いて、ちょっと興味本位でやってきただけです」
「噂ですか? そんなもの聞いたことがないですね」
「そうですか、王都の方にまで噂が来ていたので、信憑性は高いと思ったのですが、そうですか。骨折り損のようですね」
「王都にまで?」
一瞬その男が動揺する。
「ええ、王都でも有名な話ですよ。噂ではあの《大力》なのではと」
少しカマをかけてみる。このおっさんは何かを知っている。俺の勘がそういっている。
「《大力》ですか……そんなものは絵空事ですよ」
悲しそうに話すそのおっさん。
「どういう事だ?」
「いえ、別になんでもありませんよ」
何か引っかかるな。まぁ何も話してくれないのでは全く予想のしようがないが。
「とりあえず、今日はこの村に泊めてもらえませんか? こちらに一人けが人が居るんです」
あの少年を荷馬車に乗せたままにするのはどうかと思うし、俺ももう野宿はうんざりだ。やはり人間なら屋根の下で寝たいものだ。
「ええ、分かりました。私の家なら少し余裕があります。今日は私の家に泊まっていくといいでしょう」
「ありがとうございます」
周りの視線は痛くなる一方だ。どうやら本当に歓迎されてないようだ。
「ホンとなんなんだろうね」
「さぁ? 私には推測しかねます」
アイリもさっぱりといった様子だ。
「では私の家まで案内いたします。ついてきてください」
俺たちはおっさんの後について村の中を歩き始める。
木造のボロイ建物が並んでいる。あまり裕福な村ではないようだな。しかしこの雰囲気は好きだ。何か懐かしい感じがする。
「村はいいんだけどな、住人がな」
「すいません最近、山賊の被害が大きくて、みんな気がたっているんです」
やはりこの村も山賊の被害を受けているようだ。注意深く見てみると、村の中にも何件か壊れている家が見える。
「いえ、すいません。俺の方も無神経なことを」
そりゃあ気が立つよな、やられ放題やられてるわけだし。こりゃあ本格的に山賊をどうにかした方がいいようだ。
「そういってもらえると幸いです。本当は村のやつらはいい人ばかりなんですよ」
そういって苦笑いを浮かべるおっさん。どうやらこの村は山賊でかなりの苦労をしているようだ。
「ああ、着きました。ここが私の家です」
周りの家より、一回り大きな家が俺の目の前に建っていた。まぁ大きいとはいえ、王都の一般的な家とそんなに変わらない大きさだが、この村では一番大きい家だろう。
「へぇー、立派な家ですね」
「ええ、少し大所帯なもんですから」
「大所帯?」
その時屋敷の中から何かが飛び出してきた。それは疾風のごとき速さで、俺の股間にジャストミートした。
「うがああああああああああああ」
声にならない声を上げる俺が一人。なんだ暗殺者か? こんな村にまで俺の命を狙ってやってきたというのか? いいだろう受けて立ってやる。俺の必殺技をお見舞いしてやらんと。
「お帰り! バレル様!」
あん? なにやら俺の股間から可愛らしい子供の声が聞こえる。どうやら俺の股間にぶち当たった正体不明の物体は子供のようだ。
「おい、ガキ。俺の大事なところから早くどけ」
「あれ? バレル様じゃない? 誰?」
「すいません。この子が大変迷惑なことを。こらアカネ謝りなさい」
「ごめんなさい?」
なぜか疑問形の少女。まぁいい懐の深い俺はこんなことで怒らないのだ。
そのとき、また屋敷の中から何かが射出された。その物体は、ものすごい速度で一直線に進んできて、俺の股間にクリティカルヒットした。
「うおおおおおおおおおおおおおん」
未曾有の危機に陥る俺のデリケートゾーン。今だかつてない危機に俺の脳内に緊急のアラームが鳴り響く。
「お帰り! バレル!」
「てめぇ、この餓ガキ! ぶっ殺す!」
「うお、誰だお前!? やんのか?」
「てめぇ、この近所で敵なしの俺と戦おうってか?」
俺は拳を目線まで上げ、戦闘態勢をとる。
「やめなさい」
「いてっ」
俺の頭にアイリのチョップがお見舞いされる。
「だってこいつが!」
「大人なんですから、少しは抑えてください」
クソっ、アイリにはこの痛みは絶対に分からない。この何とも言えない痛みは。
俺がそんなことをしていると、屋敷の中からゾロゾロと子供が出てくる。十人ぐらい出てきただろうか、その全員が一斉におっさんの方へと駆け寄る。
「ただいま、みんないい子にしてたか?」
子供たちを四、五人を一斉に抱き上げるおっさん。すごいな、流石にあんなに子供はもてねぇぞ。何かコツでもあるのだろうか?
「すみません。こいつらが無礼なことを」
申し訳なさそうなおっさん。
「いや、いいんだ。でも、てめぇは許さねぇ!」
俺はさっきの小さな少年を指さす。
「なんだと? やるのか?」
ファイティングポーズをとる少年。俺もそれに負けじとファイティングポーズをとる。
「やめなさい」
再び殴られる俺、何か理不尽なものを感じる。俺はアソコにダメージを負ったんだ。何か仕返しぐらいしてもいいと思うが。
「さぁ、けが人も居るんです。さっさと運んじゃいましょう」
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中は思ったよりも広く、俺たちが入っても、あまり窮屈さは感じなかった。しかし……
「あ、それは俺のだぞ! 返せ!」
「こぼさないで!」
「熱い! 汁を飛ばすなよ!」
「うわああああん」
これにはさすがの俺もギブアップをしそうだ。
「大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな」
「すいませんな、いつも騒がしくて」
おっさんは慣れているらしく、何も気に留めていないようだ。
「大丈夫だよー、僕はこれぐらいの方が楽しくていいよ」
さすが子供だ同士だ。なにやらアウラはもうこの状況に慣れているようだ。
「シロナは……言うまでもないな」
「うきゅう」
髪の毛を引っ張られたり、頬をこねくり回されたりと、何か大変な状況に陥っているシロナ。
「まぁこれも社会勉強だ。頑張れ」
ごめんなシロナ、俺にはこれぐらいしか出来ない。さすがに俺も子供たちのおもちゃになるのは嫌だ。
「おう、にいちゃんさっきはごめんな」
さっき俺の股間へ悪魔の一撃をくれた少年だ。
「ああ、もう平気だ。そんなに気にすんな」
素直に謝る少年。うんやっぱり子供は素直が一番だ。
「ホントか? じゃあこれでも喰らえ!」
ふり下ろされる拳、その拳は一直線に俺の聖域へと吸い込まれる。
「ぐほおおおおおおおおおおおおおおお」
鈍い痛みがあそこに訪れる。
「てめぇぜってぇぶっ殺す!」
「うお、怒ったぞ! みんな逃げろ!」
「まてぇい!」
俺は鈍い痛みを股間に抱えながら、子供達との鬼ごっこに励むのだった。




