紫陽花:3
ただ、ほんの少し。
奇跡に触れた、
「あはは、目、覚めた?」
からかうように笑う君。
「…うん。」
どこか釈然とまるで星霞のぼく。
「ねぇ、何で待ってくれなかったの?」
少し責めるような口調で君はぼくに聞いた。
答えは知っている。
「ごめん、気付かなんだ。」
それを聞いて君は首を小さく振る。
そして二人空を見上げてひたすら黙った。
そこには無限の光。
限界を越えた化石の海。
「虚空だ。あそこは離れすぎてる。」
「風が吹くもの寂しくないわ。」
そうした後でぼく等はバッグから有りったけのお菓子を引っ張りだして全部の袋を開けた。
下らない事を話してまた下らない事をいちいち笑って時間は過ぎる。
やがて空は白みはじめるのも仕方なかった。
東雲。
薄い雲から冷たい雫が注いだ。
涙みたいな雫だとぼくは。
隣をみる。
「もう、行かなくちゃ。」
気まずそうに、それでもやっぱり彼女は微笑んで、空の雫みたいな一つの雫をぼくにみせた。
一等星よりもずっと輝くはかないそれには触れられないよ。
すべてが壊れてしまうから。
「星達が悲しんでる。
風が吹いてないから。」
そんな、
「うん、気を付けろよ。ぼくは見送ってやれないから。」
君には、
「私は、」
君とだけは離れたくなかったよ。
二人は二度と振り返らない。
風、そういうのになりたい。
人に思いをね、すいすいって届けちゃうんだ!
壁も、砂漠も、海も、みんなかわして届けるんだよ!