1/5
紫陽花
今はなく、
それでも届いた太古の光。
星の名を忘れて久しい。
五月雨がひどく欝陶しい梅雨の始まりだった。
ぼくはいつものように体を起こして会社へ向かう。
傘は面倒でさすのを止めて小走りに見慣れた道をゆく。
路地裏の黒猫だとか、カンカン煩い遮断機、もう使われる事の無い寂れたバス停だとかに眼はいかない。
長い階段を登ればもう会社だ。
味気なくて代わり映えもしない。
こんな乾燥した痛みにも似た日常に何時ケリがつくんだろうか?ふと振り返る。
アスファルトの地面に小さな水溜まりが出来ていた。そこから青い空の亀裂が見てとれた。永い夢を見ていたような気がする。
本当に花火みたいに危うかったあのはかなさ。
ぼくは暫らく動けなかった。