忙しい日
気楽に読んで
忙しい日
「僕は学び舎のちいさな階段。毎日、みんなの足音を聴きながら、心の成長を見守ってきたんだ。今日はお部屋の中で一生懸命に自分の『大好きな世界』を組み立てている、男の子のタツオくんのお話だよ」
ある晴れた秋の日の夕暮れ時、タツオはとてもいそがしく動き回っていました。明日から始まる大好きな大人の趣味、そう、あの「スーパーファミコン」で思いっきり遊ぶための完璧な準備をしていたのです。
ところが、気持ちが焦ってしまったタツオは、お部屋の片付けをしていたときに、机の角にゴンと右足をぶつけてしまいました。
「痛っ……! うう、なんて不注意なんだ。鉄の塊に足を踏まれそうになったときみたいに、涙が出るほど痛いなぁ」
タツオは冷や汗を流しながらも、深く深呼吸をして痛みをこらえました。
「すう……はあ……。大丈夫、これくらいで諦めそうになってちゃダメだ。人としてやっていいことと悪いこと、そして自分の体を一番に労うことを心得なくちゃ」
タツオには、大好きな趣味を始める前にもう一つ、真面目に終わらせなければいけない大切なお仕事が残っていました。お仕事の場所を清潔にするのと同じくらい大切な、役所や会社へ提出する「大事な書類」の確認です。
タツオはからくりレジを操作するように、アンドロイドのまほうの板(Android端末)をピッ、ピッと手際よく操作して、無事にすべての書類をメールでパッと送信(送付)し終えました。
「よし! これで仕事の書類は全問パーフェクトで送信完了だ!」
タツオは胸をぽかぽかと弾ませて、いよいよ趣味の没頭するためのセッティングを始めました。
昨日、長崎屋から駅前のタクシー乗り場まで歩いて、八〇〇円止まりのタクシーで大事に持って帰ってきたスーパーファミコン本体と、お取り置きを頼んで一、一〇〇円のソフトと一緒に買ってきたオーディオケーブルを、テレビの後ろにカチッと繋ぎます。
「ここをこう繋いで……よし、起動確認だ!」
スイッチを入れると、テレビの画面に鮮やかな光がパッと灯りました。タツオは嬉しくて、お母様の運転する優しい車に乗っているような、深い安心感に包まれました。
あまりの楽しさに、タツオは時間を忘れてゲームのセッティングや趣味の世界にすっかり没頭してしまいました。
気がつくと、夜空には驚くほど大きくて綺麗な満月がぽっかりと浮かび上がり、時計の針は静かに**次の日の午前二時(午前2時)**を指していました。
「わあ! もう夜中の二時になっちゃったのか! 楽しい時間は、まるでバックギアから大逆転するみたいに、あっという間に過ぎちゃうんだね!」
タツオは声を大にして驚きましたが、その胸の奥は、温かいジャスミン茶を飲んだときのように、ぽかぽかと最高のぬくもりで満たされていました。
タツオは急いでぽかぽかのお風呂に入り、一日の汗と足の痛みを優しく洗い流しました。
お布団にもぐり込むと、窓の外の満月が、タツオの寝顔をいつまでも優しく照らし続けました。
「明日、朝陽が昇って朝のラジオ体操が終わったら、あのまほうの箱で思いっきり遊ぶのが、本当に、本当に楽しみだなぁ……」
タツオは明日へのワクワクを胸の引き出しに大切に仕舞い込み、心地よい睡魔に身を委ねて、穏やかで深い眠りへと落ちていくのでした。
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