理論と魔導の融合
はずれ、魔法。
その言葉を聞いた瞬間、私の脳裏に「神」との対話がフラッシュバックした。
『はずれ魔法の汚名返上、よろしく!』
そうか、この違和感の正体はこれか。
この世界では、魔法が「属性」という偏った見方で序列化されている。だが、理学の徒として断言できる。現象に優劣などない。あるのは、法則とその応用だけだ。
「……エース! こんなところで何を」
扉が開き、父ヘンリが私を見下ろした。その鋭い眼光に、一瞬だけ背筋が凍る。
「……だ、だ、……あー」
私は咄嗟に、知性を隠して幼児のふりをした。
「ベアトリス! エースを連れて行け。軍機に触れる場所だ」
父は溜息をつき、私を抱き上げた。その手はゴツゴツとして硬かったが、確かな温もりがあった。
部屋に戻された私は、自分の小さな掌を見つめる。
生産、闇、召喚、神聖。
これらが「はずれ」と呼ばれているのなら、私はそれを科学的に、論理的に再定義してやる。
ポスドクとして過ごした不遇の二十年は、無駄ではなかった。未練も、悲哀も、すべてはこの世界で「真理」を導き出すためのエネルギーに変えてみせる。
エース・ランカスター。
赤バラの紋章を背負う、史上最強の「論理的魔法使い」の誕生は、もうすぐそこまで来ていた。




