うぁあああああああああああ
「う…うぉおおおおぁあああああああああああああ」
今俺は絶望していた。目の前にはなにも残っていない。守るべき人も信頼できる人も。すべて失ってしまった。あれだけ守ってやりたいと思っていたのに…。結局は巻き込んでしまった。俺のせいだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
俺がポーズするのが遅れたから…。迷ったから…。俺がみんなを回復させることができたのならば…。
「うぁあああああああああああ。ごめんなさい。ごめんなさい」
遡ること10時間前。買われてから1日が経っていた。
「朝だ。朝日を見るのも久しぶりだ」
奴隷になる前の記憶の感傷に浸っていた。
「気分がいいぜ。すぅううううーー。はぁあー」
息を吸って吐く。
「おはよー」
「おう。おはよう。クロエ」
今はまだ樹海の中だ。今日はその先の岬のところまで行くらしい。
そこにいる魔物のクエストを受けたらしい。ランクはD。だが周辺の村に危険が及びそうなため早急に片付けるらしい。
「おい。早く来い。出発するぞ」
この人はシンさん。昨日俺たちを買ってくれた人だ。昨日話して分かった。この人は正義感が強く、優しい人だ。ちょっと強面だけどいい人だ。
「今出発したら9時間後には着くから早く行くぞ」
9時間か。どんだけこの樹海大きいんだよ。昨日結構歩いたぞ。
「はーい」
もたもたしてもしょうがない早く行くか。
「あ!そうだ。その前にメシ食べるか」
とシンさんが言う。
「やったー。でも時間大丈夫なんですか?」
早く倒さないといけないし。
「大丈夫だ。それ込みで9時間だ。それになにか食わないと元気出ないだろ。動いてくれないと困るからな」
「そうですか。じゃあ早くしましょう」
急かす。
「急かすな。今から準備するから」
料理はシンさんがやってくれる。俺がやると言っても危ないから任せろって言われたんだ。だけど腕前は文句なしの出来らしい。美味いメシは任せとけと言われた。昨日は肉焼いただけだったけど。めっちゃ美味かったな。
回想
「ほら食え」
「ありがとうございます」
クロエと俺は感謝を伝える。
「いただきます。はむ…」
美味い!!なんというか砂漠の中でオアシスを見つけ水を飲む感覚だ。
ずっと檻ん中ではくっさいメシしか出てなかったからな。殺菌されてんのかってレベルのやつが出てきたな。
「おいしいー」
クロエの満面の笑み。
「おいしいです」
「そうか」
少しうれしそうな顔を浮かべる。
ってな感じだったなぁ。結構楽しみだな。
多分昨日の肉が余っているからそれを使ってやると思うけど…。
シンさんを見てみるとリュックから鍋を出す。
「スープ系かな?」
「水を入れる」
当たりじゃね?
「薬草、昨日余った肉、味噌を入れる」
「完成!!スープだ」
豚汁みたいなやつか。美味そう。
「ほら食え」
「ありがとうございます」
「・・・」
飲む。
「なんだこれは…」
体に力が漲る。薬草の効果か?だとしたら結構使えるぞ。見つけたら採取するようにしよう。
・・・・チカラソウ。食べたものに力を与えると言われてます。ただし生で食べるとひどい腹痛に襲われます。必ず火を通してください。
腹を壊すのか。気を付けよう。
俺たちは食べ終わり、岬まで進む。
「全然疲れないな」
チカラソウの追加効果なのか。疲れにくい。素晴らしい!!
どこで見つかるんだ。
・・・・チカラソウはそこら辺にありますよ。
本当だ。めっちゃある。なんでみんな取らないんだろう。
・・・・世間一般的には腹を壊す草としか言われてません。一流の料理人だけが効果を知っており、そしてなにより食べ方を知ってます。
ふーん。みんなバカだね。食べ物は大体火ィ通せば食えるって知らないのか?草生えるね。W。
「採取っと」
チカラソウを3つ取った。
というか俺、攻撃強化スキル持ってるからあんま意味ないんじゃね?でも疲れにくいってのは使えるかやっぱめっちゃ取っとこ。
疲労という敵がなくなるのはでかい。疲れてそのままなにもやらず寝ることがなくなるし、ぶっ通しで作業できるのはでかい。
「なにしてんの?」
クロエにバレてしまった。静かにバレずにやったつもりだったが…。
「これ取ってる。これは使える。最強の食材だ」
「朝食べたやつだよね?そんなすごいの?」
「そうだよ。力が漲るし、なにより疲れない。すごいだろ?」
「へー。じゃあ取ってて遅れないようにね」
「大丈夫だ問題ない」
俺は後れ取らないようにチカラソウを取りながら進んでいく。
ピピピ!
なにか鳴った。俺から鳴っている。
調べるとこの石から鳴っているようだ。たしかこれは…。
そうだ。たしか前に支配人からもらった魔法石だ。連絡ができるやつ。
でどうすればいいんだこれ。とりあえず触ってみる。
ピッ!
「あっあっあ。聞こえる?」
支配人の声が聞こえる。
「はい」
「よかった。あ!買われたって聞いたぜ。よかったな」
「ありがとうございます」
「だがいいことだけじゃねぇーぜ。気をつけろよ奴らがオメェを探してるって情報があった。そんだけオメェのことが欲しいみたいだな」
「マジっすか」
「うん。で今オメェどこに居るんだ?」
「樹海です。岬に向かっている途中で」
「そうか。じゃあ俺行くから。よろしく」
「え?」
「いい反応するね。そんだけうれしいのか」
心強いがなんか冷やかれされそうだ。
「まあいいや。それじゃ」
「あ!」
切れちゃった。
「やっぱ自由な人だな。支配人は」
やべ。後れ取ちゃった。急げ!
走れ!
そんなこんなやってついに岬に到着した。
「確かここら辺に魔物が居るってことでしたけど…」
見渡す限りなにも居ない。
「何故だ。確かここのはず…。なにかがおかしい」
そうだ。魔物が勝手に消えるなんておかしいだろ。なんでだ。
もう一度、辺りを見回した。
何もない。周辺に村があるとか言っていたがそれもない。考えられるのは騙されたか。
「クロエ。ちょっと来て」
クロエを近くに来させる。
「離れないでね」
「う…うん」
クロエは何が何だかわからなそうだった。
シンさんとアイコンタクトをとる。
俺もシンさんも誰かの気配はわかっていた。だがそいつは出てこない。
シンさんはその気配の近くに行く。
「・・・」
何も出てこない。
この気配。魔物ではない。人だ。となると俺を狙っているブロンの連中だろう。ということはここまで来ていたという訳か。
シンさんがこっちに向かおうとする瞬間だった。
グサッ!っと鈍い音が聞こえる。
「うお!なんだこれ…」
シンさんの腹が槍によって貫通される。
背を向けた瞬間を狙っていたということか。くそ!まんまとはまってしまった。
くそ!力が出なくて反撃できない。
「へっへっへ。これを狙ってたんだ。背を向けてくれてありがとう」
くそ。なんもできねぇ。
「まあ雑魚だったから簡単に背を向けてくれたな」
くそ!!戦闘できないくせになんで近づいたんだ。
「に…逃げ…ろ」
声が出ねぇ。あいつらだけは死なせない。
「早く逃げろ!!」
力を振り絞り、最大の声で言った。
「シンさん…」
今、クロエが居る。巻き込めない。逃げるしかないのか。
会って1日だがこんな最後なんて…。
「行くよ…。クロエ」
俺はクロエの手を掴み、走る。
「シンさんが…」
うるうるしている。
「・・・」
俺は何も言ってやれなかった。ただ逃げることしかできなかった。
奴にはまだ敵わない。悲しいがこうするしかなかった。シンさんは助からない。俺にはなにもできなかった。
遠くに行っただろうか。俺たちは少し止まっていた。
俺たちには悲しむ時間が欲しかった。
「・・・」
正直悲しさと同時に俺の無力感を感じていた。俺に力があればシンさんは死なずに済んだかもしれないと。
静寂は1つの音によって終わる。
ピピピ!
支配人のようだ。
「そろそろ着くよ」
「はい。あの…。ブロンの奴が出てきました」
「来たのか。ちょっと待てるか?」
「アクセル…。誰か来たよ」
クロエにそう言われ周りを見る。
「囲まれました」
さっきの奴じゃなく大人数の奴ら。こいつらもブロンの奴らか?
「マジ?耐えれそう?」
「大丈夫です」
「OK。あと1分待ってろ」
切れる。
「あんたらなんなのさ?何が目的なんだ?」
そう言うと1人が話す。
「お前に力を貸してほしい」
「力って戦争に使うんだろ?」
「そうだ。お前は必要になる。だから来てほしい」
「断ると言ったら?」
「力ずくでお前を引き込む」
「なるほど。クロエ、絶対離れるなよ」
「うん」
幸い相手は遠距離武器を持っていない。支配人が来るまで耐える。
「オラァァ!!」
4人は突進攻撃をしてくる。
「ジャンプするから。俺に掴まって」
クロエをお姫様抱っこすると
ジャンプして避ける。
「オラァァ」
1人をキックする。
「小賢しいな」
俺はこれをずっと続け耐える。
「よお!」
どうやら来たようだ。
「誰だ貴様!!」
「寝てろ!!」
殴る。
「うが!!」
「オメェ。逃げるぞ!!」
ある程度敵を殴って囲まれなくなると走って逃げる。
「話はあとです。今は本気で逃げましょう」
クロエを巻き込んで戦うことはできない。とんずらする!!
「追ってきてないよ」
「え?」
なんでだ?普通追いかけてくるだろ。敵はなにか作戦があるのか?考えて動かないと…。
「そっちの方向に逃げました。頼みます」
「やはり来るよな」
「でもめんどくさい奴が現れました」
「どんな奴だ?」
「闘技場の支配人です」
「そりゃあめんどくせぇわ。でも奇襲すれば1発だ」
「ですね。頼みます」
雨が降ってきたな。
「寒くない?大丈夫?」
「うん。大丈夫」
薄着だから体冷やしちゃだめだ。それも心配しなきゃ。
「止まれ。なにか気配を感じる」
「あ!この気配は…」
シンさんを殺した奴の気配だ。このまま知らずに行っていたらまたやられるところだった。
「その気配に近づかないでください。背を向けた途端刺されます」
「マジ?あっぶね」
ルートを変えよう。
「お前らなにか勘違いしていないか?」
今度は出てきた。
「なにを言ってんだ?」
奴は懐からなにかを出そうとする。それに支配人は気づき…
「危ない」
俺たちに覆いかぶさってくる。
するとドン!ドン!ドン!と鳴る。
「支配人…?」
銃声だった。そして支配人は俺たちに当たらないように盾なったのだ。
弾丸は支配人に当たり支配人は地面に倒れる。
「魔法弾の銃だ。お前は魔法の攻撃に弱いらしいからな」
そうだ。支配人は魔法防御力がEだ。致命傷となる。
「し…支配人!!」
治せないのか?できない。回復は自分にしかできない!!くそ!!なんで俺だけしか治せないんだよ。
「はぁはぁ。オメェ…。いや。アクセル!!世界の…この世界の運命は任せた」
「死なないでください!!」
「うれしいこと言ってくれるじゃねぇか。がは」
吐血する。
「いいか。アクセル。自分自身で運命を変えろ!!」
ぐたっと力が抜ける。
「支配人ーーーー!!!!」
「さあお前どうするんだ?」
岬の崖に追い込まれる。
「ええ?撃っちゃうぜ俺はよぉ!!」
本当に撃ってきたぞ。
避けれるな。
避ける。
「にひぃいい」
何故かにやにやしている。
なにか後ろから音が鳴る。
「アクセルー!!」
「なに!!」
クロエが居た地面が崩れる。
ポーズ!!
しても遅かった。もうどうにもならないほど崩れて落ちている。
「クロエーーーー!!!!」
ポーズが解除される。
「うぁあああああああああああああ!!!なんで。なんで」
こんなことになるんだ。俺のせいだ。
絶望する。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
俺のせいだ。全部全部俺のせいだ。ごめんなさい。ごめんなさい。
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