9.返事
恐る恐る、赤い丸のついた新着メールを開く。左から右へと瞳を動かしながら、文字を一文字ずつ咀嚼し理解していく。
ーえっと、ありがとう。私も蓮と話すのめちゃくちゃ楽しいし、嬉しいんだけどさ。今のままの感じでいいかなって思ってるところの方が強いかな? ってごめんめちゃくちゃ変な言い方になっちゃってるよね
末尾に謝っている絵文字がついている、遠回しなお断りのメール。
俺の中の張り詰めていた何かがふっと軽くなった。どこか本当はこの返事が返ってくることはわかっていた。
ーあはは。そうだよね、ごめんごめん。今のは忘れて〜
どう気持ちを置いていいのかわからずメッセージを送る。
―うん、わかった! これからも普通にこういう風にメールとかはやり取りしようね
千夏からすぐにメッセージが返ってくる。告白を失敗したら、それで終わりだと思っていた。そんなのは勝手な勘違いだったのかもしれない。
いや、千夏だからこれで済んだのかもな
しばらく、他愛のないいつものメッセージのやり取りが繰り返された。
―あー、流石にすごいねそれは
―でしょ? 割と日程とか頑張ったんだよ〜
よく考えたら、こんな風に会話が続くのならそれでいいのだ。告白なんて、俺には縁遠いものだって本当は……
―なんか、蓮でよかった
「えっ?」
千夏からのメッセージに、部屋で一人、思わず声を漏らしてしまった。
―ん? どういうこと
キーボードを素早く叩き返事を送る。
―蓮じゃなかったら、さっきの後普通に話せなかったかも。……って自分でも変なこと言ってるのはわかるけど……なんていうか……その、よかったなぁ〜って
俺はメッセージをゆっくり読み、微笑む。
―俺も同じ気持ち。ありがと、普通でいてくれて
その送信を終えて、俺は天井を見上げる。これでよかった。溜まっていたものを全て打ち明けて今ようやく素直に話すことができるようになったのだ。
告白というのが成功しなかった悔しさよりも、どこか晴れやかな気持ちの方が胸を埋め尽くしている。
ーそれじゃあ、明日カラオケで!
ーうん、それじゃあね〜
カラオケに行く約束をしっかりとしてメールを終えた。
失敗すればそんな予定もなくなるかもしれない。だが、こうして無くなることなく、変わらずに一緒にカラオケに行くことができる。
「一緒って言っても、結局は一人なんだけどな」
言葉の矛盾に一人で笑いながらパソコンの電源を落とし、ベッドに潜り込む。
天井の模様も見ながら、初めて女子と外に遊びにいく予定に心を躍らせて眠った。




