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9話 騎士と魔法使い

俺たち三人は、夕暮れの小麦畑を通って帰路に就いた。


馬のヘレンは買い物の荷物を括り付けていたので、俺とティナが背中に乗り。

リサーナは歩いて、ヘレンの手綱を引いていた。


三人ともほとんど喋らずに、ただパカパカと鳴るヘレンの蹄の音を聞いていた。


まもなく、ティナたちの家が見えてきた。


一度荷物を解くために、俺とティナはヘレンから降りた。


2人で、リサーナの荷物を家の中に運んだ。

家の中は、とてもこぢんまりとしていた。

玄関を開けるとリビングがあり、奥に寝室に続く扉がひとつあるだけだった。

しかし、どこか暖かみを感じる家だ。


「レヴァ....」

ティナがうつむきながら、話しかけた。


「レヴァ、ごめんね。わたしのせいで...レヴァが魔法を使うことになっちゃった。」


「何言ってるんだ、ティナ。俺の方こそごめん。もっと早くあいつを追い払うべきだった。怪我は大丈夫?」


「だって、これでレヴァは捕まっちゃうかもしれないんだよ?そうなったらわたし、どうしよう....」


「俺は相手が王様だったとしても、きっと同じことをするよ。それに、きっと大丈夫さ。騎士も、ただの子供の喧嘩だと思ってくれるよ。」


「そっか....あのね、レヴァ....今日わたしのこと"家族"って言ってくれたでしょ?あれ、すごい嬉しかった...ありがとう..../// 」


「え?」


そんなこと言ったっけ?あの時はキレてたから、何を喋ったかよく覚えてないな....


「助けてくれてありがとう!」

いつもの元気なティナが少しだけ顔を見せた。


「どういたしまして。」

面と向かって礼を言われるのは、なんだかくすぐったかった。


「レヴァ、準備できたよ。家まで送っていくよ。」

リサーナが、玄関を開けて声をかけた。


「わたしもいく!」


「ティナ、今日はもうゆっくり休みな。疲れてるだろ?」

リサーナが諭すようにティナに言った。


「でも....」


俺は優しくティナに話しかけた。

「ティナ。今日出かけて、俺の家からここまでそんなに遠くないことが分かったんだ。だから、また明日ここに来てもいいかな?俺の魔法の研究にティナの力が必要なんだ。」


ティナは少し考えて、

「わかった....」


その様子をリサーナは、微笑みながら見ていた。

「よし。じゃあ行くよ。もう暗くなり始めてるからね。」


「はい。おやすみティナ。また明日ね。」


俺は、ティナに挨拶をして玄関を出ようとした。

するとティナは、俺のもとへ駆け寄って...

頬にキスをした。


「レヴァ、また明日!」


ティナは、そういうと走って奥の部屋に行ってしまった。一瞬耳が赤くなっているのが見えた。


おれは数秒間、その場に立ち尽くしていた。




リサーナと俺はヘレンの背に乗り、家に向かった。少し小走りで進んだおかげですぐ我が家が見えて来た。


すっかり夜になってしまった。

「ようやく着いたね。今日はやけに長く感じたよ。」


「そうですね。ありがとうごさいました。」


「レヴァ、敬語はよしてくれ。あんたには、ティナを救って貰ったし、これからきっと大変な事が増えると思う。助け合うもの同士が他人行儀じゃ寂しいだろ?」

そう言って、俺の方をポンと叩いた。


「うん。わかった。」


「それと、うちの子をこれからもよろしく頼むよ。私たちは"家族"なんだろ?」

リサーナはウィンクしながら微笑んだ。


「き、聞いてたの?」


「ああ、あんた男前だからね。ティナが惚れるのも無理ないさ。」

顔がたちまち熱くなるのを感じた。


「ほら着いたよ。」


ようやく家についた。

玄関先にはセレオンが立っていた。

もう帰って来てたのか、まだ帰ってこないと思ってたけど.....


「おかえりレヴァ、遅かったね。リサーナ、今日1日ありがとう。」

セレオンは少し疲れた様子だった。

仕事から帰って来た時は、いつもこんな感じだが...


「いいや。礼を言うのはこっちの方さ。」


「?」

セレオンは頭を傾げた。


「じゃあ、あたしは帰るよ。ティナもまだ心配だからね。レヴァ、自分で説明できるかい?」


「うん、大丈夫。どうもありがとう。おやすみ。」


リサーナは、ヘレンに乗り足早に帰って行った。

俺は、セレオンに続いて家に入った。

キッチンではルーナが夕飯の支度をしていた。


「母さん、ただいま。」


「おかえりなさい。遅かったわね。お腹空いたでしょう、いま準備するから待ってて。」

ルーナは、いつもの大きな器にスープを注ぎ始めた。


「父さん、母さん、話があるんだ。今日村であった事について.....」


ルーナは、俺の様子がいつもと違うことに気付いた様子だった。すると、俺のそばに来て....


「とにかくまずはご飯にしましょう。話はその後ゆっくり聞くわ。その方が色々落ち着いて話せるでしょ?」

ルーナは微笑みながら、そう言った。


その後、3人でテーブルを囲み夕飯を食べた。俺はルーナとの約束を破ってしまった罪悪感から、あまり食が進まなかった。こんなに静かな夕食は初めてだった。


俺は食べ終わった食器を片付け、2人をテーブルに座らせ向かい合った。


俺は最初言葉に詰まった。なかなか言い出せなかったが、声を振り絞ってようやく話を切り出した。


「ごめん母さん。約束を守れなかった。魔法を使ってしまったんだ。」


俺は、今日あったことを順を追って話した。騎士の息子アレンと遭遇したこと、ティナが虐められていたこと、アレンに向かって魔法を使ったこと、オルドさんが匿ってくれたこと。


ルーナは最初笑顔で話を聞いてくれたが、ティナが虐められていたことを聞くと表情が曇り始めた。

セレオンは、終始俺の目を見つめ何も言わずに聞いていた。


「そう...そんな事があったのね。」

ルーナ心配そうな表情を浮かべた。


「レヴァ、お前は....」

俺は、怒られると思い目をギュッと瞑った。


「...お前は、すごい奴だな。」


「え?」


思いもしなかった言葉が飛んできたので、一瞬聞き返しそうになった。


「いいか、レヴァ。力というのは、困っている人を助けるためにある。大切な人々を守るためにあるんだ。きっと、父さんがその場にいたらできなかったことだ。」

セレオンのこんな表情を見るのは初めてだった。


セレオンは、俺が魔法を使う事を反対していると思っていた。いつも心配そうな目をしていたし、どこか恐れを抱いているように見えた。

しかし、今は違う。

真剣に俺の目を見つめ話しかけてくれている。その目の奥にはメラメラと燃え滾るような熱を感じた。


「レヴァ、母さんに言われた本は買ってきたか?」

セレオンが、聞いた。


「え、うん。買ってきたよ。」

俺はオルド書店で買った、「騎士と魔法使いの歴史」をテーブルの上に置いた。


「よし。お前にはもっと早くこの事を教えるべきだったね。今から3人で読もう。」

そういうとセレオンは本をパラパラとめくって、とあるページを眺めた。


「うん、ここがいいかな。レヴァ、ここを読んでみなさい。」


「う、うん。わかった。」

俺は、恐る恐るページを読んだ。


見開きのページにはこの本内容が要約されたページだった。



第一章 魔法の時代


かつて、この国は魔法大国と呼ばれるほど魔法が発展し、魔法使いは国の中枢と言われる程に重要な存在であった。

農業、工業、医療、軍事、あらゆる場面で魔法は国を発展させてきた。後にこの時代は「魔導期」と呼ばれるようになる。


中でも、ルーメンディス家、アルケラード家、マギアス家、アンブラスト家の4つの名家が中心となり、この国を魔法大国へと発展させた。


第二章 魔導期の闇


魔法使いはやがて権力を持ち、政治にも魔法使いが介入するようになった。そして魔法使いは、魔法を使う代わりに高額な対価を税として民衆から搾取しはじめた。

その結果、魔法使いは財をなし至福を肥やし、民衆は高すぎる税により疲弊していった。


当時、街の警備を任されていた騎士の一部が圧政に立ち向かおうと立ち上がったが、魔法の前にはなす術はなかった。


第三章 魔石の発見


魔法使いはもはや民衆のために魔法は使わなくなっていた。その為、街や村に度々出没する魔物の討伐は警備を任されていた騎士が引き受けていた。

ある時、1人の騎士が強大な魔物を討伐し体内から"魔石"を発見した。


魔石とは魔法使いでない者でも、限定的な魔法を行使できるというものだった。

その魔石を発見した騎士の名は、アーサー=ヴェルトゥス。


第四章 革命


アーサーは魔法使いの圧政に立ち向かおうと反旗を翻した。そして、魔法使いの名家の一つのアルケラード家の当主、トーマス=アルケラードを反逆軍に引き入れた。トーマスは、魔石を武器や防具に付与する技術を生み出した。


魔法使いは魔力切れを起こすと動けなくなるのに対して、魔石には限度はあるものの圧倒的な魔力持続効果を持っている為、戦いでは絶大な力を発揮した。


アーサーは、魔導政権を見事打ち倒し国に安定をもたらした。



まさか、そんな歴史があったなんて......

俺は、ページを読み終え静かに顔を上げた。


「読み終わったか?今まで黙っていてごめんな。本当はもっと早く教えようと思っていたんだが、レヴァが真っ直ぐに魔法を楽しんでいるのを見たら言い出せなかったんだ。魔法が嫌いになってしまうかもしれないと思って....」


「私も....ごめんなさい...」


ルーナとセレオンは一緒に謝った。


「いやいや、2人が謝る事ないよ。それで、この後魔法使いはどうなったの?」


セレオンは顔を上げ、話し始めた。

「女、子供以外は処刑された。しかも、当時あった魔法に関する書物や資料は全部燃やされたんだ。当時の魔法の技術を知るものは居なくなって、みるみる魔法使いは衰退していった。」


「その生き残りの子孫が私たちよ。うちの車庫にある本も革命が起きるより前の物は残っていないわ。」


「じゃあ、今は騎士がこの国を統治してるの?」


「さっきのアーサーがそのまま王様になって、騎士が国を納めるようになったんだ。領地それぞれに騎士が居て、政治や警備を任されている。しかし、魔石っていうのは簡単に採れる物じゃない。強い魔物からしか取り出せないし、毎回出るとも限らない。だから今は、国が魔石を全部管理してる。各領地の騎士と王都の騎士団、それから一部の冒険者しか魔石を持ち歩けない。」


「でも、魔石があったら魔法使いは要らないんじゃ...」


「魔石っていうのは、それぞれに限定された魔法しか使えない。しかも貴重だ。何か困った時、騎士に依頼したらとんでもなく金が掛かる。それに比べたら、魔法使いのほうが安く請け負ってくれるし、大抵のことは解決できる。今はそうやって細々と暮らしているのさ。ウチみたいにね。」


「必要とする人がいるなら、魔法使いはそこまで衰退しなかったんじゃないの?」


「レヴァは本当に賢いな...」

セレオンは突然悲しそうな笑みを浮かべた。


それを見かねてルーナが話し始めた。

「あのね、レヴァ。....魔法使いは、長い間迫害を受けているのよ。」


俺はまた、言葉を飲んでしまった。

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