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勇者の魔女~輪廻の旅の果てに復讐に染まった少女は……  作者: ただの小林
【序章】再起~魔女の里と精霊王
3/7

3 独学の魔法と魔力

「わかるかもって、え!? アサガオわかるの!?」


 言い出したクオン本人が食い入るようにしてアサガオを見つめる。

 その勢いでアサガオの顔に近づき、アサガオ自身若干後ろに下がった。


「近い、近いぞクオン……全く子どもかお主は……。まあよい。わかるといってもあくまで妾の主観であることを忘れるなよ? 見当はずれかもしれぬし――」

「うんうんそれでそれで――!」


 先程よりさらに食いつきが強くなる。

 流石のアサガオも相手にしてられないと判断したのだろう。そのまま話を続ける。


「魔法使いとしての観点から言うとサクラ、お主の魔力の流れが乱れておる」

「……魔力の流れが?」

「ああ……と言っても微々たるもの、普通の魔法使いから見たらほぼほぼ気付かないレベルのもんじゃ」

「魔力の流れが乱れているのとマーラに勝てるかどうかに関係があるの?」

「言うたじゃろ、見当はずれかもしれんとな。だがな、マーラとの戦いがどうこうはわからぬが、サクラの実力が発揮しづらいという点では見当はずれではないかもしれんということを言いたいんじゃ。結論を言うと、魔力の流れが乱れていると本来の力を発揮しづらくなるんじゃよ。ほんで、お主の魔力の流れは微妙に乱れておる。別にお主は魔法戦が主戦という訳でもないし、魔力的にも正直このままでも問題は無いじゃろう……あ奴(魔王マーラ)を除けばの話じゃがな」

 

 クオンの言う何かが足りないというものがアサガオの言う「魔力の流れの乱れ」だとしたら……とこれを知ったからと言ってサクラ自身あまりピンと来ていない。

 その乱れが酷いものであったのならとっくに気付いているだろうし、対策も練っていただろう。

 しかし、アサガオの言う通りその乱れはほぼ気付かないレベルの乱れということもあってサクラはピンと来ていないのだ。


「本来は見習いのタイミングで矯正したりするものなのじゃが……サクラは魔法の――魔力の使い方はほぼ独学じゃろ?」

「ほとんどはね。でも一番最初に魔力の使い方を教えてくれた人はいる。本当に一番最初の頃だけど」

「ほぉ、そ奴は魔法使いなのか?」

「いや、どちらかと言うと剣士かな? 魔力の使い方を知っているってだけであの人自身魔法が使えるわけではないから……いや、火を起こすのに魔法を使っていたような……」

「ううん、あれは魔術だよ。魔術道具を使って火やら灯りやら灯していたから」


 当時はサクラだけではなくクオンも一緒で、サクラはあまりそこのところに興味を示さなかったので記憶が曖昧だった。

 でも思い返してみるとクオンは割と色々なものを観察していたと思う。だから仕組みなどを理解していたのだろう。


「そのサクラに魔力の使い方を教えたという奴は、お主の師か何かか?」

「うん、魔法はほぼほぼ独学だけど剣術に関しては師匠からみっちり教え込まれた。戦い方もだけど」

「なるほどのぉ……だったら魔力の流れが乱れている理由に納得がいったわい。だが、本職ではない者が教えた割には魔力の流れがそこまで乱れていない……ぱっと見美しいとさえ感じてしまう。それだけお主の才能が秀でているのじゃろうな」

「どうしたら乱れは改善するの?」


 もし魔力の流れの乱れが原因で本来の力を発揮出来ていないのなら、サクラにとっては早くに改善したいこと。

 魔王マーラとの再戦を考えるとなおのことだ。


「うーん、そうじゃなぁ……」


 腕を組み、アサガオは眉間にしわを寄せて唸りながら何かを考えている。

 そう時間を立たずして何かを決心したかのように口を開く。


「サクラよ、端的に言うと精霊と契約するのじゃ!」









「――精霊と……契約?」

「うむ! その通りじゃ!」


 精霊について語るには、まず魔法と魔術に使用される魔力の話をしよう。

 魔力には火、水、風、土、光、闇、無と七つの属性が存在し、魔力を持つものはいずれかの属性に分類される。

 七つの属性の内、無を除く六つの属性にはそれぞれの属性を司る精霊が存在しているとされる。

 一説には神の眷属とも言われているが実際は精霊という独立した存在。

 しかし、悪魔同様にお伽話の中の存在として扱われており、現在は悪魔以上に非現実的な存在として認識されている。


「――これが精霊というものだが――」

「契約しろって言うくらいだからいるんだよね? 精霊……」

「無論精霊は存在する。話は違うが六聖教会が信仰しているのは精霊であり、熱心な信者は精霊が本当に存在していると信じ込んでおる。トップにおる奴らは実際に見た奴らが割と多くいるはずじゃ」

「六聖教会って精霊を信仰してるんだ~。てっきり神様を信仰しているものだとばかり……」

「それも間違っておらんぞ。先も話したが精霊を神の眷属として認識しておる者もおる。それぞれの属性の精霊の頂点に立つ存在こそが神であるという奴がおるくらいじゃからのぉ。簡単に言ってしまえばあ奴らの信仰対象は各属性の精霊と女神(・・)、それらの頂点に立つ神と覚えておくがよい」

「……ちょっと待って」


 サクラがアサガオの話を遮る。

 アサガオの最後の一言に違和感を覚えたからだ。


「精霊と神はわかった……なに、女神も対象なの? そもそも今の話し方だと女神も属性ごとに複数存在してるの?」

「知らん!」


 言い切ってしまった。


「おばあちゃん知らないの?」

「信仰対象についてはあくまでこれは信者に聞いた話に過ぎぬ。ただ妾は各属性に属する女神はいない者だと考えておる。神と名は付いておるがあくまで”女の神”というだけに過ぎない。それに言うたじゃろ精霊は精霊という単体の存在であると。精霊の頂点に立つものは神ではない。それは精霊王という存在じゃ」

「精霊王……」


 アサガオの話だと、精霊の頂点に君臨するのは精霊王という存在であり、各属性の頂点に君臨する。

 火属性だったら火の精霊王。水属性だったら水の精霊王と……。

 ただ女神自体は存在しているだろう。あくまで”女の神”であるというだけでそこに精霊はあまり関係していない。

 無論、人と同様にそれぞれの属性に分類される、特化した神(女神)は存在しているだろう。

 ただそれは精霊の存在とはまた別の話である。


「ちなみにアサガオは精霊を見たことはあるの?」

「あるぞ」

「あるんだ」

「なければこんな提案などせんわ。話を戻すぞ……精霊と契約することでお主の魔力の流れを安定させる。これは魔法使いの見習いがよくやる工程の一つじゃ」


 見習いの魔法使いは流れのみならず魔力自体安定していない。

 幼少期の頃は大丈夫なのだが、成長期で心身の成長に反応するように魔力も成長するその過程で魔力が不安定になる。せれは魔力と身体がすぐに馴染まないのが原因である。

 これに関しては時間が解決することが多いのだが、稀にかつ魔力の流れは中々時間が解決してくれない。

 鍛錬等で解消されることはあるのだが、時に用いられることが精霊との契約である。

 精霊との契約によってほぼ確実に魔力の流れは安定する。

 しかし精霊の力はたとえ下位の存在であっても強大だ。

 見習いが契約するには精霊の力が強すぎて失敗するリスクもある。

 だから精霊の契約は見習い卒業後に行われることが多いが、この工程自体数多く行われているわけではない。

 そもそも精霊を見つけること自体極めて難しいのだ。

 しかし、アサガオには精霊を見つけ出す術を持ち合させている。


「この魔女の里のはずれに洞窟がある。洞窟の最奥には精霊の祠と呼ばれるものがあってのぉ、そこでお主と召喚された精霊と契約をする……そんな感じじゃ!」

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