アウトオブあーかい部! 70話 にゃんこの家
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室……
ではなく、池図女学院の2年生、みどり先輩こと鶸田みどりの実家、『キャットハウス鶸田』という猫カフェ。
「さ〜てと。きはだ、今日もいくわよ!」
「お〜う♪」
日曜日。『キャットハウス鶸田』開店5分前。
「今日はしっかり着替えて来たし、誰に見られても大丈夫!久しぶりの猫カフェだ、たっぷりとかわいがってやるぞ……!」
「かわいがるといってもいためつけてやるんじゃないぞ、アタマをよしよしとなでたりたかいたかいとかをするということだぁ!」
「「くっくっく……。」」
入り口前で2名の不審者、改めモーラときはだは朝から気合を入れていた。
「あの……もう、入ります?」
「「はい……っ!」」
見かねたみどり先輩にドアを開けてもらい一番乗りするところまでが最近のワンセット。
「えっと……いつものでいいですか?」
「ええ、ありがとうね鶸田さん。」
「白久先生も喜んでおられるぞ、みどり先輩。」
「ノリはいつものじゃなくていいんですよ……。」
もちろん(?)、モーラは白ちゃんに扮する。
「ほーら、行くわよきはだちゃん。」
「はぁ〜い♪」
モーラときはだは今日も奥のふれあいルームへ。
「2人ともすっかり常連さんですね……♪」
みどり先輩が2人の背中を見送っていると、再びドアが開く音がした。
「いらっしゃ……赤井さん?」
「もう、サングラスをしていてもわかるんだな。」
「猫カフェにサングラスかけてくる人なんて、そうそういませんよ♪」
「他にもいるのか……?」
「ええ。さっき白久先生ときはださんが中に入って行きましたよ?」
「白ちゃんが中に?……妙だな。」
「妙?」
「ワタシほどじゃないんだが、白ちゃんも相当ネコに嫌われているはず……ほら、初めて4人でお邪魔したときみたいな。」
「ああ、ふれあいルームのネコ達がこっちまで逃げてきましたね。」
※44話参照
「……。なあ、きはだと一緒に来た人って、本当に白ちゃ……白久先生だったのか?」
「どこからどう見ても白久先生でしたよ?きはださんだって、『白久先生も喜んでおられるぞ』って言ってましたし。」
「怪し過ぎる……。」
「偽物だって言いたいんですか?」
「いや、そういうわけじゃない……のか?」
「姉妹でもない限り不可能ですよ。それも生徒のきはださんと2人でお出かけするほどの大の仲良しなんて、どんな狭い世界なんですか♪」
みどり先輩は手で軽く口もとを隠して上品に笑った。
「…………みどり先輩。世界って結構狭いんだ。」
「へ?」
ひいろは、白ちゃんに妹がいること、その妹があーかい部にとってわりと親しい間柄であることを話した。
「うっそぉお!?」
「まあ、普通信じられないよな……。」
「早く帰って来ませんかね……!?」
みどり先輩は驚いていたが、すぐに切り替えて『白久先生の妹』への好奇心に目を輝かせ、身体を小刻みに揺らしていた。
「一応、騙されていたんだぞ……?」
「はっ!、そうでした!?でもなんで……?」
「楽しんでるだけだと思うぞ?モーラさんの考えそうなことだ。きはだもノリノリで加担しそうだしな。」
「そんなちゃめっ気のある方なんですか?」
「戻って来たら話してみるといい。……白ちゃんとは別人だから。」
「早く戻って来ませんかね……!?」
ひいろは小刻みに揺れるみどり先輩の背中に、『ワクワク』『ソワソワ』という擬音の幻覚を見た。
「気になるなら会いに行ってみたらどうだ?迷惑料代わりに受付を代わるぞ?」
「お気持ちは嬉しいんですけど……私が奥に入るとお客さんのネコを奪ってしまうので……。」
「そうだったな。」
みどり先輩はネコからとっても好かれてしまう体質である。
「……ならワタシが呼んでこよう
「いえ!」
「?」
「もう少し、ここでお話ししませんか……?」
「ワタシは一向に構わないが……、」
「ほら!お2人、90分コースで入っちゃいましたし!?///」
「しっかり満喫してるな……。」
ひいろはみどり先輩の隣に座り直した。
「それで、白久先生の妹さんってどんな人なんですか?」
「どんな人って…………あれ?ワタシもあまり知らない……?」
「そうなんですか?」
「いや、PINEのトークではけっこうはっちゃけていて快活な人……なんだが、思えば何回もは会っていないな……。」
「友だちの友だち……みたいな?」
「現状はそうだな。あさぎやきはだは、『悪ガキなお姉ちゃん』って感じで接しているようだけどな。」
「『悪ガキなお姉ちゃん』……!」
みどり先輩はいっそう目を輝かせた。
「なんだ?憧れでもあるのか?」
「私、1人っ子なもので///」
「そういえばあさぎもきはだも1人っ子だったな。」
「赤井さんは?」
「1人っ子だぞ!」
「一緒ですね♪」
「あさぎときはだもな。」
「……、」
みどり先輩は一瞬顔を膨らませたが、ひいろは気づいていないようだった……。
『いっやぁ〜ネコ吸ったわ〜。』
『頭がニャンニャンするぅ〜。』
それから2人で談笑していると、ふれあいルームの方から聞き慣れた声が2つ近づいて来た。
「お2人、帰って来るみたいですよ……って、なんで隠れるんですか?」
「きはだとモーラさんの組み合わせにちょっと興味があってな……///いつも通り接客してみてくれ。」
「かしこまりました……♪」
みどり先輩はカウンターの下にひいろを匿った。
「みどり先輩たっだいまぁ〜♪」
「お楽しみでしたね♪」
「満足満足、ありがとね〜♪」
「白久先生もご満悦であるぞ……。」
「はいはい♪」
「じゃあこれ、今日のお題ね?」
「またちょうど……ありがとうございます。」
「鶸田さん、私たちがネコ狂いなことは、くれぐれも学校のみんなには内緒で頼むわよ?」
モーラは、白ちゃんと同じ声で唇の前に人差し指を立て、ウインクしてみせた。
「こりゃ見分けがつかないわけだ。」
「「ひいろ(ちゃん)!?」」
ひいろがカウンターの下から出てきた。
「な、なんでここに……!?」
「みどり先輩に会いに来たんだよ。」
「赤井さん……//////」
「ってそんなことはいいんだ。」
「そんなこと……。」
みどり先輩はガックリと肩を落とした。
「2人とも、あんまり白ちゃんの悪評広めるもんじゃないぞ?」
「大丈夫よひいろちゃん。休日だって先生として節度ある振る舞いを
「モーラさん?もうバレてるからいいって。」
「ばかなっ……、私の完璧な擬態が見破られただとぉ……!?」
「本当に『悪ガキなお姉ちゃん』だぁ……!」
「「え?」」
モーラに向けられるみどり先輩のキラッキラした眼差しにきはだとモーラは困惑した。
「ひいろちゃん、何これ……?」
「みどり先輩は『悪ガキお姉ちゃん』に憧れているんだ!」
「いや、私そんなお姉ちゃんしてないよ?……妹だし。」
「悪ガキは否定しないんだな。」
「すごい、すごいです!うわぁ〜、どこからどう見ても白久先生だぁ……!」
みどり先輩は子犬のようにモーラの周りにまとわりついて観察した。
「テンションたっかいねぇ。」
「あの、あの!きはださんとひいろさんはどうやって見分けてるんですか!?」
「え?」
「あ〜……なんだろう。」
「指摘するのは難しいなぁ……。」
「これが生き写し……!」
「あの、ちょっと……お三方……!?」
モーラはしばらく3人に囲まれ全身を凝視されていた。
「「わかった(ぞ)!」」
「?」
「あの〜……もう、満足した?」
「モーラさん、白ちゃんよりちょっぴり『デカい』ねぇ?」
「下半身がスリムだな。」
「やめろやめろ///」
「へぇ〜、そうなんだぁ……!」
「そこのええっと……、みどりちゃん!キラキラした目で私を見ないっ!///」
「はっ!すみません!?私としたことが、お客様にとんだご無礼を……!?」
「ああいや、それはまあ別にいいんだけどさぁ、いいんだけどさぁ……!?」
「凄い……やっぱり懐の深さも『お姉ちゃん』だぁ……!」
「ぐあぁぁ……!///やめろ、そんな純粋な目で私を見るなぁあ!?//////」」
モーラは日差しを遮るように手のひらで顔をガードした。
「モーラさん珍しく振り回されてるね。」
「なんか新鮮だな。」
「きはだ、ひいろ、私を助けてぇ〜!?」
「猫カフェのネコ達もこんな感じなんだろうな……。」
「これからはもうちっと丁重に扱うよぉ……。」
にゃんこの家(4)
ひいろ:なんだここ?
きはだ:ヒットぉお!!
ひいろ:いつものグループと何が違うんだ?
モーラ:それは私がいることさ!
ひいろ:モーラさん!?
きはだ:わたしが呼んだぜ
ひいろ:ここならあさぎがモーラさんの可能性を疑わなくて済むんだな
きはだ:チッチッチ、それだけじゃないよぉ?
みどり:なんですかそれ面白そうですね!?
みどり:すみません被っちゃいました
ひいろ:みどり先輩!?
モーラ:猫カフェのメンツか〜
きはだ:いかにも!ここが君たちの『ふれあいルーム』ってわけさワハハハハ!
ひいろ:あんまり変なことしてみどり先輩に迷惑かけるなよな
みどり:いえ、迷惑だなんてとんでもない!?
モーラ:ひいろちゃ〜ん、私の迷惑は?
ひいろ:進んであさぎになりすましてくる人が迷惑に感じるとでも?
モーラ:違いないw
みどり:あの、あの!その擬態とか、なりすましって
きはだ:そっかぁ、みどり先輩知らないもんねぇ
モーラ:あーかい部のトークルームで話すとき、稀にあさぎちゃんの中に私が入っていることがあるぞ!
きはだ:レアキャラみたいなもんだねぇ
みどり:それって、あさぎさんのスマホをモーラさんが操作してるってことですか?
モーラ:姉貴分の特権さ……!
みどり:凄いです!これがお姉ちゃんなんだぁ……!
モーラ:え、違……ちょっと待って
きはだ:自分で起動してて草ァ!
ひいろ:みどり先輩に悪ふざけは通用しないぞ
みどり:そうですよね、私にはお姉ちゃんも妹もいないから……
ひいろ:いや、違う!待ってくれそう言う意味じゃなくて
ひいろ:みどり先輩は良い子だからあんまり揶揄うなという
みどり:お気遣いありがとうございます
ひいろ:すまない……
みどり:わかってくれればいいんです
モーラ:やーい墓穴
きはだ:1番に墓穴掘った人がなんかいってらぁ
みどり:私だってけっこう悪い子なんだ……ってね♪
ひいろ:え
きはだ:え
モーラ:え
みどり:私だってあーかい部のみなさんの投稿を見て勉強したんです、遅れはとりませんよ?
きはだ:こいつぁとんでもねえ悪い子ちゃんだぜ