隠キャ登場!
お久しぶりです。
五百年の年月というのは、とてつもなく長いのです。どれくらい長いかって?そうですなぁ…想像を絶する死。人並みに過ごしていれば思いつくものはこの程度でしょう。心臓に仕掛けられた時限爆弾が、三分で爆発する所を二分という中途半端な所で爆発してしまうパターン。目の前に包丁を持った家政婦メイドが、襲いかかってくるんで身構えてたら、後ろのもう一人が心臓を突き刺すパターン。ふと、目を覚ますと手足を拘束され、下半身を丸裸にされてる。目的はなんだと聞くと、ただ、ただひたすらに束縛したかったと。はて?何か私はやらかしたのでしょうか?
この程度です。人並みに思いつく事など。そう、この程度。まさに脆弱。それでいて嶺奴。長い。遥かに。まさしく壌土。模像。五里霧中もさながらの明けヶ原。鮮明に彩る権蔵は存亡のカケラへ寄り添い、怒号、憤慨、選定、無芸。
思いつかない。五百年の遥か時。言語道断よい時雨。ゼミのシグナルまたと泣き、そこはかなる地層はとめどなく。溢れ去られば恋い焦がれ、轟き瞬き計りけり。
そんなこんなで私は兜として五百年を生き、ある店で売り物になっていました。
チリンチリン
「…らっしゃい」
男は店内を見回る。巨躯だ。おそらく、見たところ前衛。タンクの役回りをしているのだろう。店内をくまなく探索したところ、どうやら私に目をつけたようだ。お目が高い。
「この、鉄兜がほしいんだな」
癖がお強い。合格です。喋り方の癖がお強うございますな。ちょうど私も思っていた所です。あなたが…欲しい…!
「千ゴールドだ。」
「ウホッ!お買い得なんだな!」
巨躯は、ほくほく顔で代金を払う。本来なら鉄兜は倍以上の値段がするのですが、長年売れ残れば段々と値段が下がってくる。というのも私がそういうふうに仕向けたのです。スキル、隠密。
何を隠しましょうか。私は面白主義なのです。それはもう、キャラの濃おおおおおおい者にしか。五百年も生きてると、もう、そういうものにしかなれないのです。新たなる冒険。強者との戦い。相棒との絆。代案は思い浮かぶことでしょう。…しかしそれはもう、十分に堪能致しましたよ。しかし、未だに堪能し切れないもの。それが、面白生物。こればかりはね、なかなかに捨て難い。