我が道を行く
日給運転手が積載オーバーで走る根拠とは。
「今日はいつものルートじゃないなんだ、途中で拾ってもらう荷物がある。ただ、数量は大したことないから余裕で間に合うと思うけどさ。じゃあ、とりあえず三か所の積み込みが終わったら連絡してよ。それから伝えるから」
俺は真枝満。大型トラックの中、長距離運転手だ。未婚でほとんど家に帰らず、こうして仕事している。日曜日の夜明け前にやっと自宅へ辿り着いた後、再び日付をまたぐ頃には再度出発する。こうした生活をもう何年と続けている。滞在時間は丸二日もないくらいだろう。たまたま寄れる時以外はほぼ留守に近い。それでも家にいようがいなかろうが、毎月家賃は発生する。そこで仕方なく、自宅を引き払おうかと考えていた時のことだった。
「引っ越すのか」
普段、仕事の予定を割り振っている先輩の牧がそう尋ねてきた。
「家賃がもったいなくて。ほとんど家に帰れないですからね、で、ご相談なのですが」
「なんだよ、改まって」
「次もまた、前回と同じような予定を組むのなら辞めますから」
すると大笑いした後、牧は電話口の向こうで声を荒げた。
「はっは、わかったわ。お前の代わりはいるから構わねえぞ」
その一か月程前のこと。予定表に目を通していると携帯電話へ連絡があった。
「真枝君か、お疲れさん」
いつも帰りの荷物を手配してくれる河野辺だった。
「どうしたんですか。まだ本拠地ですよ」
ひょっとして勘違いかと思ってそう尋ねたが、そうではなかった。
「いやあ、事務所で今日の荷物について何か聞いたか」
「ええ、いつも通り積み込んで、ただ途中に一件寄るかもしれないと」
「そうそう、しかしまあ今日の重量はかなりあってさ、ひょっとしたら積み切れないかもしれないんだ、お前なら多分いける思うんだけど」
「ま、とりあえずやってみますよ」
「うん、ま、もし無理なら連絡してくれや」
それから三か所で荷物を集めた時点で総積載量の7000㎏を超え、当日予定重量はさらに倍はある。ただ荷台のスペースを見れば収まるかもしれないとは思っていた。
「牧さん、三か所終わりましたけど、既に七トン超えましたよ」
「そうだろう、それで予定の半分だ」
「つまりこの倍は積むのですね」
「いや、もちろん重量は十トンに収める、ただ、ひょっとしたら積み切れないものがあるかもしれない」
「で、寝台の出番ですか」
「いや、でもまあ、とりあえず積めるだけやってみてよ、それでも無理なら仕方ないから連絡して。それとさ、途中に寄るところがあるのは忘れないでくれ、頼んだよ」
「はい、わかりました」
短編三部完結、其の壱。




