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人食い邪竜、やさしい人間のおっさんとして生きます  作者: 伊沢新餌
1章 気がついたらおっさんであった
4/18

4話 初めての仕事とパーティ

 ワイバーンが我がブレスの昨晩の火種となったのが昨晩のことである。


 火のついた村はどうすることもできず、村人たちもただ呆然と燃え尽きるのを待つだけだった。


 リリィは燃え落ちていく家をただ呆然と悲しそうに見つめていた。


 リリィが傍にいてくれというので、藁の山によりかかり、肩を抱いて一晩中寄り添っていた。


 疲れたのか、いつの間にかリリィは寝ていた。

 その顔には涙の筋があった。一体、どういう感情なのだろうか。


 後に聞いた話だと、村での家屋全焼は20棟、死者は12人にものぼったらしい。

 小さな村の何割かに及ぶこの被害は、それでも奇跡的に小さなものだったようだ。


「その、リリィ。昨日は済まなかった。乱暴なことをして。」


「いいんです。ちゃんと、あのドラゴンを退治するためのことだって理解できましたから。

 ちょっと、怖かったですけどね。」


 リリィを裸に剥き、囮にしたことは平謝りした。

 この身体の記憶が、それはひどいことだ、だめだろうとと責めるの気がするだ。

 

 仕方がないではないか。あれ以上に適切な方法が思い浮かばなかったのだから。

 正直、テンションがあがって調子に乗っていたことはあるが。


 正直、村長とやらに話を聞くような雰囲気でもなくなってしまった。

 というか、昨日の襲撃で、それなりの怪我を負ってしまったらしい。


 襲撃してきたドラゴンがどうなったか、流石に隠すわけにも行かなくなってしまった。

 行きずりでやってきた凄腕の魔道士である我が、魔法で倒したことにするらしい。


 流石に昨晩のあれは、やり方が派手過ぎた。


 古代竜のブレスだと気づいてしまうものもいるかもしれん。

この体でいるうちは、なるべく普通の人間のふりをして隠し通すのだ。

これからも、ブレスは自重しなければ。


 つまり、村が騒ぎになる前に、さっさと城下町へ旅立つ必要があるみたいだ。

 これ以上あれこれ聞かれたくはない。村が混乱しているうちに出よう。


「本当は、もうちょっといてほしかったです。2度も命を助けていただいて。

 おじさまがいなければ、きっと、この村も、私も今頃。」


「残念だ。我の力は、色んな人を助けるために必要なんだ。

 一箇所にとどまるわけにもいかない。

 正体を明かすわけにもいかない。名残惜しいが、笑顔で見送ってくれ。」

  

 本当のことを言うと、我は人類の敵なのだが、それっぽいことを言ってこの場はごまかすことにする。

 

「せめてお弁当ぐらいは渡せればいいものの。今は何もなくなってしまって。

 ああ、おじさまについていければ、いいのに。」


「昨日で理解っただろう。我についてくれば、命がいくつあっても足りない。それに、お嬢さんを守りきれるほど

 強さに自身があるわけではないんだ。」


「そうですね。足手まといになるわけにはいきませんから。

 きっと、きっと。また、この村を訪れて、もう一度会いに来てくださいね。

 それまでに、復興してますから。」


 正直それについては我も同感である。

 手のひらにはまだ昨晩の生おっぱいの感触がのこっているのだ。


 もしさっさと元の姿にもどれたならば、もう一度この村に飛んで戻って、

 今度は別の意味で味わいたいものだ。


 人間の手で揉む乳房というのはまた一味違ったものだな。


 挨拶をかわし見送られ、我は次の目的地、城下町へ向かうこととなった。

 いざ、元の姿に戻る方法を目指して……。


--


 やって来たのがポルーナである。

 オーガであろうと登りきれないような、見上げる高い石の壁と、堀とよばれる水池に囲まれたその街は

 ポルーナ候爵などという貴族のお膝元らしい。


 人間の姿になって初めて見たら大きいものだな。いつもこの手のものは空から見下ろすだけだった。


 しかし、なかなか大変な旅路だった。

 歩いて5日もかかるとは。なにせ食料も持たずに出かけたのだ。

 人間の体がこんなに飢えに弱いとは思わなかった。

 たった2日間、飲まず食わずで歩き続けるだけで、身体が動かなくなるとは。ドラゴンの身体が恋しい。


 途中の集落で補給ができなかったら危ないところだった。

 この身体が持っていた、「貨幣」とやらは便利なものだな。

 こうなるなら、最初の馬車でもう少し集めておくのだった。


 しかし、残りがあと銀貨3枚か。さて、これを何に使うか。ん……?


 もう目の前にあった、城下町の入口。

 跳ね橋をわたった門の前の詰め所に列ができている。

 槍を持った兵士に促され、列に並ばされると……。

 

 なんということだ。通行税?とやらで、ただ街に入るだけで銀貨1枚をむしり取られてしまったのだ。

 もちろん抗議をしたが、物を知らぬ田舎者とのことで一蹴されてしまった。


 その気になればこの場の兵士を全員ぶち殺す事もできたが、

 そんなことをすれば元も子もない。我はそこまで短期でも愚か者ではないのだ。

 

 いきなり路銀が減ってしまったことは残念だが、気を取り直すことにする。

 さて、街の中に入ってみると、大変なにぎわいだった。


 今まで小さな集落を点々としていたせいか、あっちを見てもこっちを見ても

 人間だらけというのはなかなか新鮮に感じた。


 かつてこれぐらいの大きさの街も滅ぼしたこともあったな。

 なるほど、この身体での視点もなかなか新鮮で面白いものである。


 さて、このままではいけない。残りの銀貨は2枚しか無いのだ。

 パンとやらをほそぼそと買っても、銀貨1枚で買えるパンはせいぜい10日分。


 我は人間などと違い、いくらでもそのへんで寝られたものだが、街の中では

 あまりそういうことをするとフロウシャというものの仲間入りになってしまうらしい。不便なものだ。


 つまり、我はこれから金を稼いで、この街に滞在する間の貨幣を稼がなくてはならないらしい。

 すべて、出かける前にリリィや途中の集落で聞いたものだ。


 途中の集落で金の価値を聞いたときは、どんな田舎者だよとツッコミすら受けてしまった。

 

 さて、金の稼ぎ方についてもちゃんと情報は仕入れてある。このような大きな街には、

 冒険者ギルドという、日雇い労働者のための施設があるというのだ。


 我ほどになると、人間の言葉どころか、文字までマスターしているのである。

 街の看板を見て、地図をたどれば、簡単に冒険者ギルドは見つかった。


 中に入ると、多くの人が集まっていた。それも、武器を持った、いかつい男たちが多い。

 いつの時代か、我に戦いを挑んできた戦士たちを思い出す。


 真っすぐ進み、カウンターの男に話かける。


「ここが冒険者ギルドとやらだな。仕事がほしいので、登録をしたいのだが。」


「登録料は銀貨1枚だ。」


 カウンターにいた、眼帯をつけた頭の毛の薄い男は、じろりとこちらを値踏みするような目で見ると、

 無愛想に返事をした。


 まったく、仕事をもらうためにカネを払わなければいけないとは、おかしなシステムだな。

 金というものはあっという間になくなってしまうものだ。

 素直に銀貨を払うと、残りはあと1枚だ。

 

「ここに名前を書くんだ。文字はかけるか?」


 先日、散々悩んだ名前についてだが、それはここに来るまでに決めておいた。

 ノジー・アイク。あの晩、リリィに危険を知らせに来てくれて死んだ、小太りの男の名だ。

 もう死んだ人間の名前なら問題がないだろうと、拝借させてもらうことにした。


「ノジー・アイク。冒険者ランクはFからだ。無理して命を落とすなよ。おっさん。」


 身分証にもなるらしい、名前の刻まれた鉄板のついたネックレスを受け取ると、

 隣りにいたまた陰気な男に説明を受けた。


 冒険者ランクとは冒険者としての格の目安となるものらしい。

 仕事を成功させると、その貢献度に応じてポイントが増えて上がっていく。


 仕事は壁のボードにある一覧を見て、自分の実力ランクにあったものを選ぶらしい。

 仕事は、自分の実力の一つ上のEランクのものまでしか受けられないとのことだ。


「よお、その歳でFランク冒険者かい。一体、今まで何をしてたんだ。」


「財布でも落として食いっぱぐれたか?おっさんよお。」 


 周囲の男たちから野次をもらう。愛想笑いをして躱す。この歳で冒険者登録というのは珍しいことなのか?

 ただの仕事をもらう糸口だと思ってきたのだが。


 早速仕事一覧を見てみる。Fランクは……。

 街に落ちている野糞や馬糞の片付け。そして、下水道に溜まったゴミ掃除だ。


 最低ランクかと思いきや、Eランクの薬草集めなどに比べ、報酬がいいぐらいだ。

 

 うんこ関係の仕事が多いのが気になるが、早速受けてしまおう。

 壁にかかった木札を2枚手に取ると、我は仕事受領のためにカウンターに向かった。


--


 結果、仕事は無事に済ませた。

 まずこなしたのがうんこ拾い。支給された大きなかごがいっぱいになるまで、うんこを集めるというものだった。

 これは一日中街を駆け回ることによって、ポルーナの街の構造を知ることもできたので一石二鳥だった。

 

 なるほど、時々街には馬車が落とした馬糞があったり、片付けられなかった汚物があったりして、

 それが街を不衛生にしているのだ。これはたしかに仕事として必要なことだろう。


 先ほどパンをたくさん食べたばかり。我は驚くべき速さで仕事をこなした。

 人間の体力で行う仕事など比べてはならない。街中を常に走りつづけ回収し続けた。


 2番目の仕事は下水掃除。


 指定された町外れの水路の出口から入り、水の流れを詰まらせている、

 余計なゴミやネズミの死骸などを取り除く仕事だった。


 流石に直接触りたくなかったので、見つけた箇所は、ごくごく微弱のブレスを吹きかけて

 消滅させたり、崩してやった。


 うんこ拾いと連続してやったので、途中で日が暮れたので、初日は下水の中で一晩明かした。

 誰の目にもつかなかったので、宿代が浮いてありがたい。これからも、毎晩下水で寝ようか?


 流れの勢いが格段に良くなった下水の出口を依頼主に見せることで、仕事は完了となった。

 

 最初に登録して2日後、冒険者ギルドに向かい報告すると、報酬は銀貨10枚となった。

割合としてはうんこ拾いはさすがにささやかな報酬だった。ほぼほぼ下水掃除の報酬である。


「普通、どちらも何日かかかる仕事なんだが、まさかこんなに早くこなしてくるとはな。

 しかし、なかなか人が嫌がる仕事だ。よくやったな」

 とはカウンターの男も言ってたが、なぜか顔をしかめているように見えた。

 

 さて、この金を何に使うかと思い、ギルドを出た途端。3人の冒険者に囲まれてしまった。

 3人共、なんとも人相が悪い。

 一瞬、ゴブリンかなにかが化けたのかと思ったぐらいだ。


「おお、臭えくせえ。まったく、うんこのお仕事ごくろうなことだぜ」


「今まで何して生きてたんだ?その歳でうんこ拾いやるようじゃ、何も身につかなかったんだな」


 ん、そうか。忘れていたが、こいつら我がFランク登録した際に声をかけてきた奴らだ。

 

 しかし、いままで何して生きてきたかと聞かれると困るものだ。

 まさか、我の正体がドラゴンであると疑っている?

 はて、今の我がなにか古代竜だと疑われるような動きでもしたというのだろうか。


 こいつら、見た目によらず鋭敏な感覚の持ち主だとか?それとも、見た目通り魔族の類か。


「Fランクの新人はよお、最初に稼いだ金は俺達に上納するって決まってるんだ。知らなかったか?」


「さっき銀貨10枚稼いだだろう?俺達に半分の5枚は収めなくちゃいけねえぜ。」


 なんということだ。


 この街に入るときでも金を持っていかれたのに、働いた金も税金として持っていかれるとは。

 まったく人間の世の中もたいへんなものだ。


「やれやれ、税金とはやっかいだな。稼いだ金の半分を持っていかれるとは。」


 我は手のひらに銀貨を5枚乗せると男に差し出した。


「おお、いい心がけじゃねえかおっさん。そうそう、人間、素直でいるのが一番だってことよ。」


 人間で居たいならば素直でいろだと?

 やはり、この男、我の正体を知ってていっている?一体、どこまで……。


「ちょっと待った。」


 今男に銀貨を渡そうとしたところに割って入ったのは、


 磨かれた鉄鎧とマント、長剣を装備した戦士風の男だった。 

 まだ若いが、ヒゲも剃られ、茶色がかった黒髪も単発に整えられ、きれいな身なりをしている。


「そのお金はその人が立派に仕事をして稼いで受け取ったお金だ。横からかすめ取ろうなんて、恥ずかしいと思わないのか。」


「なんだおめえは」


「冒険者の端くれだよ。あんたたちのような奴らがいるから、滞る仕事があるんだろう。」


「ええ?、つまり、税金だというのはこいつらの言った嘘だっていうのか?」


 そう割り入った男に聞いてみると、男は驚いたような目でこちらを見つめてきた。


「は……?じゃあ、あんたはこいつらの言ってること真に受けて金を収めようとしてたのかい?

 脅されて怯えて、仕方がなくとかでなくて?」 


「街の入口の兵士とこいつらになんの違いがあるのかわからん。」


「あなたは、ヤクザと国家権力の区別もつかないのかよ。」


 少し考えてみたが、本当にわからなかった。 


「うるせえなあ。そこのおっさんがいいって言ってるんだろう。とっとと金をよこせばいいんだよ。」


 金というものへの人間の執着はあまり良くわからないが、

 せっかく貴重な時間をかけて稼いだ金を、人を騙してかすめ取ろうとしてきたことには

 正直、今更ながら腹が立ってきた。


「さあ、おとなしく……。あがっ!!」


 いらっとして、最初に話しかけてきた一番大柄な男の胸を手のひらで小突く。

 男は弾かれた石ころのようにふっとぶと、バァンと大きな音を立て、壁に積まれていたごみの山に背中からつっこんだのだ。


 金属の胸当てが凹んで、我の手形がきれいに残っていた。まったく柔らかいものだ。

 白目を剥いて、意識を失ったようだが、いくらなんでもこの程度で死ぬことはないだろう。

 

「ええ……?!」


 周りの二人も驚愕したように男と我を見比べると、そそくさと気を失った男を抱え視界から消えていった。

 うむ、力の差をいまのでよく理解したようだな。

 もしくは、反撃されるとは思っていなかったのか。 


「へえ、あんた。気が弱い人なのかと思ったら、見た目より大分強いんじゃないか。」


 感心したように、助け舟をだしてくれた男が言う。こいつ、よく見たらなかなかの美男ではないか。

 それにお陰で稼いだ銀貨を失わずにすんだ。こいつはいいやつかもしれん。


「僕の名はロイン。あなたは?」 


「ノジー・アイクだ。」


 こういうときは手を差し出すものだと思って手のひらを向けると、ロインはちょっとだけ困った顔をした。


「ちょっと、あなた。汚いのよ。ロインが困ってるじゃない!」


 そう言われた方を振り向くと、小柄な娘が歩み寄ってきていた。


 ベルトを巻いた大きな黒い帽子、黒いケープの下にプリーツの入ったチュニック、老木の杖。

 やや伝統的すぎるほどの魔道士の衣装だ。

 

 大きなつばから覗く顔は、やや生意気そうなツリ目だがまつげが長い。

 撥ね癖のあるオレンジベージュ色の髪は、肩より下程度の長さで、ほんのり編み込みがしてある。

 美人というより可愛らしいを覚える印象の娘だった。リリィと同じぐらいか、ちょっと年下か。


「フラヴィ、もうちょっとオブラートに包もう?」


 黒ロリ魔道士の名前はフラヴィというらしい。

 そしてその後ろから声をかけたのは、フラヴィよりかもう少し年上そうな女性だった。


 艶のある、栗色のストレートヘアが印象的で、こちらもジャンパースカートに、

 魔法使い然としたケープを着ている。ただこちらは、青を基調とした薄い色をしているからか、

 先程の魔導然としたものではなく、聖職者といった印象を与える。


 こちらは、あと数年もすればより落ち着いた美人になることだろう。


「シェリー、この人に洗浄魔法をかけてあげてくれないか。」


 なるほど、こちらはシェリーというのか。


「もちろんですよ。………えい。」


 シェリーが短く詠唱すると、ささやかな魔力が我の身体を包んだ。

 一瞬の後、我らの身体から、下水等で染み付いた匂いや汚れが取れていくのがわかった。


「あ、理解った。我、下水とうんこ拾いで汚れて臭かったのか。」


「そりゃあもう、かなり。」


 フラヴィが手を降りながら迷惑そうに言う。

 なるほど、臭いで目立つとは盲点だった。


「まあフラヴィ。汚れたってことは、この人はそれだけ、頑張ったってことだ。

 貢献してきたってことなんだ。」 


 我としてはただ眼の前の簡単そうで稼ぎの良さそうな仕事に飛びついただけなのだが、

 それで周りの印象がよくなっていたらしい。不思議なものだな。


 ところで、今の洗浄魔法?とやら便利だなあ。どおりで、人間は匂いが薄いわけだ。

 なんとなくイメージは掴めた。魔力を身体に薄くまとわせるように……やってみるか。


 我が今かけてもらった魔法をイメージしながらふいと指を振ると、

 もう一度洗浄魔法が発動し、我の身体を包みこんだ。


「何、あんた。自分で使えるんじゃない。」


「いや、今初めて使った。」


 言うとフラヴィがはぁ?信じられないという表情を露骨に浮かべる。


「詠唱不要なぐらい使い慣れてるくせによく言うわ。なに、不潔な性分なの?」


「まあまあフラヴィ、魔法も使えるなんてすごいじゃないか。

 腕っぷしもあるみたいだし、ノジー、ぜひとも、俺達とパーティを組んでくれないか?」


 む?パーティとは、えーと。群れ、チームのことか。


「ロイン、突然そんな事を言ったら、ノジーさんが困っちゃうんじゃないのかしら。」


「まあ無理強いはしないさ。内容はこの街の近くのダンジョンの調査、そして発生したゴブリン等魔物の討伐。

 ランクはB、報酬は金貨16枚。それを4人で山分けして一人4枚だな。」

 

金貨1枚は銀貨10枚の価値らしい。


「Bランクの仕事か。つまりロインたちは……。」


「俺がCランク。フラヴィとシェリーがDだな」


3人ともかなり我の身体より年若く見えるが、何ランクも上なのか。


「なんで我なんかを誘う?そんなの、取り分が減るだけだろう」


「正直3人だときついと思ってたんだよね。特に今回は探索だ。

 仲間に加えるなら、なるべく人柄に信頼ができて、輪を乱さなくて、

 そこそこの腕っぷしがあるといい。」


「確かにノジーさんなら悪い人じゃなさそうですね。」

「正気なの?こんな世間知らずを加えるなんて。」


「ああ、最初にギルドに登録していたときから見ていたんだ。

 人に煽られようと受け流す大人の態度。

 なにより、Fランクの、誰も受けなかったような人の嫌がる仕事を2件、

 進んでこなしたような人だ。仕事なら他にも楽そうなものがあるのにな。

 見上げた人じゃないか。」


 正直それは、ただ単に我に確実にできそうな仕事がそれしかなかっただけなのだが。 


「そして、それをあっという間に片付けてしまうスピードと体力。

昨日街をものすごい勢いで走り回ってうんこを片付けているのを見ていたよ。

ただごとではないと思ったね。」


「まあ、確かに2日で一人で終わらせるなんてたいしたものですよね」


 正直、先程の奴らのように小奴らが我を騙そうとしている可能性は0ではない。

 だが、違うと我のカンはいうのだ。


 それに、もとに戻るための情報を集めるためにも、冒険者に知り合いは欲しいと思っていた。

 

「わかった。ぜひともよろしく頼もう。ロイン、フラヴィ、シェリー、よろしく頼む。」


「よろしく。頼りにしているよノジー。」


 手を出すと、ロインは今度こそ握手をしてくれた。

うんこがきっかけでパーティが組めるとは、人間やると何が起こるかわからないものだ。

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