69 空気をぶった斬る。
エスポストア様達が助けられた事により魔法陣の光が弱まる。
チッ。と舌打ちをした女は(もはや女かどうかも怪しい姿だが‥)辺りをゆっくり見たかと思うと、次の瞬間には移動しており、予備動作なく王太子を掴み放り投げた。
王太子は魔法陣に吸い込まれる様に飛んで行き、魔法陣の上で浮いている。魔法陣は光を取り戻しピカピカと光が巡る。
一連の女の動きを目で追うことしか出来なかったリズは、光の動きに釘付けになる。
魔法陣の中の光は五芒星を描いていた。先程迄は、エスポストア様が大き過ぎて隠れていたが今は王太子1人が浮いている為よく見える。
ひゅっと息を呑むリズ。
目は魔法陣の光、五芒星を逆さになぞり進む光に釘付けだ。
「光を目で追ってはならぬ。」
嗄れた声が聞こえる。
「エスポストア様!」
フランが叫んでエスポストアに駆け寄り起こす。
「光を目で追ってはならぬ。
五芒星を逆さになぞってはならぬ。気を付けよ。
儂では持ち堪えられなんだ。
すまぬ。」
「祖父が廃止した祭祀の重要性を理解し私が復活させておれば‥。」
「私が我が子をきちんと育てられなかったばかりに‥。」
エスポストアを皮切りに、先程まで気を失っていた者が次々に呟きだす。
話が分からず混乱する。
女はそれを見て嬉しそうにニヤニヤとする。
「は〜人間の嫉妬、憎悪、混乱、絶望、美味じゃなぁ〜。」
にぃーと笑った口には牙が見え、ズブズブと頭には角が生える。
皆の恐怖に歓喜する。
何だか分からないまま、そんな女の空気に飲まれ絶望的な空気の中。
リズは。
「ねぇちょっと、これ、なに??」
空気をぶった斬って女に質問する。
おやっと言う顔をしながら、女。
「これに呑まれて皆、我の糧となるのだ。」
「それはさっきも、きいた。
そうじゃなくて、これはなに?
なんでここにあるの?」
「これは元からここにあるぞ。
昔の王家は毎日ここで、国と民の平和と安寧を祈っておったのに、其奴の2代前の王は祈るのを辞めてしもうた。
神より自分の方が偉いと言うてなぁー。
はははははっ。愚かな者よ。」
「いのりを、やめると、どうなるの?」
「守られなくなるじゃろ。
国も民も傲慢になって行くじゃろ。」
「あなたはなにもの?」
「我か!?我は王家の慢心が生み出した者。」
真っ赤な唇を歪に引き上げてにいっと笑う。
「王家に限らず人はすぐ傲慢になり感謝を忘れる。
なれば、我の種はそこ此処にあるぞ。
小さな種を大きくするには時間がかかる。
なれば百年ほどかけて王家の者に不和を囁き続けたまで。
これだけの者の上に立つのだから1番偉いのはそなただと囁いてやれば人はすぐに道を見誤る。
神を崇める事を止め、民に傅かれいい気になる。
互いを蹴落とし争わせ、憎しみを少〜し増長させる様に囁やけばコロッと惑わされる。
愚かにも同じ過ちを何度も繰り返す。
我にはそれが美味じゃ。
すぐに食べてはつまらんから、しっかり熟成させねばなぁ〜。
そろそろ頃合いじゃ、皆、我の糧となれ。」
そう言って、エスポストア様や王に王妃などに近付いてゆく。
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