65 駄目だった。
リズは考える。
目の前の女の事を。
何故この女はリリアンヌの姿をしているのか。
そして、何故この女をうっとりと見上げてアホ王太子は頬ずりしているのか。
突っ込む気にもならず、無性に腹が立つ。
こいつらは何処までリリアンヌちゃんを愚弄すれば気が済むのか。
腹が立って、腹が立って。
ムカムカムカムカ。
イライライライライライラ。
数周回って逆に冷静になったリズは考える。
フラン君がエスポストア様と呼んだ巨木は、リリアンヌちゃんがポストア様と親しげに呼んだ老人の姿に確かに見える。
そして、巨木を更によく見ると腕に何かを抱えるように、ウネウネの枝と幹が動いている。
女が立ち上がり、目は全く笑っていないのに、口の端を歪に引き上げた表情でフランに近づいてくる。
巨木から声がする。
「逃げろ。逃げてくれ。」
悲痛な消え入りそうな声。
フランはその声に無性に懐かしさを覚える。
「皆すまぬ。すまぬ。すまぬ。」
また、声がする。
その声にカイルとオリヴィアが反応した。
「「へっ、陛下っ。」」
「無駄な抵抗を。どうせ飲まれて我の糧となるのだから、早うに諦めて楽になれば良いものを。」
くっくっくっくっ。
リズは考える。
この状況を説明出来る者は誰なのか。
リズは考える。
手っ取り早い方法はどれか。
リズは防御壁をハンマー型に作り、思いっきり振り下ろした。
誰にって??
誰だと思います???
「ダメダメおうたし〜〜〜〜!!!
めぇ、さませ〜〜〜〜。」
ずっドーン!!!!
少しは正気に戻るかと期待したが、
突然わめき出す王太子。
「うるさい。うるさい。うるさい。私の邪魔をするな。」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
駄目だった。
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