64 本能が理解する敵
光によって照らし出された光景にひゅっと息を呑む。
玉座には黒髪の女。
そして、その女の元に跪き頬ずりする王太子。
玉座の後ろには光る魔法陣の上に巨木が生えている。
「何がどうなって‥‥‥。
ここは本当に王の間か‥‥‥。」
カイルが戸惑うのは無理もない。
カイルの知る王の間とは、かけ離れ過ぎている。
玉座の後ろにこんな空間はなかったし、城の中に巨木が生えているなど、聞いたこともない。
そして、禍々しい気を放つあの女は誰だ。
王は何処へ行ったのか。
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その女を見た瞬間、リズは即座に自分達の周りに防御壁を展開した。
何故と聞かれても分からない。
強いて言うならリズの感である。
展開した瞬間、女の禍々しい気によって防御壁がギシギシと悲鳴を上げる。
一呼吸遅れていたなら、公爵家の面々と言えども意識を持って行かれていただろう。
リズの防御壁に気づいたオリヴィアが更に上から強化してくれる。
皆無意識に呼吸を止め、丹田に力を貯めていたようだ。
そっと息を吐き、少し力を抜く。
先ずは状況を把握しなければ。
女はまだ玉座に座っている。
周りに人はおらず。(王太子は者の数に入れず。)
巨木に葉は無く、一部の枝や幹がウネウネと絡まっている。
ウネウネをよく見ると、絡まった中に何かが見える。
突然フランが
「エスポストア様!!!」
と叫んだ。
幹の中央に薄っすらと顔が浮かび目が開く。
その顔はアラン邸に突然現れたお客様のエスポストアに良く似ていた。
その時、女がフランを見た。
見られたと言うだけで全身が粟立つ。
防御壁があってこれだ。
「み〜つけたっ!」
女が囁き、にいっと口の端を歪に引き上げる。
即座にリズはフランの前に立つ。
身長的には全く役にたって居ないが、それだけで不思議とフランは落ち着きを取り戻した。
あの女が敵であることは、皆が本能的に理解した。
あの女は強い。
リズは考える。
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