⑥桜様、自己紹介をする。
桜は自己紹介をする事にした。
「私は、山本桜といいます。
こことは別の世界で生き結婚し、子供を2人育て上げました。
今では子供達も親となり、私はおばあちゃんです。
そんな私がふと気が付くとリリアンヌになっていました。
えぇ、それはもう困惑しましたよ。
知らない世界で知らない人間になっていて、しかも1歩外に出れば苛められる日々。
家に帰っても家族とは最低限の会話があるだけ。
誰からも愛されず、気にもかけて貰えないなんて何て不憫な子なんだろうと思いましたよ。
この子は優し過ぎるんです。
自分さえ我慢すれば全てが丸く収まると、10年もの間、誰にも相談出来ずにいた様です。
でも、自分の心すら守る術もない子供が耐え続けられる訳がありません。
むしろ10年も耐えたなんて何て強い子なんでしょう。
この子は先日とうとう、耐えきれなくなって自分が自分で在ることリリアンヌとして生きて行くことを止めてしまった様です。
そして何故か私が彼女の身体に入り今は代わりにリリアンヌとしての日々を過ごしています。
正直に申し上げれば、自分の思う様に好きに起こる出来事に対処する事は可能です。
ですが、それによって起こる周りへの影響までは、私はこの世界の人間ではありませんので分からないのです。
ですから、リリアンヌの家族である皆さんにはきちんと状況を理解して頂き手助けして頂ければと思います。そして何より心を閉ざしてしまったこの子の信頼をとりもどす努力をして欲しいと思います。」
私が一気に話し終わると、リリアンヌの家族はボーゼンと固まってしまった。
しかしそこはやはり公爵様一番に我に返り、ふざけるなと怒り出してもおかしくない様な話でも受け入れ、話し合いを続けていく。
(私も娘が急にこんな事言い出したら、どうした?どうした?ってなると思う。
それを一旦飲み込んで話を進めてくれた公爵様、凄いなぁと思う。桜。)
ここ数日のリリアンヌの変わりように色々思う事もあったのだろう。
話し合いは夜遅くまで続き、私はまずリリアンヌに日々ふりかかる火の粉をしっかり払う事に専念。
それ以外の問題は公爵であるリリアンヌの父と次期公爵である兄が動いてくれるそうだ。
桜様の長い自己紹介でした。。。
今日もお読み下さりありがとうございます。