55 王都の異変
始めは取るに足らない変化だった。
少し町中での喧嘩が増え、町の警ら隊の仕事が増えた。
疲れやすい。体調を崩しやすい。そんな人が少し増えた。
そんな程度だった。
それがあっと言う間に悪化し、昼も夜も至る所で喧嘩が起こり。
怪我人や逮捕者が出る。
体調不良がいよいよ悪化し病人が増え、仕事に出られず仕事が出来なければ民衆はあっと言う間に食べて行けなくなる。
治安は悪化し、民衆の不満は王家と貴族達へと向けられる。
聡い者は親類縁者を頼って王都から立ち去り、当ての無い者は途方に暮れる。
カイルとレオンは次々と入る情報を整理する。
王城の中の情報はいまだ入ってっこない。
錯乱し我を忘れた民衆が城へと詰めかけている様だが、城は門を閉ざし兵士達によって守られている。
城からの招集も無ければ、城に差し向けた部下達は一人も帰ってこない。
三人目で城を探る事は諦めた。これ以上優秀な人員を失う訳にはいかない。
町に放っていた部下達から報告が入り始める。
「初めは視界が少し悪い程度だったのですが、日に日に濃くなり今では黒い霧が町中を覆っています。霧が濃くなるごとに錯乱し王城へと怒りをぶつける者が増え続けています。
門前で叫んだり暴れたりしている者を、初めは門番が追い払っていたのですが今は門番もおらず場内に人の気配は有りません。
不思議と人衆が門を破って場内に入る事はなく。
場内を探りに行った仲間も戻りません。
そして今では、はっきりと城内から黒い霧が流れ出てくるのがわかります。」
次の部下からは。
「王都内の水が黒く濁り飲めなくなっています。
調べた限りでは、王都内の全ての井戸は濁ってしまい今や飲める水が無い状態です。公爵邸の井戸以外は。」
公爵家の当主としてレオンが決断する。
「一先ず我が屋敷の井戸は使えると言うなら、水を汲んで分けるとしよう。
危険は重々承知の上だが、皆で手分けして触れ回ってくれ。」
民衆には正面の門前で、水を配り。
貴族達は裏門に馬車を付け水を持ち帰る。貴族達を裏門としたのは、馬車で大量に水を持ち帰る様子を見た民衆の怒りを買わない為。
その中にひっそり紛れて高位貴族の党首に集まって貰い話合う。
だが、王城内の様子を知るものは誰もいなかった。
一先ず持てる備蓄食料を民衆の為に放出し、動ける者を引き連れて各々領地に移動して再度情報収集。連絡を取り合って対策を立てることとする。
水を貰いに来る者達に公爵領に一緒に移動するよう促してみても、皆家族が病気で臥せっており置いていけないと言う。
一先ず、二日後の早朝出発するので移動したい者は集まる様に伝える。
二日後の早朝。
公爵邸の前には驚く程沢山の民衆が集まっていた。
なんと、公爵邸から分けて貰った水を家族で飲むとみるみる臥せっていた家族が元気に動ける様になったと言う。
驚き喜んで、これなら移動できると。
折角ならベルナール公爵様に付いて行こうと集まった訳である。
公爵家のカイルとレオン。
公爵家に仕える面々。
公爵領に移動したい民衆の面々。
カイルやレオン、騎士達は馬で。
なるべく子供や老人を馬車に乗せ、健勝な者は歩く。
大所帯である。
歩き慣れていない者も多い中で、励まし助け合いなるべく急いで移動する。
謎の混乱状態の王都から離れる為。
先に公爵領に向かったはずの家族と、一切の連絡が途絶えているため気が焦る。
放出した為残り少ない食料を皆で分け合い、黙々と進み。
やっと公爵領の入り口に辿り着き、皆がホッと息をついたその時。
どんっっっと言う大きな音と共に下から突き上げる様な衝撃を感じた。
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