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【完結】太陽の拳  作者: 月待 紫雲
エピソード11
82/93

対マーフィー・シスル

 二度目の入場を済ませ、ローレルはシスルと対峙する。

 ブレイドを倒した、とはいえ実力はブレイドのほうが上だった。彼には何かしら事情があったのだろう。


 リングの中で拳を構える。

 シスルは程よく脱力し、グリーンウェイブを発した。

 ローレルも対抗するようにウェイブを出す。


「あなたのウェイブ、不思議な色よね」


 頷くだけで会話はしなかった。ローレル自身説明を受けていない色のウェイブになった理由がわからないし、色はなんだっていいからだ。

 ローレルにとって重要なのは拳だ。


『ファイト!』


 開始の合図と共にシスルが駆けだす。拳を構え、そして視界からいなくなった。

 ローレルは視線を落とし、スライディングして足払いをしにくるシスルを捉える。冷静に避けた。

 跳び上がるように体を回しながら蹴り上げてくる。ローレルは上体をそらしことでこれもかわす。


 顔面へ迫る右拳を首をそらして避け、己の拳で動きをけん制する。


 ジャブを連射する。


 激しい拳の連続に、シスルは後退しながら手刀でさばく。

 そこへ踏み込み、肩を伸ばし、ジャブの打ち方を変える。


 急に伸びた拳に驚いたのか、シスルの目が見開かれ、その額に拳が叩き込まれた。よろめきながらこちらを睨む。


「シュッ」


 ローレルは拳を内側に回転させながら撃ち出した。

 コークスクリューブローだ。

 シスルは慌てて両手を交差させてコークスクリューブローを受ける。

 だが。


「ちぃっ」


 ガードの上からぶち抜いた。拳を押し込んで、衝撃をガード上から叩きつける。シスルは壁を背にし、胸を抑えた。


 ――いける。


 マスターよりも強いが、乗り越えたローレルにはどうってことはない。脚は常に警戒できてるし、蹴りを出せない瞬間に拳を連打すればいい。


「何してる! おい、ちゃんと教育したんだろうな」


 外から何やらうるさい声が聞こえた。

 ブレイドの近くに富豪が座っている。確か、目の前のシスルを買っている者だと聞いた。


「貴様! 負けたらわかってるだろうな!」


 怒号が響く。

 それを聞いて、シスルは鷹のような鋭い目に切り替わると前蹴りを放ってきた。

 半身になり、これをかわす。

 前蹴りから、膝を曲げて蹴りを出してきた。腕を立ててブロックする。


 そこからブロックしている腕を執拗に狙った、左蹴りが何度も放たれた。上から横から、下から、と縦横無尽に襲い掛かる。

 ローレルは完全にブロックしながらも上体をそらし、衝撃を受け流す。


「そこッ」


 そしてわずかに遅くなった蹴りを、頭を下げて右へ踏み込みながら避ける。急に空振りになった蹴り。その勢いでシスルはわずかに怯む。

 脇腹にブローを突き刺す。


「……がはっ」


 怯むシスル。

 ローレルはフックでこめかみを叩き、ストレートで殴り飛ばした。

 床を転がり、シスルが倒れる。

 ローレルは追撃せず、立ち上がるのを待った。


「家族がどうなってもいいのかァ!」


 その汚い声を聞いて、ローレルは闘いから思考を離れさせた。

 家族?

 シスルの家族が、あの男の手中にあるのか。


 蹴りが飛んでくる。

 ローレルはステップを踏んで避ける。


「マーフィー・シスル、お前の家族は」

「わたしが負けたら殺されるわ」


 怒りの篭った言葉がローレルに突き刺さった。




  △▼




 富豪の叫びを聞きながら、ブレイドは苛立ちを覚えた。

 その場の誰もが、ローレルという人間の人柄を知っていた。


 人が死ぬなら、拳は出せないだろう。


 拳を握りしめる。


 ブレイドがシスルに関わっていることを事前に伝えておけば、事情を話しておけば、ある程度心の準備はできたのかもしれない。


 だが、それはもしもの話だ。


 ローレルは完全に面食らってしまっている。あれは、闘いに響く。

 ブレイドはあえて押し黙った。実力で言えばローレルが完全に上である。だが、外部情報を加味すれば、ローレルは勝てない。

 しかし、こんな闘いはこの先いくらでもある。

 

 知っておかなければならない。そして乗り越えなければならない。

 でなければここで生きていけないのだから。


 従って、誰も富豪を責めるものはいない。拳を震わせて握りしめるハーメルンの姿はあれど口には出さない。

 誰もがわかっているからだ。

 そんなもの、言い訳にすらならないことを。


 ただ、この興ざめするような状況の片棒をブレイドが担いでいる。その事実が、己を苛立たせた。


 勝ったら、謝ってやる。

 だから勝て。


 ブレイドはそう思って、闘いの続きを見た。

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