300回は心の中で「ばーか。」って毒吐いたし、後から絶対ネタにされるって、数万回は後悔したけども。それでも。
「大好きです……っ。」
好きなんだから仕方ない!
言ってやったぞ唐変木。アンタにもわかりやすく校舎裏に呼び出して、これでもかってくらいいっぱい色んなことを思い出して恥ずかしくって顔真っ赤でしょ。わかりやすいでしょ!
ばーか。ばーか。ばーか。ばーか!
好き!!
――なのに!
「やり直し!」
はあ!? ってなるじゃん!
どういうこと!?
*** ***
幼馴染み。
お早うからバイバイまで、最古の記憶からずっっっっっっと今の今まで俺の脳細胞の記憶領域を圧迫しつづけてるアイツ。
小学校、中学校、高校と、ふるいにかけたように少なくなっていく古なじみの顔。その後の大学は? 誰かひとりでも残るのか??
青い空。寝ころんだ屋上で、空に伸ばした手じゃ何も掴めないと握って開いて確かめていたとき、ふと思った。
いや、最初に思った。
アイツとこれから、どうなるんだろう。
今までの狭い世界は、もう少しで終わりを告げるらしい。よくわからないけど、あと1年もないそうだ。
高校まではある程度、選択肢が絞られていたから、考えなくても収まるようになっていた。
『……来年は、アンタと来てないかもね。』
なんて、七夕の祭りでアイツが呟いた言葉が耳に残った。
『かもなあ。』
だなんて、気の抜けた言葉が口から零れた。
何か、しなくちゃいけない気がして考えた。
考えていた矢先に、これだよ。
「大好きです……っ。」
ああもう。
「やり直し! ……あ、いや、や、やり直させろ!? ……明後日、俺から告白するつもり……だったんだよ。」
明後日、ちょうど買い物に付き合う予定があっただろ? そこに少し雰囲気の良いスポットがあって、いつもは何となく避けて通ってたけど、明後日は、行こうかなって。
「いやなにそれ、今でいいじゃん。私から告白して付き合って、るんるんでデートじゃダメなの?」
「ダメじゃないかもしれない、んだけど……いや、ゴメン。ちょっと考えてたアレなヤツとか、」
「それはそれでやって? ちょっと体験してみたい。」
「すげぇ恥ずいじゃん??」
「うん。……やって?」
いやもう、可愛いかよ。
「わかった。明後日やることの予行練習をこれからします。」
「え?」
「ほら、遊歩道から駅近のデパートに繋がるところって、さらに階段上がったところに張り出したテラスがあって、見晴らしが良かったろ? そこに連れて行って、こう、告白の言葉とか考えていたワケです。」
「はい。」
「えっと、努力家で、負けず嫌いなところがあって、俺に――、」
やけくそだよ。
俺をずっっっと小馬鹿にしてきて、ちょっかいを掛け合って漫才みたいなことをして、テストの点数を競ったり、花火とか見に行ったし、遊園地にも行ったっけ。あと、みんなで山に行って川に入ったら転んでブラ透けしてたのは、俺の方が慌てたな。
町内会の集まりに毎回駆り出されて田舎の下っ端を二人で呪ったりして、にーちゃん連中が奢ってくれたアイスを河原で食べて囃されて、そのあと俺ひとりだけエロいことを吹き込まれたりしたっけか。
俺なんて眼中にないって、ずっと思ってた。
家族みたいなものだったから。
バカやるのも、道連れで怒られるのも、冷やかされるのも、宿題するのも一緒だった。お互いのことで知らないことを作られるとモヤモヤしたし、家族旅行に行けば、会えなかった間を埋めるように話しつづけた。
わかるだろ? 可愛いとかそういう、肩書きを好きになったワケじゃない。
いつから好きだったのかも覚えていない。
だから告白して、まずは意識してもらうところから始めるかとか、思っていたんだ。
「……ちょ、ちょっと待って!?」
「なんで?」
「え、いや、私……そんな愛されてたとか、知らなくて。」
「俺も、こんなに好きだって思ってなかった。」
「うん。そうなんだ。」
「ああ。」
「あ、明後日も、こんなふうに言ってくれる……の?」
「? ああ。」
「そっか。……そっか。えへ。」
練習だなんだって言って、かなりやってしまった感があるワケだけど、妙にすっきりとして気分が良い。
好きだって伝えるだけで、こんなに気分が良いものか。
「そういえば、まだ続きが、」
「もう十分かな!? うん、私がドキドキして倒れちゃいそう。」
「そうか。俺は、まだ言い足りないとも思って、」
「強引にでも口を塞がないといけなくなるじゃない!」
俺も、わりと負けず嫌いだから。
「手で口を塞ごうとも、捕まえて引っ張って、目の前でもっと言ってやるからな?」
力は男の方が強いんだ。残念だったな。
「じゃあ唇で塞いでやるわよ!?」
「言ったな?」
「言った!」
「わかった。明後日はキスされるまで告白し続けるからな? それと手で口を塞がれないように、掴んで離さないからな!」
「望むところよ!」
「じゃあまた明後日な!」
「そうねバイバイ!」
俺、顔真っ赤だろ。
「……何でついてくるんだよ。」
「帰り道が一緒だから。」
そうだった。
「ね、今日も、自転車の後ろ、乗せて帰って??」
……くっそ、可愛いかよ。
~fin~
結末は、あらすじに。