第六話
貴族の部も、順調に儀式が進んでいく。
さすがに、上級職となったのはマリアただ一人だけであった。けれど、中級職に就く者がポンポンと現れる。
類を見ないレベルの、とんでもない豊作の年である。
そうして誰もが期待を高める中。いよいよ、儀式は最後を迎えようとしていた。
「レイヴンアロー公爵令嬢! アーデルハイトっ!」
「はいですわ」
余裕たっぷりの様子で立ち上がる。みんなの期待を一身に背負って。それでもまるで気負う様子のないアーデルハイト。
十歳にして、なかなかの胆力。さすがはレイヴンアロー。なんて、貴族たちが噂しはじめる。
そんな声も気にならないといった様子で。アーデルハイトは祭壇に立つ。
いよいよ、職業選択の時。
「それでは――」
神官様が、祝福の言葉を寿ごうとしたその時。
アーデルハイトが祈りを捧げたと同時に。
まだ儀式を始めてもいないのに――アーデルハイトはまばゆく輝き始める。
その光は、マリアの発した白い光よりもずっと強く。
七色の煌めきを放つ、美しい光であった。
そんな光の中で――アーデルハイトは職業選択を始めた。
瞑った瞼の裏側。景色など見えないはずの向こう側に、光と文字が見えた。
色んな色の、色んな文字が。輝きながら、瞼の裏の世界を泳ぐ。
それらは『光のなんちゃら』とか、『闇のなんちゃら』とか書いていて。
けれどアーデルハイトの望む職業ではないから。近寄ってくるそれらの文字を、追い払ってしまう。
ちなみに。この職業達は、ゲームのアーデルハイトが本来就くはずだった上級職である。本来なら、マリアのライバルとなるはずのアーデルハイト。その職業は、マリアに合わせて相応しい上級職になるはずだった。
けれどアーデルハイトには、憧れがある。
だから光の、文字の海をかき分けて。望みの文字を探してまわる。
やがて光と文字の海の隅っこに。アーデルハイトの望む職業が、小さく縮こまっているのを見つける。
――おいでなさいな。そんなに怯える必要など、ありませんわよ。
アーデルハイトは心で呼びかける。
強すぎるアーデルハイトの素質に尻込みして。他の職業の圧力に負けて。片隅に追いやられていたその子を。職業を。
まるですくい上げるように、アーデルハイトは選び取る。
小さな光は、おそるおそるアーデルハイトに近寄って。
ゆっくりと周囲を回って。意を決したように、胸へと目掛けて飛び込んだ。
光は、アーデルハイトと一つになった。
すると――アーデルハイトの発していた光は急激に収まった。
淡い金色の光が、アーデルハイトの身体を包む。
まるで、さっきまでの虹色の輝きが嘘のような光景だった。
「……あ、アーデルハイト嬢。職業は?」
光の強さに、呆気にとられていた神官様が訪ねる。
瞼を開いて。自信満々に答えるアーデルハイト。
「わたくしが選んだ職業は――『盾持ち』ですわっ!!」
――こうして。最下級職『盾持ち』を選んだ世にも珍しい公爵令嬢が誕生したのであった。