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盾持ち令嬢の英雄譚  作者: 雨降波近
第一章 わたくし、また何かやっちゃいました?
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第五話




 そんなこんながあって、二年後。アーデルハイト、十歳の時。

 いよいよ、職業選択の儀が迫っていた。


 この国では、十歳になる年に教会で一斉に職業選択をする。

 中でも、高位貴族は血統に優れていて。下級職や中級職に最初から就く場合が多い。


 だから――アーデルハイトのような高位貴族の子供は。その年の職業選択の儀の目玉として、注目の的となるのだ。


「いよいよ、ですわね。楽しみですわ」


 庭でいつもどおり。おもちゃの盾でシールドバッシュの練習を終えた後。アーデルハイトはお茶を嗜みながら、明日のことを思って呟いた。


「お嬢様も、とうとう職業選択をなさるのですね」


 傍らで言葉を返すのは、ずいぶん立派な侍女となったクララ。仕事をしっかり覚え、専属侍女としてしっかり仕事をこなしている。


 けれど。そんなクララにも、アーデルハイトは秘密にしていることがある。


「それで。お嬢様は、どんな職業になりたいのですか?」

「うふふ。秘密ですわよ」


 そう。何の職業を選ぶか。それはアーデルハイトの心の中だけに仕舞われている。

 クララでさえ聞かされていない。


 だから、レイヴンアロー家ではその話題で持ち切りだ。

 マックスハイムなどに至っては。本当に聞いていないのか? と、クララに今日だけで三回も問い詰めて来たぐらいだ。


 それぐらい、職業選択というのは。この世界では、とっても大事な儀式なのだ。




 ――で、翌日。

 クララを連れて、教会へ向かうアーデルハイト。


 到着すると、教会のえらい人らしき大人に連れられ、貴賓席へと案内される。

 今日の目玉。高位貴族の子どもたちが何人も座っている。けれど、中でもアーデルハイトは一番身分が高い。だから一番奥に。一番最後に儀式を受ける位置に座る。


 そうして職業選択の儀が始まった。

 まずは平民の部。例年どおりなら、平民はほぼ最下級職。たまに下級職がいれば良い方だ。


 けれど今年は豊作だった。下級職になる子が多く、中には中級職に選ばれる者もいた。

 これには、人々の期待も高まる。今年の貴族も、きっと豊作に違いない、と。


 やがて貴族の部が始まる。流れ作業で終わる平民の部とは違って。貴族の部は、一人ひとり丁寧に終わらせていく。

 そんな儀式の序盤から。さっそくとんでもない逸材が飛び出す。


「フランドル男爵令嬢、マリア!」

「はい」


 呼ばれて立ち上がり、祭壇と神官様の方へと向かう少女、マリア。

 実はこの子が、ゲームでは本来なら主人公であったりする。


 祭壇に向かい、祈るような姿勢で目を閉じるマリア。神官様が祝福の言葉を寿ぎ、儀式が始まる。ちなみに祝福の寿ぎは、雰囲気を出すためのもの。あんまり意味は無い。


 すると、マリアはまばゆい光に包まれる。

 すごい職に就く者は、こうして強い光に包まれるのだ。


 この日、マリアは誰よりも強い光で輝いた。

 その光が収まった後。マリアは、自分が選択した職業を宣言する。


「――プリーストに、なりました」

「なっ!?」


 神官様が驚く。

 無理もない。マリアの職業、プリーストとは。神聖系統の、なんと上級職に該当するのだから。


 最初から上級職に就くなんて。ここ数十年は起こらなかった奇跡である。

 あまりにもの事態に、儀式を続けることを忘れる神官様。


「……あの、神官様?」

「あ、ああ。すまない。フランドル男爵令嬢、マリア! その職、プリーストッ!!」


 おおっ、と会場が湧く。そして拍手が巻き起こる。

 そんな様子に、驚くマリア。自分がとんでもないことをしでかした、と気づいていない様子。


 ――そんな様子を見ていたアーデルハイトと、クララ。


「……お嬢様より先に、こんなに目立つなんて。許せませんっ」


 小さくぼやき、対抗心を燃やすクララ。


「かまいませんわ。優れた職に就く者が増えるのは、国にとって良いことですもの」


 それを、余裕の表情で嗜めるアーデルハイト。


「流石です、お嬢様。きっと、お嬢様も上級職以上になれるはずですっ!」

「ふふっ。そうですわね」


 自分のことでもないのに、随分と意気込むクララを見て。アーデルハイトは、少しばかり和むのであった。

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