第十四話
圧倒的な魔力量により、土砂は次々と掻き分けられていく。
そのまま、アディは前進する。
「皆さんッ! こちらへついてきて下さいなッ!!」
アディは振り返らずに言う。ついに始まった土砂の撤去。サフィラ、クララ、サラの三人はもちろん。目の前で、土砂撤去の現実を見せつけられて。ようやく付いていくべきだと、冒険者たちも気付いた。
じっと見ているだけよりも。土砂を掘り進む背後に控えていた方が。崩落する土も押しのけてくれる分、安全だろう。
そう理解して、慌てて冒険者たちはアディの背後へ集まってゆく。
その気配を感じながら。アディは魔力を――シールドスパイラルドライバーを発動し続ける。
金色の花弁のような魔力が飛び散りながら。上から降り注ぐ土砂も。前方にある土砂の壁も。纏めて吹き飛ばしていく。
「……グッ!!」
その重みに。土砂の圧倒的な質量に、アディの腕が震える。
けれどここで、押し負けるわけには行かない。こんな、半端なところで止めてしまえば。全員が崩落する土砂の餌食になってしまう。
だからアディは踏ん張って。息切れするような感覚にも似た、魔力の枯渇を感じながらも。前へ、前へと進んでいく。
「くっ――はぁぁぁああああッ!!」
そして――力を振り絞って。最後の土砂を吹き飛ばす!
まるで爆発するかのような。火山の噴火でも起こったかのような。
そんな勢いで――道を塞いでいた土砂が、纏めて吹き飛んでいく。
鉱山の斜面に、金色の光の柱が立ち上がる。
光の花弁舞う中。アディが貫通した道は、まるで竜の巣か何かのように。巨大な洞窟となっていた。
それだけ、大量の土砂を吹き飛ばしたのだ。
「――やり、ましたわっ!!」
疲れ果てて、アディは最後にそれだけを呟いて。
意識を失うように倒れ込む。
「お嬢様っ!?」
慌てて近寄るクララ。けれど、それより早く。一番近い場所にいた――サラがアディを抱きとめる。
「……ありがとう」
そして呟いた。
アディの耳には届いていないけれど。
この時、確実に。サラの中で、アディに対する感情が大きく変化した。
大勢の冒険者たちは、ようやく拝めた陽の光に興奮して。互いに抱き合ったり、手を打ち合わせたりして喜びを分かち合っていた。
長いこと坑道で過ごしていた為か。太陽はすっかり低くなって。もうじき夕刻にもなろうかという時刻。
太陽の低さが、自分たちがどれだけガスを吸い続けていたのか。残り時間がどれだけ少なかったかを。如実に物語っていた。
だからこそ――助かった、という喜びは大きい。
「……やっぱり、すごいやつだよ。アンタは」
笑みを浮かべて。サフィラは言う。その視線の先には――サラに、優しく抱きとめられたまま。満足そうな表情のまま意識を失っているアディがいるのであった。




