第十三話
魔力を高めながら。アディは背後に意識を向ける。
投石を受けた頭部が、じくじくと痛む。けれど、アディの心に怒りは無かった。不思議と、浮かび上がるのは共感であった。
――そうですわよね。怖いですもの。有毒ガスでじきに死んでしまう。逃げ道の無い場所で。怯えるぐらいは当たり前のことですわ。
なのに――その怯えを否定するなんて。恐怖から。危機から彼らを救おうというわたくしには、ありえない選択ですわ。
アディにも、冒険者たちの気持ちはよく分かった。勝手に土砂崩れを加速させるようなことをして。もしも生き埋めになんてなったら。きっと苦しいはず。辛いはず。
そんな死に方はしたくない。だから、アディの邪魔をする。
たとえそれが、唯一の生き残る道を潰すような選択だとしても。怯える心があるのなら。目の前の恐ろしいものから、どうにかして目を逸したいと思うはず。
それを――アディは否定してはならない。と、考える。怯える心があるからこそ、彼らを守りたいと思うのだから。その苦しみ、悲しみが理解できるからこそ。取り除いてあげたい、と考えるのだから。
怯える心そのものを否定するのは。アディ自身の、誰かを救いたい。守りたいという思いも否定することになる。
だから――アディは受け入れる。冒険者たちの暴言を。恐怖を。凶行を。
それが、自分の行いを妨げるほどでない限り。無限の包容でもって、受け止めよう。と、考えていた。
「――だ、だから何だってんだよッ!!」
冒険者の誰かが、声を上げる。
「テメエの自殺になんざ、付き合う義理はねぇんだよッ!!」
言って、また投石。アディの言葉があるから、サフィラとクララ、そしてサラも。これを防ごうとはしない。
アディの背中に石が当たる。大した衝撃ではない。アディのステータス、耐久はずば抜けているから。
頭皮のような薄い皮膚を、直接傷つけるようなことでもなければ。怪我になるようなことも無い。
大してダメージにはならない。――けれど、だからと言って。石を投げて良い理由にはならない。
それでも、アディは否定しない。避けない。止めさせない。
今やるべきことは。確実に、この眼の前の土砂を吹き飛ばすこと。
出力については、問題を感じていない。魔法が土や風、炎や水を自在に操るのは常識だ。シールドバッシュも魔力を使うのだから、土砂を吹き飛ばすには十分な威力を出せるはず。
問題は――吹き飛ばした後。さらに上から崩れてくる土砂。
もしも――シールドストライクで土砂を吹き飛ばしたとしても。それは一時的なものですわ。必要なのは、破壊力ではなく。継続的に、前へ、掘り進むような力ですわね。
と、考えて。アディは魔力を集めていく。
どのように開放すればいいのか。どんな形でシールドバッシュを放つのか。土壇場のアドリブで、新たな技を編みだす。
そうして、十分な魔力が高まった時。
アディは――技の名前を叫んだ!
「シールドォ――スパイラルドライバァァァアッ!!」
光が。アディの金色の魔力が。
突き出した盾から溢れて――螺旋を描きながら突き進む!




