表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾持ち令嬢の英雄譚  作者: 雨降波近
第三章 もふもふですわ!
43/48

第十一話




 誰もが絶望的な状況に項垂れる中。アディだけは、顔を上げていた。


「――ここまで来れたなら、まだ可能性はありますわ」


 アディの言葉に、誰もが注目する。そんな中、アディは荒唐無稽な発言をする。


「この土砂を吹き飛ばしましょう。そして、道をつくるのですわ。そうすれば、脱出できます」

「んなこと、出来るわけねぇだろォッ!!」


 冒険者達の中から、怒声が飛んでくる。

 けれど、アディは臆せずに答える。


「いいえ。幸い、ここはかなり出口に近い位置のはずですもの。土砂をどうにか出来さえすれば、外に繋がるはずですわ」

「肝心の、その土砂をどうするつもりなわけ?」


 問いかけたのは、サフィラだった。


「魔道士様なら、魔法でどうにかできたかもしれない。けど、そんな一流のコントロール技術のある魔道士、ここにいる面子には居ない。それに、一度崩れたなら、ちょっと土をほじくっただけで上からどんどん崩れてくる。キリが無いわ。それでも、アディは出来るって言うわけ?」

「ええ。出来ます。――わたくしが、やってみせますわ」


 言って、アディが盾を構える。


「わたくしの、シールドバッシュで土砂を吹き飛ばします。上から崩れてきても、まとめて全部吹き飛ばしますわ」

「そんな、お嬢様っ! いくらお嬢様でも、無茶ですっ!!」


 クララが止めるようなことを言うが、アディは首を横に振る。


「無茶ではありませんわ。やるべきことを、やれる者が、やるべき時にやる。それだけのことですわ」

「……リスクが高い」


 続いてサラが苦言を呈する。


「今、無事な場所も崩れるかもしれない。だから、刺激するべきじゃない」

「ですが、それでは脱出など不可能ですわ」

「……必要無い。救助を待つべき」


 サラの提案も、また一つの選択肢であった。冒険者が帰ってこないとなれば。恐らく村からギルドへ連絡が行く。そうすれば、ギルドから人が派遣されるだろう。

 但し。その間、この場の全員が有毒ガスに晒され続けることになる。


「……恐らく、間に合いませんわ。ガスで倒れる方が、早いはずですもの」


 アディの言葉に、サラは反論しなかった。サラ自身、理解していたから。恐らくギルドの救助は間に合わない。たとえ村の鉱夫がすぐに出動したとしても。的確に自分たちの位置を見つけ、掘り返してくれるとも限らない。掘り返す間にも時間は経過する。

 救助に期待するのは、到底無理な相談であった。


「――ふざけんなッ! テメェの自殺に付き合うつもりはねぇぞッ!!」


 不意に、そんな声を上げたのは。冒険者たちの中の一人であった。


「土砂を全部吹き飛ばすなんて、出来るわけがねぇッ! 死にてぇなら勝手に一人で死にやがれッ! 俺らまで巻き込もうとすんじゃねぇッ!!」

「そうだそうだッ! あんたの攻撃で、これ以上道が崩れたらどうしてくれるんだよッ!?」

「道だけじゃねぇッ! 俺たちだって、生き埋めになるかもしれねぇだろうがッ!!」


 口々に、冒険者達が声を上げる。

 そんな冒険者たちを。アディは順に見つめて、そして微笑む。


「それでも。生き残るには、これしかありませんわ。信じて下さい。わたくしが、皆さんを必ず守りますわ」


 真剣な言葉。けれど、誰にも届く様子は無い。冒険者たちの怒りは収まるどころか、より高まっていく。

 だとしても。――アディは、やるしかないと考えていた。


「……クララ。サフィラさん。サラさん。わたくしは、これから最大限のシールドバッシュを放つために魔力を高めます。冒険者の皆さんの統率は、一旦お任せしますわ」


 そう語って。アディは一同に背を向ける。そして土砂へと向き直り――盾を構えて。

 暖かな、金色の魔力を集め始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ