第八話
――やがて、追い込み作戦が終了し、冒険者たちは一度集合する。坑道内の、開けた場所あで一度認識の共有。
つまり、もふもふの異常行動。そして未探索エリアの再度探索を行う旨を伝えた。
当然、異論のある者は居なかった。
アディ率いる冒険者の集団が、未探索エリアを目指して進んでいく。先頭はサラ。続いてアディ、サフィラとクララ。その後ろから、他の冒険者たちがぞろぞろと。
何があるか分からない、というのもあって。今回最も実力のあるグループ、つまりアディ達が先頭に立つこととなった。
「――次で、最後の廃坑」
サラが言って、アディは頷く。ここまで、複数の廃坑を探索してきた。が、今の所異常は無い。残る廃坑は、坑道としては全体の中腹程度にあった。ただ、複数の枝を経由しているため、奥深い位置にあると言えなくもない。
「行きましょう」
アディの一声で、全体が行動を開始する。
サラが先行しながら、周囲に注意を配る。アディも、何か出れば即座に盾を使えるよう構えている。
やがて――廃坑をしばらく進んだところで。
何やら、甲高い音が聞こえ始める。
「何かしら。これは……鳴き声?」
「きぃきぃ、言ってる」
アディの推測に、サラも同意した。恐らくは、何らかの生物が奥に存在している様子。
改めて、警戒し直す一同。
そのまま前進を続けて――ようやく、鳴き声の主の姿を拝むこととなった。
「……なるほど。全ての謎が解けましたわね」
言って、アディは息を吐く。
その正面には――なんと、十数匹もの『もふもふ』が生息していたのだ。それも、普通のサイズではない。二十から三十センチほどの、かなり巨大なもふもふの『子どもたち』であった。
「――なるほどね。あのもふもふ、こいつらのママだったってわけか」
少しだけ悲しげに、サフィラが声を漏らす。アディが頷き、言葉を続ける。
「恐らくは、そうですわね。この廃坑は外敵もいませんし、エサも豊富ですもの。子育てにはもってこいですわね」
「普通のヤマネズミなら、人間を怖がって近づかないだろうけど。これだけ大きな変異種なら、住み着いたっておかしな話じゃない。……まあ、魔物が人の領域に巣を作った。別に珍しくもない、よくある話だったってわけだね」
ため息を吐くサフィラ。他の冒険者たちは特に気にした様子もない。が、少女であるアディ達は違った。
ただ、見た目が愛らしい。ただそれだけで、罪悪感を感じていた。他の魔物と何の変わりもない、人に害為す魔物だというのに。
少女らしい感傷に浸りながら。けれど、やるべきことは間違えない。
「――倒しましょう。わたくしたち、冒険者の仕事ですわ」
言って、アディがまず近づく。もふもふの子どもたちは、人間を見るのも初めてなのだろう。興味深そうに、アディに近寄ってくる。
「ごめんなさいね。貴方たちは危険な魔物。わたくしの大切な人たちを傷つけますもの。……恨むなら、わたくしを恨みなさいな」
そして――アディの盾には。
金色の、温かい光が一筋。煌めいていた。




