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盾持ち令嬢の英雄譚  作者: 雨降波近
第三章 もふもふですわ!
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第八話




 ――やがて、追い込み作戦が終了し、冒険者たちは一度集合する。坑道内の、開けた場所あで一度認識の共有。

 つまり、もふもふの異常行動。そして未探索エリアの再度探索を行う旨を伝えた。


 当然、異論のある者は居なかった。


 アディ率いる冒険者の集団が、未探索エリアを目指して進んでいく。先頭はサラ。続いてアディ、サフィラとクララ。その後ろから、他の冒険者たちがぞろぞろと。

 何があるか分からない、というのもあって。今回最も実力のあるグループ、つまりアディ達が先頭に立つこととなった。


「――次で、最後の廃坑」


 サラが言って、アディは頷く。ここまで、複数の廃坑を探索してきた。が、今の所異常は無い。残る廃坑は、坑道としては全体の中腹程度にあった。ただ、複数の枝を経由しているため、奥深い位置にあると言えなくもない。


「行きましょう」


 アディの一声で、全体が行動を開始する。

 サラが先行しながら、周囲に注意を配る。アディも、何か出れば即座に盾を使えるよう構えている。


 やがて――廃坑をしばらく進んだところで。

 何やら、甲高い音が聞こえ始める。


「何かしら。これは……鳴き声?」

「きぃきぃ、言ってる」


 アディの推測に、サラも同意した。恐らくは、何らかの生物が奥に存在している様子。

 改めて、警戒し直す一同。


 そのまま前進を続けて――ようやく、鳴き声の主の姿を拝むこととなった。


「……なるほど。全ての謎が解けましたわね」


 言って、アディは息を吐く。


 その正面には――なんと、十数匹もの『もふもふ』が生息していたのだ。それも、普通のサイズではない。二十から三十センチほどの、かなり巨大なもふもふの『子どもたち』であった。


「――なるほどね。あのもふもふ、こいつらのママだったってわけか」


 少しだけ悲しげに、サフィラが声を漏らす。アディが頷き、言葉を続ける。


「恐らくは、そうですわね。この廃坑は外敵もいませんし、エサも豊富ですもの。子育てにはもってこいですわね」

「普通のヤマネズミなら、人間を怖がって近づかないだろうけど。これだけ大きな変異種なら、住み着いたっておかしな話じゃない。……まあ、魔物が人の領域に巣を作った。別に珍しくもない、よくある話だったってわけだね」


 ため息を吐くサフィラ。他の冒険者たちは特に気にした様子もない。が、少女であるアディ達は違った。

 ただ、見た目が愛らしい。ただそれだけで、罪悪感を感じていた。他の魔物と何の変わりもない、人に害為す魔物だというのに。


 少女らしい感傷に浸りながら。けれど、やるべきことは間違えない。


「――倒しましょう。わたくしたち、冒険者の仕事ですわ」


 言って、アディがまず近づく。もふもふの子どもたちは、人間を見るのも初めてなのだろう。興味深そうに、アディに近寄ってくる。


「ごめんなさいね。貴方たちは危険な魔物。わたくしの大切な人たちを傷つけますもの。……恨むなら、わたくしを恨みなさいな」


 そして――アディの盾には。

 金色の、温かい光が一筋。煌めいていた。

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