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盾持ち令嬢の英雄譚  作者: 雨降波近
第三章 もふもふですわ!
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第六話




 アディの指示通りに、冒険者たちは坑道を塞ぐような位置に分散していく。

 そして、少しずつ。包囲を狭めて、もふもふを追い込んでいく。


 どうやら各所で交戦しているようで、音が遠くから響いてくる。アディ達四人も、いつでも戦えるよう身構え坑道を進んでいく。

 次第に交戦する音が近づいてきて――坑道が交差する地点まで来ると、はっきりと音が聞こえるようになった。


 ちょうど、隣の坑道で交戦している様子。アディ達は、互いに顔を見合わせる。


「挟み撃ち、という形はどうでしょうか?」

「悪くないね。手っ取り早いし。けど、どっちかを抜かれた時に困る」

「ですわね。やはり、確実に行きますわ」


 提案したのはクララ。けれど、その欠点をサフィラが指摘。アディも、サフィラの意見に賛成する。


「では、こちらにもふもふが抜けて来ないように。確実に封鎖いたしますわよ!」


 そして、アディの宣言で、全員が身構える。


 やがて、戦闘音が間近まで近づいてくる。時折、冒険者の罵声のようなものも響いてくる。


「――ちくしょう! なんなんだよこいつはッ!? いくらなんでも、しつこすぎるッ!!」


 その声と同時に、一際大きい衝突音。それと同時に、坑道から真っ白な塊が飛び出してくる。


「来ましたわっ!」


 いよいよ、もふもふとの交戦である。

 飛び出してきたのは、体高で一メートル近い巨大な毛玉。柔らかそうにも見える、白い物体。村長から聞いたとおりの姿。巨大もふもふ。


「――シャァアッ!!」


 もふもふは、アディ達の姿に気づくと威嚇の鳴き声を上げる。そして――即座に体当たりを繰り出す。


「させませんわっ! シールドバッシュ!」


 アディが、これに応戦。盾を構え、もふもふの体当たりを受け止める。同時にスキルを発動。その勢いを受け止め、弾き返す。

 確かに、重たい一撃。アディほどの練度があっても、かなりの圧力を感じるほどである。未熟な盾使いでは押し負けてしまうだろう、と言えるほど。


 だが、今回は相手が悪い。アディのシールドバッシュは常軌を逸する。もふもふの方も、想像を絶する衝撃で弾き返され、体勢を崩しながら転がっていく。


「出るッ! ――ソードストライクッ!!」


 その隙を逃さず。前に出たのはサフィラ。剣を構え、スキルを発動。

 青い星のような煌めきを放つ、剣の一閃。


 もふもふを、捉えたかのように見えた一撃。けれど、もふもふも反応が早い。即座に身体を転がして、無理矢理に回避する。サフィラの剣は、地面を抉るだけとなった。

 だが、無理な体勢からの、無理な回避。続く攻撃を回避するのは困難であった。


「ダガーインパクトッ」


 続いて、もふもふへ攻撃したのはサラ。短剣を構え、突きを放つ。スキル発動により、紫色の魔力の光が立ち上る。

 そして、サラの短剣を茨のような魔力が包む。そのまま、サラはもふもふへと突撃。


「――くっ」


 だが――攻撃が通らない。短剣の長さでは、もふもふの体毛を貫通することが出来なかったのだ。

 衝撃で数メートル弾き飛ばされるもふもふ。しかし、本体にダメージは無い様子。すぐに立ち上がると、再び臨戦態勢を整える。


「――あんたらッ!! 気をつけろ、こいつ打撃が全然通らねぇ!! 刃物も半端な切れ味じゃあ毛に挟まって止まっちまうッ!!」


 言いながら。もう一方の通路から、冒険者たちが姿を見せる。

 先頭に立つのは、盾をフレイルを持つ重戦士。他にも片手剣を持つ剣士等、近接攻撃に特化した面子であった。


「――なるほど、打撃ではなく、切断でないとダメですのね」


 助言を受けたアディは。ニヤリ、と笑みを浮かべて。


「ちょうどいいですわっ! この機会に、必殺技をお見舞いしてやりますわっ!!」


 と、高々と宣言するのであった。

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