第四話
村長から話を聞き出したアディ。お陰で、もふもふ退治の上で注意しなければいけない点も判明した。
まず、坑道の詳細な構造について。これは、村の方でもあまり把握できていない。というのも、廃坑となった道は管理していない為だ。
クズ石も、鉄も取れない坑道は廃棄される。その後は誰も使わない為、どことどこが繋がっていたか、なんて忘れられていく。だから、正確な地図は存在しない。
けれど、現役の坑道については詳細な地図があった。これを使い、地図のある範囲でもふもふを追い込む。
と、いうのがアディの計画である。地図が無いなら、そもそも廃坑を使わなければいいのだ。
そして注意点が二つ。まず、この鉱山は有毒なガスが発生している地点がいくつもある。そのため、換気の為に風の魔石――封じた魔力の続く限り同じ魔法を発動し続ける石のこと――が使われている。
この有毒ガスは、換気用の横穴を通り、外へと排出される。
通常の場合、この有毒ガスは問題にならない。けれど、廃坑では風の魔石が放置されている。その為、魔力が切れてガスが充満している可能性が高い。
ただ、即死するようなガスではない。排気穴と吸気穴もあるので、短時間の活動なら支障が出ることは無い。
けれど、注意するに越したことはない。また、長時間の活動となると命に係る場合もある。仮に廃坑へと突入する場合は、細心の注意を払わねばならない。
次に、廃坑周辺の強度問題。放置されて長い廃坑は、通常の用途には耐えられる程度の強度ならある。が、魔物との戦闘に耐えられるかは不明。場合によっては、廃坑が崩れる可能性もある。
連鎖的に現役の坑道が崩れる可能性もある。故に、廃坑周辺での戦闘は最も注意しなければならない部分だろう。
と――以上のようなことを。アディは、他の冒険者達一同へと説明した。
「というわけですので。以上の点に注意しながら、ターゲットを追い込むことに注力してくださいませ。倒すことよりも、追い込んで逃げ道を奪う方が大事ですわ」
その言葉に、一同がバラバラに返事をする。話は聞いていた様子なので、ひとまず問題は無いだろう。と、アディは判断する。
「それでは、事前の班分けどおりに分かれて、廃坑探索に入りましょう。地図を作りながらの探索になりますので、慎重に。かつ正確にお願いいたしますわ」
こうして、廃坑探索。そして『もふもふ』討伐作戦がスタートした。
作戦といっても、内容は単純。人海戦術で内部の地図を作りながら、もふもふを追い込む。逃げ道を奪って、総力でもって討伐。
人数がいるからこそ。そして冒険者が戦力に優れ、もふもふとの遭遇戦を優位に進められるからこその作戦である。
他の冒険者達が廃坑へと入っていくのを見届けて。殿を務めるアディの班も出発する。
アディ、クララ、サフィラ、サラの四人の班である。
「――それでは、行きましょう。サラさん、お願いいたしますわ」
「……当然。言われるまでもない」
アディに頼まれて。サラは不機嫌そうに返す。今回、四人の中で最も斥候能力の高いサラが地図作りを担当する。
アディが嫌いとはいえ。サラもプロの冒険者。仕事に手を抜くようなつもりは無かった。
もちろん、だからこそアディもサラに任せるという結論に至ったのだけれども。
また――可能なら。この仕事を通して、少しでも仲良くなりたいとも思っている。
同じ冒険者同士なのだから。そして、自分に無い才能を持つ、素晴らしい仲間なのだから。
嫌われるよりも。仲良くなりたい、とアディが思うのも当然のことであった。
そんな二人を眺めながら。苦笑するサフィラと、不安げに見守るクララが後に続く。
こうして――アディ達も作戦を開始するのであった。
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