第十話
声を上げたのは、一人の男。野次馬たちの中に居た、昼間から酔っ払っている冒険者の一人。
体格が二メートル近い大男が、話のまとまりそうなところへ割り込んでくる。
「このままじゃあ、冒険者様のメンツが立たねぇだろうがよォ!!」
と、何やら喚き始める。
「うるさいわね! 別に構わないでしょ! アディはちゃんと、実力を証明したじゃないの!」
「そりゃあ、てめぇが弱かったからだろうがァッ! 貴族様なんぞに負けやがってッ! 退けッ!!」
「きゃあっ!?」
大男は怒鳴り散らしながら。サフィラを突き飛ばし、前へ出る。
アディの前に立つと、見下ろしながら宣言する。
「お嬢ちゃんよォ。第二ラウンドと行こうじゃねぇか」
「ちょっと! 何するつもりよ!」
「黙ってろブルースタァ! 親の七光りでデカいツラしやがって、前から気に入らなかったんだよォッ!!」
「なっ……!?」
アディには事情の分からない話。大男は、一方的にサフィラを罵倒する。
「親父の肩書き借りて、二代目気取りやがってよォ! 中堅かそこらの実力しか無いクセして、ごちゃごちゃうるせぇんだよテメェは!」
「何よっ! 間違ってないでしょ! 冒険者っていうものはねぇ――」
「それがうざってぇんだよォッ! 何が自分の栄誉の為じゃねぇ、だッ! 冒険者ってのはなぁ、ナメられたら終わりなんだよッ!! 弱ぇ奴には仕事も無ェ!! 名前の売れねぇ奴も同じだ!」
「違うっ! 冒険者の仕事は、誰が認めてくれなくたって必要で、大事なものよっ!!」
「そりゃあ強くて偉い冒険者だけの話だろうがッ!! テメェみてぇな口だけの雑魚が何言ったって嘘にしかならねぇんだよォッ!!」
言うと、大男はなんと――腰に佩いていた剣を抜き、構えた!
模擬戦用の木剣でも、刃を落としたものでもない。実践用の、殺傷力のある剣だ。
さすがに、これはやりすぎだ。訓練場でも、実剣を使った戦闘は許されていない。さすがに周囲の野次馬たちも騒ぎ出す。
「何してんの!? 馬鹿じゃないのッ!?」
「うるせえッ!!」
「アディ様! お逃げ下さいッ!」
「テメェも黙ってろッ!!」
大男はサフィラ、そしてクララに剣を向けて威嚇する。誰もが警戒して、大男に近づけない。
「……構いませんわよ」
そんな中で。アディだけが、冷静に呟いた。
いや――ある意味、冷静では無かった。その目には、強い怒りが浮かんでいたのだから。
鋭い視線に気づくことなく、大男はニヤける。
「よぉし、いい度胸してんじゃねぇか!」
「けれど、その前に一つ、言っておきますわ」
「あぁん?」
アディは、盾を構えて語る。
「今更謝罪しても、もう遅いですわよ」
「んだと、テメェ!」
「サフィラさんを侮辱した罪。剣を持って人を傷つけようとした罪。どちらも許されるものではありませんわ」
そうして、戦いが始まる。
「貴方が人を――民を傷つけるというのならッ! わたくしが、この盾でッ! 貴方を打倒して、皆さんを守らせていただきますわッ!!」
こちらが本日最後の投稿です。
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