第八話
その後。結局少女に挑まれたのは、決闘ではなく手合わせ。要するに単なる試合である。何を賭けるわけでもなく。単に力の比べ合い。
それを通じて。少女は、アディに冒険者でやっていくことの厳しさを教えようと言うのだ。
つまりは、お前程度の実力ではやっていけない。と、叩きのめすつもりなのだろう。
もちろん、アディもそれぐらいは理解できている。けれど、この試合を拒否するつもりは無かった。
少女の言葉は。そして思いは、とても真剣なものだった。
何よりも、冒険者について語った言葉。
『自分の栄誉の為じゃない。街で生活する人たち、みんなの為に戦うの!』
それが、胸に響いていた。
きっと、この子なら。と、アディは思う。わたくしの知らない、人々を――民を守るということの意味を知っている。教えてくれるはずですわ。
と、考えていた。だから、試合を受けることとなった。剣を――アディの場合は盾だけれど――交えて。親交を深める為に。
「――アンタ、名前は?」
「わたくし、アディと申しますわ。貴女は?」
「アタシはサフィラ。……覚悟しなさい、アディ。アタシが、アンタの冒険者人生を終わらせてやるわっ!」
そんな会話を交わす二人。場所は、冒険者ギルドに併設された訓練場。冒険者たちは、日夜ここで訓練をして、腕を磨いている。
その一角を、アディとサフィラ。見守るクララに、野次馬たちが占拠していた。
「――いくわよっ!」
開始の合図など無い。準備ができれば、すぐにでも始まる。
最初に駆け出したのはサフィラ。模擬戦用の木剣を構え、アディへと迫る。
これに、アディは盾を構えて対応。太刀筋に合わせ、盾で受け流す。
「基礎は出来てるみたいねっ!」
続けて、サフィラの連続攻撃。何度も木剣が振るわれる。けれど、どれもアディは容易く捌く。
――比較してしまうなら。サフィラの攻撃は、かつてのキールの風の魔法より鋭く重い。
けれど、太刀筋というのはどうしても角度が限定されてしまう。予備動作もある。だから、アディにしてみれば、よほど受けやすい攻撃であると言えた。
「くっ……なら、これはどうよッ!!」
言うと、サフィラは剣を構え、集中する。同時に、魔力が木剣に集まって光を放つ。
これは――スキルの発動ですわね。と、アディは察する。対処の為に、アディもシールドバッシュをする心構えをする。
「ソードストライクッ!!」
サフィラが宣言すると同時に。スキルは発動し、木剣が振るわれる。
合わせて、アディも盾を突き出す。
「シールドバッシュッ!!」
サフィラの剣と、アディの盾が衝突する。
ガキンッ! と硬い音が響く。同時に、互いのスキルが放つ光が弾ける。
青き星のような煌めき。温かい花の咲くような輝き。
サフィラとアディ、それぞれのスキルがぶつかり合い、打ち消し合う。
これに、サフィラは信じられない、というような表情を浮かべた。
「――そんな、まさかっ!?」
驚きのあまりか、攻撃の手が止まる。そこへ、アディが言葉をかける。
「サフィラさん。ご理解いただけましたか? わたくし、これでも十分強いんですのよ」
にこり、と微笑むアディ。悔しそうにしながらも。サフィラは、反論する気は無いようだった。




