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盾持ち令嬢の英雄譚  作者: 雨降波近
第二章 今更戻れと言われても、もう遅いですわ!
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第八話




 その後。結局少女に挑まれたのは、決闘ではなく手合わせ。要するに単なる試合である。何を賭けるわけでもなく。単に力の比べ合い。

 それを通じて。少女は、アディに冒険者でやっていくことの厳しさを教えようと言うのだ。


 つまりは、お前程度の実力ではやっていけない。と、叩きのめすつもりなのだろう。

 もちろん、アディもそれぐらいは理解できている。けれど、この試合を拒否するつもりは無かった。


 少女の言葉は。そして思いは、とても真剣なものだった。

 何よりも、冒険者について語った言葉。


『自分の栄誉の為じゃない。街で生活する人たち、みんなの為に戦うの!』


 それが、胸に響いていた。

 きっと、この子なら。と、アディは思う。わたくしの知らない、人々を――民を守るということの意味を知っている。教えてくれるはずですわ。

 と、考えていた。だから、試合を受けることとなった。剣を――アディの場合は盾だけれど――交えて。親交を深める為に。


「――アンタ、名前は?」

「わたくし、アディと申しますわ。貴女は?」

「アタシはサフィラ。……覚悟しなさい、アディ。アタシが、アンタの冒険者人生を終わらせてやるわっ!」


 そんな会話を交わす二人。場所は、冒険者ギルドに併設された訓練場。冒険者たちは、日夜ここで訓練をして、腕を磨いている。


 その一角を、アディとサフィラ。見守るクララに、野次馬たちが占拠していた。


「――いくわよっ!」


 開始の合図など無い。準備ができれば、すぐにでも始まる。

 最初に駆け出したのはサフィラ。模擬戦用の木剣を構え、アディへと迫る。


 これに、アディは盾を構えて対応。太刀筋に合わせ、盾で受け流す。


「基礎は出来てるみたいねっ!」


 続けて、サフィラの連続攻撃。何度も木剣が振るわれる。けれど、どれもアディは容易く捌く。


 ――比較してしまうなら。サフィラの攻撃は、かつてのキールの風の魔法より鋭く重い。

 けれど、太刀筋というのはどうしても角度が限定されてしまう。予備動作もある。だから、アディにしてみれば、よほど受けやすい攻撃であると言えた。


「くっ……なら、これはどうよッ!!」


 言うと、サフィラは剣を構え、集中する。同時に、魔力が木剣に集まって光を放つ。

 これは――スキルの発動ですわね。と、アディは察する。対処の為に、アディもシールドバッシュをする心構えをする。


「ソードストライクッ!!」


 サフィラが宣言すると同時に。スキルは発動し、木剣が振るわれる。

 合わせて、アディも盾を突き出す。


「シールドバッシュッ!!」


 サフィラの剣と、アディの盾が衝突する。

 ガキンッ! と硬い音が響く。同時に、互いのスキルが放つ光が弾ける。


 青き星のような煌めき。温かい花の咲くような輝き。

 サフィラとアディ、それぞれのスキルがぶつかり合い、打ち消し合う。

 これに、サフィラは信じられない、というような表情を浮かべた。


「――そんな、まさかっ!?」


 驚きのあまりか、攻撃の手が止まる。そこへ、アディが言葉をかける。


「サフィラさん。ご理解いただけましたか? わたくし、これでも十分強いんですのよ」


 にこり、と微笑むアディ。悔しそうにしながらも。サフィラは、反論する気は無いようだった。

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