第六話
「申し訳有りません。ですが、規則ですので……」
「どんな規則ですかっ! 私よりステータスが高くて評価が低いなんて、ありえませんよっ!」
謝罪する受付と、詰め寄るクララ。そんなクララのカードを、アディは覗き込んで見る。
すると、自分とはあまりにも違う評価内容に驚いてしまう。
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名前:クララ(女)
年齢:16歳
職業:メイド
生命:C
身体:C
耐久:C
魔力:B
抵抗:C
総合攻撃力評価:B
ダメージ増加:B 命中:C
総合防御力評価:C
ダメージ軽減:C 回避:C
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「まあ」
思わず声を漏らすアディ。決して悪意があったわけではない。単に驚いただけに過ぎない。
けれど、必要以上に恐縮する受付。
「本当に、すみませんっ! ステータスだけなら、もっと高い評価でもおかしくないんです。けれど、最下級職は低く見積もる、という制度がございまして」
「そんなっ! 差別ですっ!」
「いいえクララ。自然なことですわ」
クララが納得しない。が、これをアディが嗜める。
アディにも、理由はなんとなく察することが出来た。確かに、最下級職のスキルは弱い。同じステータスでも、上級職のスキルに劣るだろう。
だから、総合評価は厳しめになってしまう。筋の通った話である。だから、アディとしては納得していた。
ちなみに――これは、この世界とゲームの世界のギャップ、相違点による。
ゲームの世界にも、この世界にも。スキルには熟練度、というものが存在する。熟練度によってスキルの効果は増していく。ダメージの増減、命中回避。どちらも変化していく。
故に、より低レベルな最下級、下級の職は。自然と、スキルの熟練度が低くなりがちとなる。反対に、レベルを上げて転職する必要のある上級職などは熟練度が高くなる。
こうした現象を、感覚的に理解しているからこそ。冒険者ギルドは、総合評価に職業のランクを絡めるのだ。
ただし、あくまでも経験則。本当の熟練度を測るわけではない。だから、アディのような例外は正確に測定出来ないのだ。
「申し訳有りませんでしたわ。うちのクララが、ご迷惑をおかけしたようですわね」
「いえ。こちらこそ、このような評価になって、申し訳有りません……。これだけのステータスがあれば。もし上級職なら、間違いなくSランクの評価を受けていたはずですから」
「そう言って頂けると幸いですわ」
なんとか、この場は穏便に収まる。ここでようやく、クララは自分が主人であるアディに迷惑をかけたのだと理解する。
「す、すみませんアディ様……」
「いいのよ。わたくしを気にかけてくれたのでしょう? けれど、人を困らせてしまったのはダメね。謝るとしたら、こちらの女性に謝罪するほうが筋ですわ」
「はい……申し訳有りませんでした」
「いえ、気になさらないで下さい!」
こうして、受付でのひと悶着は無事決着がついた。
けれど、残念ながら。騒動に、半端な聞き耳を立てていた冒険者はそうもいかない。
「――ちょっとアンタたち! 冒険者のこと、ナメてんじゃないの!?」
そんな、年頃の少女の怒鳴り声が。アディとクララの背中に向かって響くのであった。
本日最後の投稿になります。
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